表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野巫の祭  作者: 凡栄
PR
55/81

野巫の祭 55

野巫の祭 55




シャワーで汗を流して着替えをしたらサッパリした。


サッパリしたが部屋の中は窓を開けていても昼間の熱が残っているのか、なかなか空気が変わらない。


しょうがない、せっかくシャワーを浴びたのにまた汗をかきたくないので、窓を閉めてエアコンと扇風機をつける。


とりあえず体には扇風機の風を当てて汗が出ないように。

エアコンは、この後の夕飯を食べるときに食欲が無くなるのを避けるために少し湿気を取っておきたいのだ。


さて、気になること多いが食材を買いに行かなければな。

飲物も切れているし。

麦茶のパックとポン酢も残りがわずかになっている。


では買い物へ行くとしよう。


ズボンにベルトと携帯ケースを取り付けて、靴を履くのは面倒だからサンダルにしよう。


財布をズボンの右後ろに入れて、鍵を左前に入れて、とりあえずは忘れ物はないだろうか?


玄関へ行き、サンダルを履き

「行ってきます」


明るいけど誰も居ない部屋に向かって言う。


扉を閉めて鍵を閉めたらエレベーターまで行き、陽が沈み少し空気が柔らかくなったように感じた。


上がってきたエレベーターの扉が開くとき、一瞬誰かが乗っていないか身構えた。

変な力が入ってしまう。

やれやれだ。


いつもの道で、いつものスーパーへ向かう。


が、今日は裏通りから行ってみるか。


菊水通りから国際通りへ向かってジグザグに歩いていく。

この辺りはいわゆるラブホテル街で、今まで通らないようにしていた。


まぁ、じいさんには縁の無い場所だとも思っていたし。


こういう場所は妙な存在感があるもので、道をスッと曲がった途端に異世界へと入り込むような不思議な気配というか空気がある。


人工的なものだとわかってはいても、中へと進むと圧迫感のようなものを感じるな。

若ければワクワクするのかもしれない。

そんな怪しさというか背徳感のようなものを漂わせる場所だ。


すると、スーパーの裏までくるとラブホテル街のちょうど真ん中あたりに八幡神社があった。

今まで気がつかなかったが、すごい場所にあるものだな。


スーパーまでは50mくらいか。

いや、わからないものだ。


こじんまりとした敷地と社殿だが、樹々が枝を広げて実際よりも大きく見える。

ラブホテル街特有の看板の灯りで照らされて艶っぽくすら見えるものだ。


今までは表通り沿いを歩いてきたが、気にして見なければわからない位置にある。


んっ、待てよ。


部屋からの距離を考えると、この八幡様が氏神様になるのかな。

だとしたら手を合わせておかなければな。


信仰心の無い私には珍しく自分から手を合わせにいった。


境内は10〜15m四方だろうか、本当にビルの中にポツンと建っている。


「本当になぁ、何で気がつかなかったかな⋯」


そう呟きながら一歩中へ入った途端、身体が押さえつけられるような圧力を感じた。


「ぐっ、な⋯なんだ⋯」


身体に力を込めて頭を上げると正面に社殿のガラス扉がった。

中の灯りは点いていない真っ暗な部屋だが、その奥から渦巻くような気配が襲ってくるようだ。


もう一度、社殿を見ると、まるで生き物のように膨張したり回転しているようにも見える。


途端に崩れるようにして地面に倒れた。


何とか仰向けになると、ラブホテル街の妖しい色に染まった社殿の屋根や樹々がグルグルと回っている。


身体は宙に浮いたような感覚で、意識も遠のいていく。


(死ぬのか⋯)


そう思ったとき、身体の中から声が聞こえた。


(大丈夫ですよ)


利与、利与だ。

今の声は確かに利与の声だ。


しかし、意識はどんどん遠くなり、視界もどんどん狭くなっていく。


「な、何が大丈夫なんだ⋯」


そう呟いたのを最後に気を失った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