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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 81

野巫の祭 81



落ち着くことができないままに寝て起きた。


今日も暑くなりそうだな。

開けた窓から入る風がすでに暑くなっている。


弱めにエアコンをつけて簡単な朝食を済ませたら、ちゃぶ台に型遅れのノートパソコンと紙のノートを置く。

明日、週が明けて益田さんに連絡した時に聞くことやお願いすること。

また、同級生と思われる人たちと会えた時に聞くことなどをまとめておこうと思う。


ひょっとすると今日の日曜日でも益田さんが役場に来ているかもしれないが、だとして休日返上で働いていることになるから余計な手間をそこへ入れてしまうのは申し訳ないし、いきなり連絡しても私も何から聞いてよいかもまとまっていない。

今日一日でそれらを自分なりにまとめておこうと思う。


まずは私を知っている人を見つけられるかどうか。

そもそもだが私は本当に浪江町で生まれたのか。

誰も私を憶えていなければ、それは居なかったのと同じだ。

元の存在がわからないという点で今と同じになってしまうが聞かされたことではなく自分で調べたこととして納得することはできるだろう。

そうだ、役場の機能があるのなら出生記録が残っているかもしれない。

もし記録が残っているのなら間違いなくそこから始まったと確認ができる。


んっ?

出生記録⋯

そう⋯いえば⋯自分の記録を見た記憶がほとんど⋯無い⋯。


戸籍謄本も就職する時に提出するのに取るには取ったが、中身をほとんど覚えていない。


婚姻届を出すときも、子供が生まれた出生届を出すときも、引越しで住民票を移すときも、全て妻がやってくれていた。

今の現住所もまだ浅草に変えていない。

それで免許証の現住所変更もしないままになっていたのだった。


自分の公的な書類をまるで見ていないとは。


忙しかったから⋯


いや、それは言い訳にしかならない。

会社以外のことを全て任せてしまっていた。

妻に、利与に。


顔を上げて写真を見る。


「すまなかった。こんなに自分のことを知らないなんてな。本当にすまない。」


写真の妻は笑っている。

この笑顔を見ながら残りの人生を過ごすはずだった。


「くそっ」


ノートパソコンの電源を入れて、紙のノートを開いた。








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