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第5.5話 ギルドにて ※第三者視点

 夕刻のギルド。


 報告書をまとめていたエルマは、書類の束を見て首を傾げた。


「……ねぇミレイ」


「はい」


 対面で淡々と書類を処理していたミレイが顔を上げる。


「これ、全部同じ時間に完了してるんだけど」


「はい」


 即答。


 ミレイは感情の起伏なく頷く。


「同一時間帯に完了しています」


「……普通じゃないのよ、それ」


 エルマはため息をつく。


「道の補修、薬草採取、コボルト討伐……全部同じタイミングで終わってるの」


「依頼はすべて正常に処理されています」


「処理の話はしてないのよ」


 エルマは書類を机に置き、腕を組む。


「……意味わかんないんだけど」


 エルマは額に手を当てた。


****


 その時だった。


 ギルドの扉が開く。


 ──ギィ、と軽い音。


「……あ」


 エルマが顔を上げる。


 入ってきたのは、見慣れた姿。


「ちょうどいいところに来たわね」


 エルマは少しだけ身を乗り出す。


「アリア」


 アリアは軽く手を振る。


「どうしたの?」


 何気ない返事。


 エルマは書類を指で叩く。


「この人」


「うん?」


「ボニフってあなたが連れてきた人のことよ」


「うん」


「どんな人?」


 アリアは少しだけ考えて


「……よく分かんない人」


「は?」


「今朝会って魔物に襲われてるところを助けてもらったから悪い人ではないと思うんだけど」


「そりゃまぁ悪い人ではないかも知れないけど……」


 ミレイは淡々と書類を確認しながら補足する。


「登録処理は完了しています」


「そこは問題じゃないのよ」


 エルマは腕を組み直す。


「道の補修、薬草採取、コボルト討伐」


 エルマは指折り確認する。


「これ、全部同じ日に受けて同じ日に終わってるのよ?」


「はい」


 エルマは額を押さえる。


「普通じゃないのよ、それ」


「正常な処理範囲です」


「どこがよ」


 ミレイは淡々と書類を閉じる。


「問題はありません」


「問題だらけよ」


 その時、エルマがふと気づく。


「……そういえば」


 アリアを見る。


「あなた、その人に助けられたって言ったわよね?

どんな感じだったの?」


 アリアは思い出しながら


「一瞬だった……」


「はい?」


「Bランクの狼型のやつ」


 空気が、止まった。


「……は?」


 エルマの声がわずかに裏返る。


「Bランク?」


「うん」


 エルマはアリアを凝視する。


「それ、聞いてないんだけど!?」


 思わず前のめりになる。


 ミレイは変わらず淡々としている。


「報告書には含まれていません」


「当たり前でしょそれは」


 エルマは頭を抱える。


「ちょっと待って……情報が多すぎる……」


 ミレイは書類を静かに閉じる。


「現時点では、情報が不足しています」


「それ絶対違うやつよ」


 エルマは腕を組む。


「つまり」


 視線をミレイへ。


「このボニフって人」


 そしてアリアへ視線を戻す。


「何者なのよ」


 アリアは少しだけ目を伏せる。


「……よく分かんない」


「またそれ?」


「行動に不正や問題は見られませんが」


 エルマは半目でミレイを睨むが、ミレイは淡々と作業をこなす。


「まぁ、要注目人物ってことかしら……」


 エルマはため息をつきながら諦めた。


「それには、同意します」


「結局、何者なのかしらね」


「さぁ?」


 連れてきたアリアも首を傾げた。


「そーれーよーりーもー」


 少しの沈黙。


 やがてエルマは、じっとアリアを見る。


 少し意地の悪い笑みを浮かべる。


「アリア、あなたの達成率の低さも相変わらずね」


「え、なに急に」


 アリアが目をぱちくりさせる。


「ほら、あなた」


 エルマは指を立てる。


「すぐ無茶して途中で変なことに巻き込まれるでしょ」


「そんなことないってば」


「あるのよ」


 即答。


 ミレイが静かに書類を見ながら呟く。


「依頼の達成率は平均値より低い傾向があります」


「それ言わないでよ」


 アリアがむっとする。


「ほら見なさい」


 エルマがニヤリとする。


「今回は珍しくちゃんとやったの?」


「やったよ」


 アリアは胸を張る。


「むしろ今回はちゃんとできたし」


「本当に?」


 エルマが疑う目で見る。


「ほんとに?」


「ほんとだってば」


 こうして街の夜は過ぎていった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


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