はじまり。
いよいよサラの学園生活が始まります。
【登校時・校舎】
翌日、登校中の出来事だった……。
「んっ?」
階段を上り切ろうとした瞬間、サラは突然肩を掴まれ、後ろに引き倒されそうになる。
だが――
咄嗟にその手を掴み、女子の腰に腕を回す。
「へっ?きゃあぁぁぁぁーー」
「階段落ちって怖いでしょ!」
あろうことか、二人揃って階段の上からバック宙を決めたのだ――。
「ご、ごめんなさい(涙)」
三回転のバック宙を決めて着地すると、女子の顔は真っ青になっていた。
そして、次は定番の足掛け攻撃に晒されるが……。
「いやーん」
足を引っ掛けようとしてきた相手の足を、サラは逆に蹴り上げた!
ひっくり返った貴族令嬢は、無様にイチゴ柄のパンツを男子生徒の前で披露してしまう――。
「あら、可愛い柄ね!見られたくないなら、ほらレギンスにしなきゃ」
スカート捲りなどの嫌がらせを警戒していたサラは、見られてもいいようにレギンスを穿いている。
「……」
サラは勝ち誇ったように、レギンスをチラリと見せた。
虚しい敗北感だけが、その女子の心の中を吹き荒れた。
「返り討ちって楽しいわ!」
野生児のように育ったサラは、抜群の運動神経で、嫌がらせを全て防ぎ、逆に返り討ちにしてしまったのだ。
「……何という身体能力なのだ(呆)」
一部始終を物陰から見ていた――アーヴィン王国の王子、アレックス・ウルフ。
その強さに衝撃を受けてしまう。
それだけなら良かったのだが――。
「彼女の素性を調べてくれないか」
「畏まりました」
ウルフはデルタ王国と密接な関係構築のために、特待生として招かれていた。
ジャスティン国王は、星団側の王族や貴族と良縁を結ぶよう、ウルフに言い含めていた。
ところが――。
ウルフ自身は、平民だと思い込んでいるサラの強さに心を奪われ始めていた――。
※※※※※
【Fクラス・教室】
「Fランには来ないから、快適だわ~」
嫌がらせは教室に入るとピタリと止む。
底辺クラスの教室にまで乗り込むのは、彼らのプライドが許さないのだろう。
「うふふ、あいつら朝から大目玉を喰らっていい気味よ」
サラが笑っている理由、それは昨日の嫌がらせに対する報復が、すでに済んでいるからだった。
昨日、ロッカーに悪戯をしていた女子生徒たちの映像を、校長へ送り付け――。
『適切な処分をしなければ、この映像をWEB上に公開します』
そう通告していたのだ。
「いやいや、それはちょっと……」
校長としては、できるだけ穏便に済ませたいところだった。
しかし――。
「分かりました。では、パパとお話してください!」
サラは、学校が面倒事を嫌い、あの映像をWEB上に公開されるのを嫌がることも、最初から見越していた。
つまり――証拠を突きつけて、最後は親に話を通せばいい。
そして、急遽行われた、強面のルドルフ(仮親)とのオンライン面談――。
『クーン王国の民に対する嫌がらせは、アーレイ陛下に報告しなければなりません!』
その場で淡々と言い切られてしまえば、学校側も無視するわけにはいかない。
結果――。
「謹慎か反省文、どちらかを選びなさい」
「えっ?マジ」
あの二人は登校した途端、個室へ連行され、反省文を書く羽目になったのだった。
次に――。
『サラは男を誑かす淫らな女——』
と言う噂を流されたが――
「はっ?男より剣でしょ、私は弱い男など相手にはしない!イケメンでもボコる!」
とまぁ脳筋全開で、教室にいた男子に向かって口上を垂れると――。
「あの女に近づく男っているのか?」
「脳筋だぞ、それは無いだろ」
王族だと悟られないため、登下校は必ず一人。
本来の美貌も偽装魔法で隠され、貴族連中から嫌われている。
「お貴族様のお遊びは陰湿よね〜」
「サラさん、凄いね、素敵よ」
