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赤の聖剣の持ち主、ミリオン・ハウエル(ミリオンサイド)

真紅の長い髪の毛に、同じく燃えるような真紅の瞳、真っ黒なマントを椅子に投げかけたその逞しい男は、ベットの両脇に美女を侍らせて半裸で酒を飲んでいた。


彼の名はミリオン・ハウエルと言う。


部屋は宿の中でも高級宿で、広い部屋の丁度品は高級な物で揃っている。

ミリオンの逞しい胸元に右脇から、もたれかかっているのは、ラリィーン、長い銀髪に豊満な胸。お色気ムンムンの美女で、黒のマーメイドドレスを着乱し、指先でミリオンの胸をなぞりながら。

「ねぇ…ミリオン。いつまでこの街に居られるの?」


左脇からミリオンの頬にちゅっとキスをするもう一人の女、いや少女というべきか。

名はスーティリア。豊かな桃色の長い髪を持ち、白いレースのあしらったワンピースを着た

可愛らしい少女がミリオンの髪を上から撫でて。

「沢山、いてくれなきゃ嫌なんだから。ね?ミリオン。約束だよ。」


そしてこの3人に共通するのは頭に生えた羊のような巻いた角、尖った耳。

彼らは3人とも魔族である。


地下にある第二魔国の中心都市、サピオスで一仕事終えたミリオンは高額な報酬を貰い、

贅沢に休暇を楽しんでいるのであった。彼の職業は冒険者、かつ王族からの厄介ごとを片付ける便利屋といった所である。厄介ごとを片付ければ、高額な報酬が約束されていたりするのだが、大抵、ぱぁっと使い切ってしまい、金に困れば各魔国に居る顔なじみの所へ転がり込んで、好き勝手に過ごしたり、顔なじみの依頼で、ちょっとしたトラブルを解決して金を稼いだり、かなりの自由人だった。


「それにしても、この剣も役にたたねぇな…もう、刃こぼれしちまうとはな。」

グラスを置くと。サイドテーブルに立てかけてあった大型の剣をぐいっと引き寄せて、

二人の前でするりと抜いてみれば、確かに所々、刃こぼれが見られる。


ラリィーンが刃を指先でなぞりながら。

「貴方に使われるには役不足ね。魔道具で強化されているはずなのに、もう魔力が残っていないわ。」

「ミリオンが乱暴に使いすぎるんだよ。」

スーティリアがくすくす笑う。

ベットからぽんと飛び降りると、大きな水晶玉を取り出して。

「それじゃ、スーティリア様が、どこへ行けば良い剣が手に入るか。占ってしんぜよう。うふふ☆」


水晶玉を頭の上に掲げれば、キラキラと輝きだして。

「さぁ。私の可愛い水晶玉よ。愛しのミリオンの剣のありかを教えたまえ。」

水晶玉の周りを小さな天使たちが現れてくるくると回る。

天使の姿をしているが、予知をつかさどる妖精らしい。


ぼやっと水晶玉の中に光景が映し出された。

ベットから降りてミリオンと、ラリィーンがその光景を覗き込む。


第二魔国の魔王、アイリーンと、第一魔国の魔王の弟、クロードが立っていて、それぞれ剣を手にしている姿が映し出された。

アイリーンの手には紫色の美しき宝石があしらわれた小ぶりの剣、クロードの手には鞘の根元は藍色の先に行けばオレンジや黄色で、夕焼けを思い起こさせるような色が施された美しき中位の剣。


