第91話 おぬしは強い
レーベンの街を出て街道を歩く。
「魔物って、どんな魔物なんでしょうね?」
アリアは短剣を握りしめ、少し緊張した面持ちじゃ。
「さぁ?少なくともCランク相当のパーティー依頼だし、弱くはないと思うけどな」
ドランは槍を担いで周囲を警戒しながら答えた。
「そのような魔物が街道まで出てくるのですね」
フレインも、いつでも矢を射れるようにしておる。
(しかし、Cランクのぅ……)
アリアと出会った時を思い出す。
(あの時の魔物がBじゃったし、そこまで苦労することも、ないじゃろうな)
わしはアリアを見る。
「アリア、そこまで緊張せずとも良い。
おぬしは強くなっておる」
「そうだぜ。なにしろあのスタンピードを乗り切ったんだしな」
「そ、そうですかね?」
しばらく歩くと、魔力の流れに淀みが生まれておった。
「ほれ、そろそろじゃぞ」
わしがそう言うと、アリアとフレインは警戒態勢を取る。
ドランを見ると、警戒はしとるものの、
身体自体はリラックスしておるようじゃ。
(さすがにこれは経験の差じゃろうな)
少し先の街道の脇の草むらがかすかに揺れる。
「わしは手を出さぬ。
おぬしら三人で対処してはどうじゃ?」
(この先の長旅のためにも、こういう経験はしとった方がよかろう)
「おもしれぇ」
「おっと、ドラン」
わしはアリアとフレインには聞こえぬよう、ドランを呼んだ。
「んあ?」
「おぬしは攻撃ではなく、惹きつけに専念して欲しい」
「いや、なんで?」
ドランは首を傾げる。
わしはアリアに目をやり、そしてフレインにも目をやった。
その視線でなんとなく察したのか、ドランは肩をすくめた。
「ま、しゃーねぇか」
今までから見るに、ドランは考えなしではある。
が、こと戦闘に関して言えば動きが適切じゃ。
恐らく腕前だけで言えばCランクではないじゃろうな。
フレインもスタンピードの時、護衛の時を見ても腕は確かじゃ。
しかし連携面はわからぬ。
そしてアリア。
(自分でも気づいておらぬようじゃが、明らかに腕は上がっておる、それに──)
(まぁ、その内何かが起きるじゃろうな)
それは悪い意味ではなく、と、わしは心の中で付け足した。
「来るぞ!」
茂みから複数の猪型の魔物が飛び出した。
「ふむ、レッドボアじゃな」
ドランが先頭に突っ込む。
一体、二体、三体。
ドランは難なくそれらを受け止める。
「フレイン!」
「任されます」
フレインは矢を番い、射る。
矢はそのまま、四体目の奥にいたレッドボアに命中する。
そして連続で矢を射る。
二射、三射──
「アリア!」
ドランはそう叫ぶ!
「はい!」
アリアはドランが惹きつけたボアへ走る。
正確に、急所を狙う。
一閃、二閃、三閃──
(ふむ、連携はまずまず)
「やりました!」
アリアがこちらを向いて叫ぶ。
フレインは小さく息を吐いた。
「じゃから緊張せずとも良いと言うたじゃろ?」
わしがそう言うと、アリアは自身の手を見る。
「私、強くなってる!」
わしとドランは視線をあわし、二人で頷いた。
「フレインも、俺が呼んだ意図は伝わったみたいだな」
「えぇ、ドラン殿に三体惹きつけたお陰で、余裕を持って矢を射ることが出来ました」
ドランが拳を突き出すと、フレインは少し照れたように拳を合わせた。
「しかし、街道の魔物討伐はこのレッドボアだけでよいのじゃろうか?」
依頼書にはこの街道に出没する魔物の討伐としか書いておらん。
「いいんじゃないですかね?」
横からアリアが依頼書を覗く。
「しかし、まだ出てきていない個体もいるかもしれません。
もう少し進んで何もなければ帰りましょう」
フレインがそう提案する。
「そうだな。討伐証明持ってくぞ?」
ドランはいつの間にかレッドボアの討伐証明の剥ぎ取りを終わらせて、こちらに来た。
****
もうしばらく歩く。
特に魔力の淀みはない。
「特にいなさそうですね」
アリアは肩の力が抜けたのか、先ほどまでの緊張はなく周囲を見渡して言った。
「そうじゃの」
「んじゃ帰るか」
「えぇ」
わし、ドラン、フレインは街道の来た方向へ振り返って──
「あ、あれ!」
アリアが道の外れのさらに奥を指差した。
その指が刺した先に視線を合わせる。
「あれは、荷馬車のようですね」
フレインがそう言った。
「よく見えるな……遠すぎて見えねぇぞ」
「エルフは森で狩猟をしているので視力が良いのです」
「行ってみましょう!」
アリア、ドラン、フレインとそちらの方へ進んでいく。
わしは後ろからそれに続いた。
(あの荷場所の捜索依頼の荷馬車ではないのかの……)
わしはなんとなくじゃが、そう予感した。
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