8.あなたへ贈る花言葉
芽依がいなくなってから、何日が経ったか分からない。芽依が言った三月二十八日。この日だけは芽依との約束通り絶対に外に出なかった。
大学はもうとっくに始まっているのに私は行く気になれなかった。今年から二回生に上がり後期には大切な就活準備なども始まるというのに、それでも私は大学など行く気にはなれなかった。就活よりももっと大切なものを失ったから。
バイトも体調が悪いと店長に連絡を入れて何日も休んでいる。
私は死ぬはずだったその日を超えて今も生きている。いや、こんな状態生きていると言えるのだろうか。テーブルの上にはスーパーで買ったお惣菜の食べたパックの残骸やカップラーメンの容器、ペットボトルお茶などが散在してある状態だった。時間が来ればやってくる睡魔と何もしないでも空いていく腹を満たすだけの生き物として生きているだけ。人間らしいことは一切何もしていなかった。
芽依がいなくなるだけでこのありさま。私にとって芽依はそれほど大きい存在だった。こんな状態を芽依が見たら引くだろうな。
私の隣には芽依がくれたブライダルベールの花がある。その花に触れる度、涙が流れる。この小さな白い花が一つずつ幸福を呼んでくる。芽依、本当にそうなの?私は今、少なくとも幸福とは言えないよ・・・今日もまたこのまま死んだように眠ろうとした瞬間インターンが鳴る音がした。
誰だろう・・・宅急便?そんなことはあり得ない。ここ数日私は何も頼んでいない。携帯でそれらしい履歴を探そうと画面をタップするが、充電が切れているのだろう。何も反応しない。
再びインターホンがなる。私は鉄の塊みたいな体を起こして玄関へ向かう。
途中でぼさぼさの髪の毛を触って気づく。ここ数日、私はお風呂にも入っていなかったのか。
三度目のインターホンがなる。一体誰なんだと思い、私はドアを開けた。するとそこに立っていたのは若々しい女性だった。一瞬、同姓というだけで芽依を期待した自分がおろかに感じる。
「あ、あの。ここ樋口さんの家で合ってる?」と自信なさげな声で私にたずねる。身長は私よりも少し高くて髪はショートヘア。肩には何やら教材が入ったトートバッグが目に映った。学生なのかな・・・
私は彼女の質問に答えなければという義務感だけが私の口を動かした。
「・・・合ってます」
「じゃあ、あなたが樋口さん・・・だよね」
「・・・はい」
一体この女性は誰なんだ。身なりも見るに営業の人や宅急便の配達員でもない。けれど、少しだけ見覚えがある。その答えは彼女自身が答えてくれた。
「私、大学で同じクラスの中村香織。覚えてない?春休み入る前、樋口さんの事をスノボーに誘った・・・」
あぁ、そういえば春休みに入る前日に誘われたな。彼女とはほとんど喋ったことがない。なのに、なんで私の家を知っているのか不思議だった。例え、知っていたとしても家に訪ねてくるなんて普通はしない。彼女と私は【大学のクラスメイト】というそれ以上でも以下でもない関係値だ。そんな彼女がなんで私の家を訪ねてきたのだろう。
「覚えてます。なんで中村さんがここにいるんですか?」
こんな姿で出来ればクラスメイトの人に会いたくはなかった。注目されないように出来るだけ影を潜めて大学を過ごしてきたのに、これじゃあきっとすぐに話のネタにされいらぬ注目を浴びるだろうな。
「ある人に頼まれたの。もし春休みが開けて大学が始まってもあなたがしばらく来なかったら、家を訪ねて欲しいって」
誰だ、そんな余計なことを言ったのは。
「丁度、春休みが始まって二、三日経ったぐらいだったかな。私、大学にちょっと用があったからその日行ったの。そしたらなんか、誰彼構わず声をかけてる人がいたの」
世間にはそんな変わり者がいるんだ。
「最初、恋人に飢えてる男が手当たり次第にナンパしてるのかなって思ってたけど、よく見たら女の子だった」
