第129.5話 後は餌が食いつくのみ ※ルーク視点
サーシャちゃんがボニフちゃん達と一緒に地方行政局へ向かうところを見届ける。
早ければ今夜中に事態は動くはずだ。
ボニフちゃん達には悪いけどね。
ボクはその足で帝城へと向かった。
「はい、これ。お勤めご苦労さん」
帝城警備隊に身分証を見せると、姿勢を正してボクに敬礼をする。
そんなに畏まらなくていいのになぁと思いつつそのまま帝城の中へと入る。
「相変わらず肩が凝るね」
城内の人間が各々の仕事をこなす様子を見ながらボクはつい呟いた。
限られた者しか知らない隠し通路を通り、目的の場所へと向かう。
「あ、いたいた」
目当ての人がいたので声をかけると、盛大なため息と共にこちらを振り向く。
「余にそんな言葉遣いが出来るのはお前くらいだ」
「やだなぁ、ちゃんと敬意は払ってるよ?」
ヴァルディア帝国の現皇帝陛下、その人がいた。
「で? 何か進展があったか?」
陛下の質問にボクは頷く。
「王国から来た名代が、ルクセリアで帝国の元老院に対して工作行為をしてるっぽいよ」
ボクがそれだけ言うと、陛下はなんとも言えない表情を向けた。
「お前の管轄でない内容だな。もし、そんな話があればナイトの奴から既に報告があがってるはずだ」
「あ、やっぱり分かっちゃう?」
「もっと端的に話せ」
陛下がボクにそう催促したので、モードを切り替える。
「そういう体で元老院と繋がりのある地方行政局の職員に情報を流したよ。
王国の名代には悪いけど、元老院から遣わされた人には監視されるかもね」
「その王国の者には申し訳ないところだが……何か埋め合わせはいるか?」
ボクはその言葉に首を振った。
「《グランド・エンペラス》の最上階にタダで泊まってもらったから、それでいいでしょ」
陛下がボクの言葉に眉をしかめた。
「その金額、お前の報酬から減らすか?」
「うっそー。それは勘弁して欲しいんだけど」
「成果が出れば冗談にしてやろう」
陛下はそう言ってフッと笑った。
「じゃぁ確実に成果出さないとだねー」
「で、本命の方は?」
「早くて今夜くらいには元老院が動くとボクは予想してるよ」
そう言うと、陛下は玉座にドカッと音を立てて座った。
「元老院のじじぃどもが何やら活気付いておったが……その原因がどことも知れん国外逃亡者とはな」
ボクではなく、どこか遠くを見る陛下がフゥと息を吐いた。
「余が統治する間は、軍部と元老院、政治部の力の拮抗は丁度よいバランスで保ってもらわんとな」
「トップは大変だね」
「何を他人事みたいに」
ボクの言葉に陛下はジロリと視線を向けた。
「それより、国外逃亡者と一緒に"教団"の人間が帝都にいっぱい入ってきてるんだけど?」
やぶ蛇になる前にボクは話題を変えた。
もちろんこの話題の方が重要ではあるのだが。
「お前の方で何も掴んでないのか?」
「ないない。幹部にはなったけど、前線の諜報部隊には何も」
ボクが言うと、「ふむ」と陛下は何やら思案した。
「お前が言う通りなら"教団"は危険だ。
可能なら排除一択だが……まずは帝国からは出て行ってもらう必要があるな」
「元老院は囲い込もうとしてるみたいだけど?」
「それこそ許されん話だ。国外逃亡者と繋がっているのなら、一緒に排除してもらおうか」
陛下の言葉にボクは大きく頷いた。
「それは賛成だね。軍は動かせないんでしょ?」
「すまんが、軍を動かすと元老院が大きく揺らぐ。
気に入らんじじいどもではあるが、財力と権威というのは必要悪でもある」
国の運営ってのはよく分からないなぁ、と思いながらボクは適当に分かったフリでもしておた。
「まぁ王国の名代の人にも協力してもらって、なんとかやってみるよ」
「そいつらは使えるのか?」
陛下に言われ、ボニフちゃん達を思い出す。
「多分、この大陸でいえばトップクラスじゃない?」
その言葉に陛下が珍しく驚いた。
「お前がそんなことを言うとはな。
会ってみたいものだな。その者たちには」
「彼らにそんな暇ないと思うけどね」
ボクはそれだけ言ってその場を立ち去ろうとした。
「そろそろお前の"教団への潜入"も潮時なのかもしれんな」
背後から陛下がそう言ったので、ボクも頷いておいた。
「既にちょっと喧嘩売っちゃってるから、多分切り捨てられるかもね」
さて、アルバートと教団には帝都の舞台からサヨナラしてもらいますかね。
ボクは口角を上げながら帝城を後にして、元老院の区画に向かった。
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