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婚約の絆を深める為に、フローラ・フォルダン公爵令嬢を領地へ招待したのだが。(ローゼンサイド)上編

ローゼンシュリハルト・フォバッツア公爵は忙しかった。

騎士団長としての執務があるので(それは口実)休みの日も、宮殿の庭にある騎士団の建物にある騎士団長室に籠って仕事をしていることが多い。仕事をしている事で煩わらしい事を忘れる事が出来た。


そう、煩わしい事でも、あまり時間を置く事も出来ない。

今、一番、煩わしい事は、フローラ・フォルダン公爵令嬢との婚姻の事だった。

フォルダン公爵とその魔族一族は、騎士団に取って有利な条件を餌にフォルダン公爵令嬢の我儘な願いを、後押ししたのだ。

騎士団に取って、古くなった魔道具の新調や、体力を回復するレブリの実は、貴重な物である。それを売って貰えるのは非常に助かる事であった。


フォルダン公爵を敵には回したくない。

そろそろ婚姻関係の絆を進めて、フローラの機嫌を取らないと…まったく煩わしいとしか思えないローゼンである。


フローラへの印象は、前の婚約者のマリアンヌと変わらない、いやもっと幼い印象だった。

まだまだ子供だ。すぐ泣くようだし、キスを期待するような仕草をしたり、これからのお守りを考えるとイライラする。


だが仕方ないので、フローラに手紙を書く事にした。


如何お過ごしですか。

今度の国の連休の3日間、私は領地に帰ります。

是非、御一緒に。

我が父、アスティリオ・フォバッツアと、母シュリアーゼも君に会いたがっています。

紹介をしたいのと、我が領地を見て頂きたい。

良い、お返事をお待ちしています。もし、御了解頂けるのなら、朝にお迎えに伺います。


その手紙を従者を呼び、フォルダン公爵家へ届けて貰う。

今日は休日なのでフローラは出かけてなければ居るはずだ。


しばらく仕事をしていると、従者が返事を持ち帰って来た。


お久しぶりです。ローゼンシュリハルト様。

喜んで。御一緒させて頂きますわ。

お迎えお待ちしております。

その時はわたくしの専属のメイド、サラもご一緒させて頂きますわ。

宜しくお願いします。


返事を見てローゼンはため息をつく。

やれやれ、何だか胃が痛くなるローゼンであった。


それから一週間後の早朝、馬車に乗り、フォルダン公爵家に着けば、

フローラとサラが出て来た。サラが軽そうなちょっと大きいバックを持っているだけで、フローラは小さなバック一つである。

馬車の外に出ていたローゼンはフローラに向かって。

「随分と少ない荷物だな。」


フローラはにっこり笑って。

「向こうに着いたら必要な物は運び込めますので…魔族は転移鏡を持っていますのよ。ただ、一度はその場所に行かないと…」

「そうか。なかなか便利な物だ。」

「ローゼン様に領地に招待頂けて嬉しいですわ。」


ローゼンは馬車の扉を開け、フローラに手を貸して、馬車に乗ってもらう。

同じくサラにも手を貸し、馬車に乗せ、自分は二人の向かい側に座る。


「我が領地は、ここから3時間位、馬車でかかる。」

「結構、遠いいのですね。」


フローラは紫色の瞳を見開いてクルクルさせる。金髪の髪を三つ編みに一つに縛り、

桃色の長いフリルのついたワンピースを着て、髪にはキラキラ光る紫の宝石が沢山ついた花の髪飾りを着けていた。


薄緑のワンピースを着たサラが。

「でも、お嬢様。帰りは一瞬ですわ。」

「そうね。サラ。ああ、どんな所なんでしょう。ローゼン様のご領地。

楽しみですわ。」

ローゼンはこのフローラという純粋そうな令嬢を、からかってみたくなった。


「勿論、私と婚姻するからには、覚悟はできているはずだ。

私は騎士団長の仕事で忙しい。父も同じく騎士団長だった。母は領地の経営、貴族の女性たちを招いての茶会、社会奉仕活動。

フォバッツア家を支えて来るのに、それはもう忙しく今も過ごしている。

フローラ、君にそれが出来るかな?」


さぁ、返事はどう来るか…。本来、この問いは母が言うだろう問いである。

ローゼンの両親はそれはもう、自分にも他人にも厳しい理想を突き進むような人達だ。


フローラは目をキラキラさせて。

「まぁ。さすが英雄、シュリアーゼ様。素晴らしいですわ。シュリアーゼ様が主催された、ユリシーズ祝祭日バザー。私も行きましたのよ。あのような活動をされるなんて。売り上げて沢山の恵まれない子供達が救われたと思います。あのような女性になれるよう、私も努力していきたいと思いますわ。」


更にローゼンは畳みかける。

「それは良い心がけだが、君は物を沢山持っていると聞いているが。

婚姻したらさすがに我が屋敷に、それを運びこむのは無理だ。その物を捨てろと言ったら諦めきれるのか?」


フローラが身を乗り出してじっとローゼンの顔を見つめて。

「タダカツベアを捨てろとおっしゃるのですか??」

サラまでも、ローゼンに詰め寄って。

「タダカツベアは、私たちの心のよりどころです。タダカツ様が心を込めて作られたタダカツベア・・・それを捨てろだなんて。」


二人に詰め寄られて、焦るローゼン。

「いや、無理に捨てなくても。」


フローラはほっとしたように。

「良かったですわ。勿論、物は整理して運び込みます。お姉様の魔王城に残りは預かって貰いますわ。あそこは広いだけが取り柄ですから。」

サラもほっとしたように。

「良かったですね。お嬢様。タダカツベアはお嬢様の宝物ですから。」


タダカツベアって一体全体???

まぁそれはともかく、物に関しては何も言わないほうがよさそうである。


フローラがニコニコして。

「そういえば、クロード・ラッセルがお世話になっております。」

ローゼンは思い出したように。

「ああ、あの騎士団の見習いか…。彼について聞きたいと思っていた。彼も魔族なのか?」


「ええ。魔族ですわ。第一魔国の王族です。お姉様の恋人で…こちらの人間の国で言われる婚約者のようなものですわ。」

フローラの言葉に納得した。

ただの人間ではないとは思っていたが。


じいいっと自分を見ているフローラの視線に気が付くローゼン。

「ん?何か私の顔についているかね?」

「いつ見てもお美しいですね。ローゼン様…」


その時、馬車がガタンと揺れて、フローラはローゼンに抱き着いて来た。

「あら、きゃっ。私ったら。」

今のはわざとらしくなかったか??


サラが自分の顔を覆って。

「きゃあ、お嬢様ったら。大胆ですね…。サラは見ていませんから、ここで思いっきり…」


フローラが目を瞑っている。

ローゼンは思った。

これは口づけを強請られているのではないか??


フローラの両肩に手を置き、正面の席に戻してやり。

「怪我が無くて良かった。」

「もう、ローゼン様の意地悪っーー。」


早く領地に着かないか…頭が痛くなるローゼンであった。

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