女性も恋人が欲しいという気持ちが溢れてしまえばそんな異例の行動に走ってしまうのか。
「それでちょっと気になってその子に近づいてみたの。そしたら私も声をかけられて、その子に『樋口真奈って子と同じクラスメイトですか』ってすごい必死な顔で聞いてきたから『そうですけど・・・』って答えたら今度は急に笑顔になったのをよく覚えてるよ」
必死になったり、笑顔になったり、表情が豊かな人だな・・・
「なんで中村さんはその人に耳を貸したんですか?そんな変わり者、ほっとけばよかったのに」
関係のないことに首を突っ込むなんて、彼女は見た目によらず随分と無鉄砲な人だ。
「あんな必死に頼んでる姿見たら逆に気になったのよ。誰だってそういう時気になるでしょ?」
気にはなると思うけど、私は関わらないと思うな。
「それで、その子に『よかったらあの子と友達になってあげてもらえませんか?』って頭を下げながら言われた。だから、私は『樋口さんは自分から距離を取ってるみたいだから難しいと思いますよ』って答えた」
中村さんの言っていることは間違っていない。私は自ら人と親しい関係に発展しないように距離を取っていた。あの時はそうすることでしか自分を守れなかったから。
「でもその子が言ったの。『私が絶対に今のあの子を変えて見せます。きっと今は、自分から壁を作ってると思うんですけど、その壁を私がなんとか壊して見せるんで。だから、お願いします!あの子と友達になってあげてください』そうやって何度も、何度も私に頭を下げてたわ」
私が絶対にあの子を変える・・・頭の中で一瞬、芽依の顔が浮かんだ。
「私もあそこまでされたら断れなかったし、自分から近づいたのに断るなんて最低でしょ?だから、彼女のお願いを聞くことにしたの。大学が始まってもあなたがしばらく来なかったら家を訪ねて欲しいっていうお願いを。樋口さんが住んでる家もその子から教えてもらった。あの子の笑顔すごく眩しかったし、とにかくなんだろ。希望に満ち溢れてるっていうか、一緒にいるだけで幸せを運んできてくれそうな子だったな。あれから私はあの子に会ってないんだけど、樋口さんは会ってるの?」
笑顔が眩しくて、希望に満ち溢れてそうで、一緒にいるだけで幸せを運んできてくれそうな子。私にはもう、一人しか浮かばなかった。
「その子の名前・・・教えてもらってもいいですか?」
心の器から今にも溢れそうな感情をギリギリのところで保っている。
「んーなんだったっけなー。さくらちゃん?いや、なんか違うな―。あ、そうだ!芽依ちゃんだ、芽依ちゃん!吉野芽依ちゃん!ソメイヨシノみたいだねって言ったの思い出した!」
やっぱり・・・芽依だった・・・私は膝から崩れ落ち、その場で子供のように泣き喚いた。どんどん感情が器から流れ出る。終わりがないかのように流れても流れても止まらない。彼女は私の事をどれだけ救って行けば気が済むのだろう。自分がいなくなった後、私がこうなると分かっていたから中村さんに頼んだんだ。
芽依に会いたい・・・もう一度会って抱きしめながらありがとうと言いたい。ねぇ、ふらっと現れてよ・・・私にあの笑顔を見せてよ・・・
叶わない願いが無慈悲に空へと吸い込まれていった。
突然泣き出した私を中村さんは泣き止むまでそこにいてくれた。友達ではないのに、それでもずっと彼女は私の背中をゆっくりとさすってくれた。
家の中に入ったあと、ゴミが散らかった部屋を見ても彼女は何も言わずそっと私の横に座った。
「樋口さんと芽依ちゃんに何があったかは聞かないでおくよ」
落ち着いた声で彼女が言う。きっと私の事を気遣ってくれたのだろう。
「私が出来ることは、今こうやって樋口さんの側にいることと。芽依ちゃんのお願いを叶えてあげることぐらい」
「芽依のお願いを叶える?」
