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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 35

野巫の祭 35




窓の外はかなり明るくなってきた。

「おはよう⋯何も言ってくれんか⋯」

写真の妻に声をかけ、点けっ放しでいた明かりをベッドの部屋だけ消す。

こんな時間に目が覚めてしまったが、気になることが多すぎてとてもベットには戻れない。

昨日の夜は気絶してそのまま寝てしまったようで身体が汗でベタベタしている。

とりあえずは汗を流すか。

浴室に向かうと台所のテーブルには昨日の夕方に買ったものがそのまま置かれていた。

そうだった⋯これらを冷蔵庫にしまおうとしていた時にやるせない気分に襲われたのだったな。

きっと心のどこかでは叫びたいほど寂しかったんだ。

今だって、この空間に一人きりでいることが切なくてたまらないのだからな。

そういう気持ちを出してはいけない、出したらキリがなくなる。

そう思い込んで我慢していたんだ。

でも生きている⋯。

生きるってなんだ?

こんな状態で、変な目にあわされて。

それでも目が覚めればまた一日が流れていくのか。

しんどいな⋯。

浴室へ行き鏡に自分を映す。

何度見ても寂しい年寄りが立っている。

胸につけられたアザは血マメの様になり、さっきよりも色が少し濃くなっている様だった。

「これは一体何なのだ⋯」

扉を開けて風呂場へ入り、少し熱めのシャワーを浴びる。

胸の血マメを気にしながらだが、頭からサッサと洗って一気に流して身体を拭く。

タオルで身体の汗を拭いながら居間へと戻ると今日は少し暑い。

エアコンをつけ、扇風機の風を身体に当てる。

ここでようやく気持ちが落ち着いてきた。

「ふぅ〜」

いつもならばシャワーの後で扇風機に当たるときには気持ちよく感じて「ふぅ〜」が出るのだが、今朝の「ふぅ〜」はそうではなかった。

さて、今朝は何から始めよう。

昨夜のうちに洗濯機をセットしていなかったから、まずは洗濯機を回すか。

昨日は汗をよくかいたし、着替えも多かったからな。

量は少ないが回しておくか。

洗濯機に昨日と今朝の洗濯物を入れて洗剤を入れスイッチを押す。

水が入っていく音が部屋中に響く。

出しっぱなしになっていたテーブルの上の品物たちだが、飲物は冷蔵庫に入れて、食べ物は朝飯として食べてしまおう。

トクン⋯

胸の血マメが脈を打つように感じた。

その途端ふっと携帯電話が気になって手に持つと

「あっ」

思わず声が出たが、昨日息子に電話してそのままになっていたのを思い出した。

携帯電話の履歴を見ると、その後に向こうからの返信はなかったようだ。

忙しいのだろう。

そう思い携帯を閉めようとして手が止まる。

昨日話そうとしていたことは早く伝えた方がいいか。

しかし、この時間ではな。

やはり夜まで待とうか。

起き抜けに話すような事でもない。

夜にしよう。

では何で携帯が気になったのかな?

もう一度、履歴を見ると見慣れない番号が出ていた。

誰だろう?この着信は?

時間は⋯あぁそうだ、山口に会いに行っている頃の時間だ。

さて、誰だろうな。

しばらくその番号を眺めていると、どこかで見たような番号だ。

ん?

画面を切り替えて発信履歴を見てわかったが、この番号は双葉町役場の番号だ。

何で役場からこんな遅くに電話があったのだろうか。

ふ〜ん

これは向こうが開く時間になったら連絡してみよう。

その間にかなり早いが朝飯とするか。

テーブルの方へと戻っていった。




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