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例年、多くても生徒会長への立候補者は三名程度。
応援演説を担当した人間と生徒会長選挙に落選した者でその年の生徒会を構成するのが通例らしい。
これは前生徒会長、愛染先輩が生徒会室の引き継ぎついでの世間話として教えてくれた話だ。
「いや~、それにしても天羽さんが生徒会長になるとは思ってたけど、そもそも候補者がみんな辞退しちゃうとは思わなかったなー」
「……うちの学年はとくに天羽さんに心酔してる人間が多いですからね」
候補者が公開された翌日には例年よりも多く五人もいたはずの生徒会長候補は天羽さん一人になっていた。
勝てるわけがないという戦略的撤退ならまだよかったのだが、辞退した候補者は揃いも揃って本心から「天羽さんがやってくれるなら任せるべきだ。自分がでしゃばるべきではない」と思っていた。
相も変わらずかけられている期待が重すぎる。
本人はいつものことだと大して気にした様子もなかったが、こんなのが日常なの普通に怖い。
「君は違うのか?」
「……凄い人だと思ってます。でも、体調崩すこともありますからね。期待のし過ぎは良くないかなと思ってます」
「……あの件は、俺も悪かったと思ってるよ。天羽さんが優秀すぎてすっかり頼ってしまった」
現在進行形で頼り倒してるじゃん、とは言わない。
本人が自覚していることをわざわざ口に出して言葉にする必要はないし、そもそも天羽さん自身が納得して受け入れていることを外野がとやかく言うようなものでもない。
「凄い人ですからね。みんなが天羽さんに頼りすぎてました」
だから、こんな毒にも薬にもならないような返ししかできない。
「……無責任でお前が言うなって話なのは承知の上で言うけど、ちゃんと支えてあげてくれよな」
本当に無責任で現在進行形で頼っているお前が言うなって話だ。
ただ、やっぱり本人がそれを自覚していて、そのうえ自嘲的な笑みまで浮かべて言われてしまってはそんなこと言えるわけない。
当たり障りのない肯定的な言葉を頭の辞書から選ぼうと脳が回る。
「大丈夫ですよ、愛染先輩。ちゃんとみんなに支えてもらうので」
それを遮るように、新生徒会長はそう言った。




