野巫の祭 80
野巫の祭 80
何から始めるかはわかっている。
心強い味方が一人いる。
埼玉県加須市の益田さんだ。
彼に浪江町出身で私の同級生と思われる人たちに会わせてもらおう。
私のことなど憶えてはいないかもしれない。
けれどその人たちから聞くことが私の始まりになるのだろう。
その上の世代はすでにいないだろうし、仮にいたとしても話を聞くのは同級生たちに話を聞いてからにした方がいいと思うから。
本当なら家族に全てを話して理解をしてもらうのがいいのだろうが、息子のところにはすでに姿を見せているようだ。
もちろんだが確実にそうだとは言えない。
まだ私だけがそうだと感じているだけだ。
娘の方にもあらためて聞かなければならないし。
息子のところに現れたとすれば、娘の周りにも現れていると考えていいだろう。
だけど気がついているのが私だけだとしたら。
妻も知らなかったとしたら。
このまま話をしても、気がふれたかボケてしまったかと思われるだけだろう。
私自身が整理をして説明ができるようにならなければ。
そうだ。
山さんにも話さなければならないか。
同級生たちと会って何を聞く?
記憶も記録も無い自分のことを、本当に幼い頃に会っていたとはわからない人たちに私の何を聞けばいいのか?
何もかもわからないことばかりだが、実際に話が通じた唯一の人、益田さんに連絡しよう。
私だけならまだしも、息子の状況を考えるとのんびり構えてはいられないしな。
明日から一歩でも半歩でもこちらから奴らに近づいてやる。
私の周りで起きていることを少しでもわかれるように、できることからやってやる。
「年甲斐もなくいきりたって、みっともないと思うかい?」
写真の妻に話しかける。
血豆からの波動が柔らかく全身を流れるように感じた。




