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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 78

野巫の祭 78




野巫の祭 78



部屋に入り深呼吸をする。


サンダルを脱ぎ流し台で顔を水で洗う。

何がどうなっている?


冷たい汗が止まらない。

体の血の気が引いているのが自覚できるほどだ。


自分だけのことではなくなっている。


息子の前にも現れたのなら娘の周りにも現れているのだろう。


まったく⋯


腹立たしい連中だ。


私たち夫婦を昔からずっと見ていて、そして接触してきた。

健のことろには話を聞いてもわかるほどハッキリと。

絵莉のところはどうなのか。もう一度連絡しなければ。


何なのだ本当に。


そうだ、まだ「ただいま」を言っていなかった。


台所から妻の写真の前までいき力無く小声で

「ただいま⋯」


そう言いながら写真の妻を見る。

相変わらず満面の笑顔で、異様な写真の中で妻だけは輝くような笑顔だ。


こんな時にも見られていたんだな。


そして今は私たちが。


今は⋯


ズゥ〜ンと胸の血豆のようなものが波のように広がる振動を2〜3度大きく繰り返した。


今度は何だ。


妻の写真を見る。


こんな状況が結婚する時から、いや、きっとそれ以前からだろう。

奴らは静かに見ていたんだ。

何の目的で?何故私たちを?


とはいえ私も奴らが接触してきたから気がついた。

今までは気がつかなかったのだから。


妻は、利与は知っていたのだろうか。

利与には接触する前に、気がつく前に亡くなったのだろうか。


ドックン!


今度は全身に響き渡る強さで胸から振動が広がった。


まさか、知って、気がついていた⋯


いま私が子供達にしているように家族に気づかれないようにしていた⋯


それでいてこの笑顔だとしたら。


いつからだ。

いつ気がついて、いつから私や子供達に気が付かれないようにしていたのか。


くそっ

近くに居たのに


俺が気が付かなかったのか


「守ってくれていたのかい」

一瞬、写真の笑顔がとても優しい顔になったような気がした。








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