貴族相手にも一歩も譲らず、嫌がらせを完全撃破する男前の彼女に、感銘を受けた女生徒が集まる。
当然、そのような噂はあっという間に霧散するのだった――。
※※※※※
【王族用・控室】
初日の昼休みの時間だけは、皆で集まりランチをしようと決めていた。
そろりそろり――。
サラは学友に見つからないように、周りを警戒しながらその扉を開く。
「ねぇステイシー、入学早々暴れ回っているみたいね」
「あはは、そうなのよ。グレ何とかという奴とやり合ってから大変なのよ」
フィグネリアがいるので、久しぶりに偽装を解いてもらい、いつものように馬鹿話に花を咲かせる――。
脳筋娘であっても、気が抜ける時間は必要だ。
かつて一緒に遊び回っていた時と同じ、屈託のない笑顔に戻っていた。
「ねえアイラ、勉強教えてよ。馬鹿のままだとパパに殺されるの」
「もう、姫姉様は剣に現を抜かしてばっかりなんだから!」
「えへへ……」
王族専用控室に一旦入れば、王位継承順位によって立場が逆転するが、ステイシーは威張ることなく、アイラに頭を下げ、勉強の毎日を続けていた――。
※※※※※
【数日後……】
サラに対する陰湿ないじめは、徐々に鳴りを潜めていった。
ロッカーには防犯カメラが新設され、水や泥を使った攻撃も、サラは圧倒的な運動神経でヒラリとかわしてしまう。
当然、無関係な生徒が被害を受け、けしかけた側が教師から叱られるという有様だった――。
「あら、今日は足掛けとかしないのね」
「……」
身体に触れれば、まず間違いなく逆襲される。
最近では、華麗な足技に風魔法まで組み合わせ、仕掛けてきた女子をパンツ丸出しの刑に処していた――。
人前であられもない姿を晒され続け、流石にグレイス派の女子たちも心が折れてしまったらしい。
こうして――。
サラへの嫌がらせは、いつの間にか鳴りを潜めていた。
【数日後・闘技場】
「やったー、今日は剣だ!」
そして待ちに待った、剣の授業。
水を得た魚のようにサラは、はしゃいでいる。
一方――
「アイツ、絶対負かしてやるわ!」
「あの脳筋女をぶち殺したい」
グレイスの配下もさることながら、一般人が剣技に優れているはずがないと、思い込んでいる貴族連中は、ここぞとばかりに攻め立て、鼻をへし折るつもりだ――。
「今日は皆さんの実力を見るだけなので、木剣を使ってください」
そして、練習試合が組まれることになる――。
「うーん、木剣か……適当に打ち負かせばいいかな」
常に真剣で稽古をつけてもらっていたサラには、危機感のない木剣など物足りない。
脳筋娘は、あのヒリヒリとした緊張感を欲していた――。
「死ねェェェ!」
そして当然、相手は本気でかかって来る――。
ガン!ガン!バギィィィィィン
数合打ち合うと、サラは木剣を叩き折った。
「両者引き分け!」
続行不可能になり、引き分けの判定が出る。
「チッ!」
「あら、残念ね」
男子相手には、ひたすら木剣を叩き折り、引き分けに持ち込む。――。
バキャーン!
「キャ!」
「勝者サラ!」
女子との試合では、剣を弾いて試合を終わらせる。
そして結果は狙い通りの「C」判定。
「いきなり上級生に目をつけられると、厄介だからね」
サラは全生徒参加の試合まで、能力を隠すつもりだ。
成績だけを見れば、警戒はされない。
それが狙いだった――。
「クッソ、あの底辺バカ姫、試合では負かしてやる」
武器破壊でドローになれば、まだ勝てると思い込む。
グレイスもその一人で、プライドを傷つけられ、怒りは絶頂を迎えていた。
「サラは狂剣だよな〜」
「バカ姫で十分だ!」
そして――サラに「バカ姫」と「狂剣」という二つ名が付くのだった。
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