「そう、私と友達になろうよ」
言いながら彼女は私に手を差しのべた。友達・・・私が友達を作る・・・頭の中に過去が蘇る。喉の奥から熱い塊が飛び出しそうになるのを必死にこらえた。やっぱり、まだ怖い・・・そんな簡単に過去を乗り越えることは出来ないよ。私は彼女が差し出した手から目を背けた。この手を取ることは私には出来ないと思ったから。ただ、背けた先に芽依から貰ったブライダルベールの花が私の目に映った。そして、頭の中を芽依の言葉が反芻する。
「相手がどんな存在だったとしてもそれを受け入れる勇気を持つ」
勇気を持つこと・・・私はこれが芽依の最後の願いだと思った。その願いを叶えるため、私は勇気を振り絞って彼女の手を取った。
「お、友達になってくれるんだ。てっきり、断られちゃうかと思ったよ」
「そう思った。でも、芽依の願いを叶えたいし、何より自分で壁を作るのはもう辞めようと思う。そうしないと芽依に顔向けできないから」
芽依にはもう会えない。その事実はどう頑張っても変わらない。いつまでも下を向いてたら芽依に笑われちゃうよね。ゆっくりでいい、少しづつ一歩ずつ。芽依がくれたこれからの未来を私は芽依の分まで精一杯生きていかなきゃいけない。それなのに、自分で壁を作ってる暇なんてどこにある。
人は
三年後、私は大学を卒業し社会人になっていた。
そして、まだこの町に住んでいる。
芽依と過ごした大切なこの場所を離れたくはなかった。
季節は冬を超え春が訪れようとしていた。私は今、人を待っている。待ち合わせの時間までもう少しという所で私は駅に着いた。休日ということもあり駅にはたくさんの人が行き交っている。そんな中から人込みをかきわけ手を振りながら私の方へやってくる人がいる。待ち合わせを約束した私の友達だ。
「ごめん、遅れた!」
「私も今来たところだから全然大丈夫」
「それで、今日は何するの?大事な予定があるからついてきてなんて珍しいじゃん」
「行きたいところがあってね。香織にもついてきて欲しいなって」
私の友達というのは芽依がいなくなった時、私の家を訪ねてきてくれた同じクラスメイトの香織だ。彼女には、あれから私が再び歩き出せるようになるまでずっと側で支えてくれた。彼女のおかげもあり、私はなんとか大学に復帰でき就職活動や卒業論文といった新しい世界へ行くための関門を乗り越え、今を生きている。
「行きたい所ってここ?」
香織が不思議そうに目の前にある店を見つめる。
「行きたい所はここじゃないんだけど。そこに行くために必要なものをここで買いたいの」
そう言って私が彼女を連れてきたのは芽依と訪れたことがあるあの花屋だ。
今日は芽依がいなくなってしまった三月二十七日。私は毎年ここで花を買って、芽依が好きだった桜の名所に訪れる。そして、買った花を芽依にプレゼントする。どんなに仕事が忙しくても芽依には必ず会いに行っている。
花屋へ入ると「いらっしゃいませー」と軽やかな声で迎える店員の声が聞こえてくる。そして、私に気づくと「あら、真奈ちゃん!」といつものように駆け寄ってくるのは私と芽依にフリージアの花がぴったりだと言ったあの時の女性店員だ。
真奈がいなくなった後、私は何度か花屋を訪れていた。寂しくなった時は写真を見て思い出したかったのだけれど、二人で撮った写真に芽依は映っていない。写真で寂しさを紛らわすことが出来ないのであれば、芽依と一緒に行った場所へ行こう、と考えた私は真っ先にこの花屋が浮かんだ。
ここにいると芽依と話した会話が蘇ってくる。まるで昨日の出来事のように鮮やかに。
「お久しぶりです」
「最近、見ないからどうしてるのかなって思ってたよ。そちらの子はお友達?」
初めましてと香織が控えめに挨拶をする。
「私の用事について来てもらってて」