その二つの剣を見た途端、ミリオンは唸った。

「あれは聖剣だな。凄い力を感じる。」

スーティリアが奥に置いてある、一つの剣を映し出して。

「これがミリオンの剣じゃないかな?」


その剣は燃えるような赤色で、鞘に見事な黒龍が彫刻されている。

「あれは俺の剣だ。よしっ。貰いに行くぞ。場所、どこよ。」

ラリィーンが目を見開いて。

「あら、いやだわ。人間界よ。あそこは。」

「人間界だと???」


スーティリアがぽんと水晶を放り投げれば水晶が光の粒になり、転移魔法陣が床に広がる。

「準備は出来ているよー。」

「いきなり出現するのも考え物だ。人間界ってあまり知らないんだ。魔界なら任せておけって言えるが。戦闘になる危険がある。」


ミリオンの慎重な姿勢に、ラリィーンが身を寄せ、耳元に甘く囁く。

「あら。魔王のアイリーン様とは顔見知りでしょ。クロード様も。」

スーティリアが手招きする。

「早くしないと、二人とも帰っちゃうよ。」

「くそっーー。ええい。ままよ。」

ミリオンはマントを羽織ると、剣を手に持ち、転移魔法陣に飛び込んだ。

ラリィーンとスーティリアが続く。


宮廷の奥殿で、部屋の外へ出たアイリーンとクロードを見送っていた、ディオン皇太子殿下は背後に現れた人影に振り向いた。

燃えるような赤い髪をした魔族の男。思わず手に緑の聖剣を掴む。

ミリオンがふと横を見ると、赤い大剣が輝いていた。


ぱっと掴むと凄く手になじむ。鞘から剣を抜けば更に輝きが増して、そのままディオン皇太子殿下に飛び掛かっていった。

ディオン皇太子殿下が緑の聖剣でがしっと受け止める。

二つの聖剣は稲妻を発して、グラグラと部屋全体を、いや宮殿を揺らす。

ぱっとミリオンは離れると、横に走り再びディオン皇太子殿下に剣を払った。再びガシっと受け止められる。

二人が打ち合う度に、稲妻が走り宮殿が揺れる。


アイリーンが叫んだ。

「おやめなさい。二人とも。」

「俺が止めてくるっ。やめないか?」

クロードが藍色の聖剣を手に、鞘から抜くと二人の間に突っ込んでいく。

カーンと3つの剣がぶつかって、激しく稲妻が発せられ天井が崩れた。


ローゼン騎士団長がゴイル副団長と近衛騎士達と共に駆け付けた。

「騎士団。魔道具作動。外に被害が広がらないよう部屋全体に結界を張れ。」

ゴイル副団長を始め、近衛騎士達が盾をかざして結界を張る。


ローゼン騎士団長が床に黄金に輝く剣を突き刺した。

地を稲妻が這って、ミリオンとディオン皇太子殿下を吹き飛ばす。

クロードはその時はアイリーンを庇って離れていたので無事だった。


魔法陣からひょっこりと顔を出したラリィーンとスーティリア。

「あら、凄い事になっているわね。」

「ちょっと転移を遅らせてよかったでしょ。」


ローゼン騎士団長が、吹き飛ばされて床に座っているディオン皇太子殿下に近づいて。

「御無事ですか。殿下。」

「ハハハ。ローゼン。大した事はない。天井壊れちまったな。」


ミリオンも床から立ち上がって。

「いや、楽しかった。もっとやりたいものだ。」


アイリーンが二人を睨みつけて。

「いい加減にしなさい。ミリオン、何です。貴方、来た途端、攻撃とは。」

ミリオンがディオン皇太子殿下に近づいて、右手を差し出し引き起こして。

「これだけの男を見たら血が騒ぐだろう。クロード様もまぁまぁの使い手だけど。」

「どうせ俺はまだまだだよ。だから騎士団見習しているんだ。」

ミリオンの言葉にむくれるクロード。

悔しそうだ。


ミリオンはローゼン騎士団長の方を見やり、

「あんたが、もしかして…伝説の英雄シュリアーゼの息子か?」

ローゼン騎士団長はチラリと相手を見やり。

「そうだが…ディオン皇太子殿下にこれから先、敵に回るようならこの私がただではおかない。覚悟しておけ。」

ローゼン騎士団長はディオン皇太子殿下に向かって。

「それでは失礼します。騎士団、撤退。」


スーティリアがミリオンに。

「あれが勇者ユリシーズ物語に出てくる女剣士シュリアーゼの?」

「そうらしいな。確か息子はローゼンシュリハルトとか言っていたからな。」

ミリオンの言葉に、ラリィーンが。

「怖い殿方ですこと。そこがまぁ素敵なんですけど。もっとも…貴方の右にでる男はいないわ。」

首に腕を絡めてきたラリィーンとイチャイチャしようとすると、

ディオン皇太子殿下は立ち上がりミリオンに握手を求めてきたので、がっつりと握手をして。


「お前が赤の剣の持ち主だな。名を教えてくれ。俺はディオン・マディニア。

マディニア王国の皇太子だ。」

ミリオンはああと思い出したように。

「人間界に詳しくない俺でも、聞いた事がある。規格外の勇者が居るってな。俺の名前はミリオン・ハウエル。魔界の冒険者だ。」


ラリィーンがウインクして。

「あら、男前の王子様。わたくしはラリィーン。ミリオンの恋人よ。」

ミリオンはふふんと笑って。

「俺の恋人はあちこちに居るのさ。」


スーティリアは目をキラキラさせて。

「私はスーティリア。ミリオンの恋人よーー。」

ミリオンはスーティリアの頭を撫でて。

「可愛いお嬢ちゃんも俺に夢中だからな。」


アイリーンが呆れたように。

「相変わらずで何よりだこと。貴方は仕事は出来るけど、素行は悪いのよね。失礼しましたわ。ディオン皇太子殿下。クロード、直して頂戴。」

クロードが頷いて、魔族の姿になると、手を広げ、精霊たちに願う復元魔法を使えば、壊れた天井も、部屋も全て元通りになった。

スーティリアがしみじみと。

「さすが、クロード様、100点満点の出来ですね。」

クロードは人間の姿に戻り。

「俺は復元魔法は得意なんだ。」

アイリーンは、ホホホと笑いながら。

「私は破壊の魔法が得意なのよ。どう壊してやろうか…楽しくて楽しくて。」

「「危なねーーー」」

と思う全員であった。


ディオン皇太子殿下は、ミリオンに向かって。

「これで6人、あと1人の聖剣の持ち主は解らないが、俺達は何か使命を帯びていると思える。何かあったら協力してくれるか?ミリオン。」

ミリオンは頷いて。

「勿論。俺はあんたを気に入った。いつでも連絡取れるよう、転移の鏡を置いておく。

何かあったら俺を呼んでくれ。」

「解った。」


せっかく人間界に来たので、ミリオンは観光をしようと思った。

ラリィーンとスーティリアが一緒だったら楽しいだろう。

良い友も出来た事だし、ご機嫌のよいミリオンであった。



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