めぐりめぐって目が回る。
私、密冷蓮菜の中学でやりたかったこと。
お母さんを説得してスマホを貰う。
→◎達成
お姉ちゃんにスプラ3で勝つ。
→◎達成
テストで100点を取る。
→◎達成
彼氏とクリーム盛り盛りのパンケーキを食べる。
→✕未達成
彼氏と海で夕焼けを見る。
→✕未達成✕
彼氏と都内で一番人混みの花火大会に行く。
→✕未達成
彼氏と横浜の観覧車に乗る。
→✕未達成
そうね…未達成の原因…
わかってるわよ…
彼氏が!
できな!
かったの!!
なんでよ!!!!
私は高校の合格通知を見ながら復讐を誓った。
「高校デビュー…じでやる…」
入学式当日!
トップふんわり、ボリュームをだして、首筋へのラインを強調!
輪郭は…こう…丸く小さく、前髪ともみあげでデザインをして…
サイドは耳珠に開けたピアス(めっっっちゃ痛かった!)を隠さないようにしないとね。
お姉ちゃんに聞いた眉毛とチーク!…はよくわからなかったけど…貰ったアミューズのカラーリップは時間をかけて丁寧に塗ったよ!
いざ!出陣!
こうしてスタートした花の女子高生!
知り合いの少ない高校を選んだからかな?高校デビューは大・成・功!!!
クラスのイケてる子達のグループに入って!
そこにはちょっとカッコイイ男子も居て!
そんで一緒に勉強したり、ご飯食べたり、放課後また勉強したり!
そんでそんで!夏休み直前、終業式!
…あれ?
こんなに頑張った一学期がダイジェストで流されちゃうの?
……ひどくない?
「呼び出してごめんな」
ここは校門を出てすぐの裏路地。
私は放課後に一度だけ一緒に勉強した斉藤くんに呼ばれ、往来から外れたそのスペースに収まった。
斉藤くんは私の目を見てから、スッと反らした。
明日からは夏休み。
これってもしかして…
こうして私に初めての彼氏ができたのでした!
でも浮かれて居られた時間は長くなくて…
初彼氏から初フラレまで何日だろ…
えっと…
40日?
夏休み中…
何回かデートに行った。
そう…彼とね…
でもその度にもやもやが、まっくろくろすけのように心の中で増殖していったの…
なんで、急いでるのに早くって言うの?
なんで、化粧してなくても良いとか言うの?
なんで、蓮菜が決めてって言うの?
なんで、居ないところで友だちの悪口言うの?
なんで、予定あるよって言ってたことを忘れて何度も誘うの?
なんで?なんで?その度に不機嫌になるの?
そして来る二学期初日、私はフラレた。
…………
………
……
…
何度目かの秋の入り口、その放課後。
「あ…」
今しか…ないのに…
私から呼び出しといて…沈黙長過ぎでしょ…
グッと力を入れて視線を上げる。
そいつは私を見てもいなかった。
そんな態度が私のピリつく表情筋を緩ませる。
でもその鼻筋、突き出た唇、鎖骨に伸びる筋、私より長い睫毛。
捲った袖も、中指と同じくらい細長い薬指も、半端に押し込んだ裾も、余って揺れるベルトの端も、膨らんだポケットも、汚れた靴も、全部、全部。
私は最後の力を眉間に込めた。
あ…耳が赤い…
「あ…あの…
その…あの…」
グルグルグチャグチャ
ボロボロポツポツ
目が回る。
「好きです」