「そうなんだ。それで今年はどんな花をプレゼントするの?」
「今年、贈る花はもう決めてるんです」
「そうなの?」
「はい、白い五本のバラを貰ってもいいですか?」
「白い五本のバラね!余談なんだけど、白い五本のバラには素敵な花言葉があるの知ってる?」
「もちろん知ってます。今年はその花言葉を贈りたいなって思って選んだんです」
芽依がいなくなってからも私は花についてよく調べている。そうすれば、そこに芽依は居ないのだけれど、まるで横にいるかのような気持ちを感じることが出来る。
「毎年、この日に絶対買いに来るけどまたあの子にあげてるの?」
「はい、芽依にあげてるんです。花が大好きで色んな花言葉を知ってる芽依に・・・」
私が言うと彼女は「私も芽依ちゃんって子に会ってみたいよ。今度連れてきてよ。一緒に花について話してみたいなー」とまるであったことがないかのような口ぶりをする。いや、彼女にとっては本当に会ったことがないことになってしまっている。
芽依がいなくなってからバイト先の店長の祥子さんにもふと、芽依との思い出を話した。けれど、帰ってくる返事は「ごめん芽依ちゃんって・・・誰・・・?」だった。私以外全員、芽依と会ったことがあるという記憶そのものが無くなっていた。隣にいる、香織もそのうちの一人だった。
きっと神様は私以外の人の記憶から吉野芽依という存在を消したのだ。なんでそんなことをするの・・・と神様を恨んだこともあったが、その神様がいなければ芽依と会うこともなかったし、私が今生きていることもなかった。そう思うと下がり切った神様の株も少しだけ戻ったような気がした。
「お待たせしました!」
言いながら丁寧にラッピングした五本のバラを女性店員は持ってきた。
「ありがとうございます!」
「これから会って渡すの?」
彼女の言葉に私はゆっくり首を横に振り答えた。
「もう会えないんです。本当は直接会って渡したいんですけど芽依にはもう会えなくて・・・」
「そう・・・だったんだ・・・ごめんなさい、触れたらまずかったよね」
「全然気にしないでください」
いたたまれない表情を見せた彼女がすっと息を整え口を開いた。
「これは私の持論なんだけどね、花は人と人とを繋ぐ架け橋になるものだと思ってるの。嬉しいとき、楽しい時、寂しいとき、辛いとき、どんな感情の時でも花を渡せばその花に込められた花言葉は必然的に届いて、お互いの思いは繋がる気がする。たとえ、どんなに距離が離れていたとしても関係ない。その人と会話が出来なかったとしても思いは届けられる。花にはそんな役割があるんだと私は思う」
「私もそう思います。花ってほんとにすごいですね」
芽依に出会わなければ、私が花に興味を持つことは無かった。花にこんな思いの力があるなんて知れなった。伝えたい、今すぐに。胸の中にある思いを。
芽依が好きだった桜の場所へ、私は香織と共に向かい始めた
風邪に揺られ、太陽に照らされ今年も満開の桜が春を告げている。
丁度、名所の中間地点にたどり着き私は立ち止まった。
「香織、ちょっとだけ待ってて。すぐ終わるから」
香織は「分かった」と一言だけ言って私を送り出す。今から私が何をするかは分かっていなかったので、少しだけ不思議な顔を浮かべていた。
私はゆっくりと桜の木の下に向かい、その場にしゃがみこみ買った白いバラをそっと置く。そして、芽依との思い出を頭の中で思い出し心の中で語り始めた。
芽依、元気?最近は特に寒いね。風邪とか引いてない?芽依の事だろうから寒さに負けてたら冬に咲く花が見れないよ。とか言いそうだけど。
今年からなんと、私は社会人になります。あ、スーツ姿で来ればよかったかな?自分で言うけど意外と様になってて驚いたんだ。
急に社会人になるって思うとすごい大人になった気分。
でも、心はまだまだ子供みたい。
