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野巫の祭  作者: 凡栄
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野巫の祭 34

野巫の祭 34




久しぶりで夢を見た。

灰色の雲の中にいるような世界で、遠くに丸い窓のようなものがある。

そちらへ向かってフワフワと流れるように移動して窓の傍までくると中を覗けた。

そこには人の集まる部屋のようなものがあった。

その薄暗い中に布団の上でもがきながら横になっている子供がいる。

その周りを薄明かりで顔だけ浮き上がる大勢の大人達が囲んでいて、そのほとんどは女だった。

ザワザワとしていると子供の頭のところに座っている一人の老婆が皆に向かって静かにするようにだろうか、何かを叫んだ。

一斉に身体の動きが止まり静かになった大人達の中心でもがき続ける幼い子供。

全身に汗をかき、身体をよじらせながらうめき声を上げているのだろうか口を開ける。

大人達の顔は⋯あの顔だ。

無表情な観察するような顔。

何をしているのか?

無表情な大人達の中に眉をしかめて心配そうにしている人が二人いた。

それは若い時の私の両親だった。

しばらくすると先ほど叫んだ老婆に二人して何か言っている。

その両親に向かって老婆が何かを叫ぶと、両親はさらに老婆に詰め寄って着物を掴みながら何かを頼むように頭を下げている。

それを払い除けながら老婆が叫ぶと、私の両親は周りの大人達に引きずられるようにして部屋から出されてしまった。

入れ替わるように反対の襖が開き、別の男女二人の大人が部屋に入ってきた。

それぞれ湯帷子のような物を身につけ、それ以外の下着などは身につけていない。

その二人が私の両側に沿うようにして横になる。

また老婆が何かを叫ぶと身体を激しく動かし出した。

それに呼応するかの様に子供の両側にいる二人の身体が苦しむように激しくよじりだす。

取り囲んでいた大人達も興奮するようにして集まって覗き込んでいる。

老婆が何かを手に持って、それを子供の両側に寝ている大人の身体に当てて、それぞれに向かって何かを叫んだ。

その瞬間、両側に寝ている大人達はピタリと動かなくなり顔は先ほどまでの苦しむ表情ではなく安らかな顔になっていた。

少し時間をおいて中心にいる幼い子供は絶叫した後にしばらく痙攣をして動かなくなった。

周りの大人達はかなりの興奮状態になっているが、歓喜というものではないようだ。

中心で動かなくなった子供の顔をどうにかして見ようと思い身を乗り出そうとした途端に、立っていた窓の傍から弾かれるようにして、その場から身体がぐんぐん離されていく。

窓はすぐに小さな点になり、さらに景色全体を包み込むような光で段々とぼやけていき、そのうち真っ白な世界になってしまった。

眩しいほどの光の世界。

自分が動いているのか止まっているかも、上も下もわからない。

すると今まで感じなかったが、何か暖かい風が頬を撫でているように感じるようになり、景色を包んでいた光は徐々に弱くなると、視界の周辺部から別の景色が見えてきた。

今度は何だろう。

真ん中に光の球のようなものが残っているが、少しずつ周りにあるものは見えてきた。

ボ〜っとそれを眺めていると見たことのある景色だ。

んっ?

これは今の私が居る部屋の天井だ。

光の球は点けっぱなしの天井の明かりだった。

しばらくの間、夢と目の前の景色が違う現実の世界だと理解できないでいた。

頬を撫でるように感じた風は開けっ放しになっていた窓から入ってきた風だったのだな。

頭を横に向けて時計を見ると4:15を指している。

「むっ⋯む〜ん⋯」

身体を起こして窓の外を見ると、明けてきた空に浅草の街が黒いシルエットになっている。

チクッ

胸に針が当たったような感じの弱い痛みが走る。

そうだ!

アザは?

あわてて胸を見ると手の平より一回り大きかった赤いアザは、大きめの血豆ほどまで縮んでいて色も濃くなっていた。

恐る恐る触れてみると痛みは感じない。

ただ、そこだけ体温が少し高いような感じだ。

窓の外は空がみるみるうちに明るくなっていく。

昨日の出来事は何だったのか。

この胸に残った赤いものは何なのだ。

今見た夢は何だったのか。

あの大人達に囲まれて苦しんでいたのは、ひょっとして記憶が無い頃の私だったのではないだろうか?

昔のことを思い出そうとすると嫌な気持ちになり心の中に現れる禍々しいものと、今見た夢の景色は重なっているように思う。

夢の中の両親はその後どうなったのだろう⋯。

頭が混乱していて痛いほどだ。

窓を開けっ放しだったせいか、不思議な夢のせいなのか、喉がカラカラに渇いてたまらない。

ちゃぶ台に置いたままの麦茶を喉を鳴らしながら一気に飲み干した。










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