たまにね、芽依と過ごした日々を夢に見ることがあるの。植物園に行った日のことだったり、桜を一緒に見に行った日だったり。その瞬間はほんとに芽依が横にいるみたいで、やっぱり芽依はいなくなったりしてなかったんだって錯覚しちゃうの。でも、目が覚めた時、夢だって気づいた時、涙が止まらないの。現実を突きつけられてるみたいでほんとに苦しくなる。恥ずかしいけど、小さな子供が泣くのと同じぐらい、声を上げて泣いてる。どれだけ時間が経ってもこれだけは慣れないよ。また会いたいよ・・・芽依・・・
まぁ、暗い話はこれぐらいにしておいて最近の私のブームを話したいと思います!最近ね、お酒が飲めるようになったんだ。飲めるって言っても強くはないんだけど。
でね、お酒の種類で桜リキュールって言うのがあって、桜の花とか葉っぱの華やかな香りと風味を閉じ込めてるお酒なの。桜がお酒に使われてるってすごくない?私、飲んだ時びっくりしたのを覚えてるよ。花から抜ける匂いがもう桜のそれだった。いつか芽依と飲んでみたいなぁ・・・。あ、でもよくよく考えたら桜をお酒にするなんてもったいない・・・!とか言って芽依ならがっかりしそうって今思った。芽依とは違うお酒で乾杯しよっか!
芽依がいなくなってもう三年か・・・芽依は今どこで何をしてるの?消えちゃった後どうなったの?今度会ったら聞かせてよ
そういえば、最近香織と新しいカフェに行ってきたんだ!パンケーキが有名なところでね。もうとにかくふわっふわなの!芽依が食べたら飛び跳ねるくらいだと思うよ。こんな、香織とこんな未来を過ごせてるのも芽衣のおかげだよね。
あの時の用事って私の大学に行って私と友達になってくれるよう頼んでたんだね。周りの人に、頭を下げながら声をかけてたって香織から聞いた。自分がいなくなった後の事まで考えるなんて、律儀にも程があるよ。芽依のその行動のおかげで、私は立ち直れたし香織とも友達になれた。全部、芽依のおかげ、ほんとにありがと。ってこの話、毎回ここに来るたびしてるかも。でも、感謝してもしきれないよ。花言葉をたくさん教えてくれてありがと。私と友達になってくれてありがと。生きる未来をくれてありがと。
そんな芽依に今年はこの白い五本のバラをプレゼントしたいと思います!どう、綺麗でしょ?なんで五本かって?花は色で花言葉が変わったりするけど本数でも変わったりするんだよね。芽依は知ってるか。私は最近まで知らなかった。なんで、教えてくれなったのよ!
なんて言ったら、聞かれてないもん!って芽依だったら答えそうだね。
白い五本のバラの花言葉、芽依なら分かるよね。今年はその花言葉を芽依に送ろうと思います。長々と話すぎちゃったかな・・・せっかく来たんだし、いいよね。また、寂しくなったらここに来るよ。花のプレゼントはまた来年楽しみにしてて。じゃあ、そろそろ行くよ。
「ありがと、またね」
気づけば最後の一言だけは口に出ていた。
私はそっと立ち上がり、香織のもとへ戻る。
「終わったの?」
香織はその言葉だけ口にする。それ以上の事は何も聞いてこない。私は「うん、お待たせ」と答えその場を後にしようとした。
すると、突然強い風が吹き付け桜が一斉に散りゆく。
そして私の背後から「今年も来てくれてありがと。花言葉ちゃんと届いたよ」と声が聞こえた。私はすぐに振り向いたがそこには誰もいなかった。
けれど、今のは絶対に芽依の声だ、聞き間違えじゃない。私が芽依の声を聞き間違えるわけない。そっか、花言葉、届いてたんだ・・・。会えなくても花には思いを届ける力がある。
「真奈ー、どうしたの?行かないの?」
「ごめん、すぐ行くー」
私は再び歩き出す。
「それで、白い五本のバラの花言葉ってなんなの?花に詳しくない私に教えてよ」
白い五本のバラの花言葉は【私はあなたに出会えて心から嬉しい】




