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天使みたいで悪魔みたいな先輩とはじめる音楽活動  作者: シンシア


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閑奏 MIX(1)

 同好会の活動が個人練習になってから、数週間が経った。時期的には前期終了まで残り数日といった所である。元からあまり精力的に活動しているタイプの集まりではなかったが、発起人である中堂凛なかどうりんが活動に参加していないこともあり、全員が部室で集まって練習することもなくなった。


それでも、志之聡平しのそうへい茸木光なばきひかるは二人で練習をしていたが、例の男子生徒と部室で遭遇したことを最後に、集まる機会はなかった。


 とある休日。聡平そうへいは自室でソワソワとした気持ちを抱えながらパソコンの前に居た。マウスを動かして、ソフトを起動させる。


 AIを用いたミキシングソフト。音を整えて、曲の魅力を引き出す作業を自動的にこなすツールである。聡平そうへいはこのソフトに自身が作った曲を読み込ませる。すると、ものの数分で全体のミキシングが完了する。


「凛くんが見たら発狂しそうな行為だよね」


ヘッドホンから流れる音楽に耳をすませる。AIといえど、まだ全てを任せられるほど完璧な出来ではない。強調したい音は強すぎるし、引っ込ませたい音は全てまとめて引っ込んでる。美味しいものと不味いものが極端に混在しているみたいな状況だ。


だけど、上手い使い方が存在する。例えば、AIが極端に強調した所はその曲のいわば美味しい音。そこのバランスを後から手動で調整するのだ。AIが一括で全ての音に施したいエフェクトや処置を、自動で追加してくれているので、気になる部分だけを直す。そうすることで早く理想の音へと近づけることが出来る。


「まぁこんなことをしなくても、このソフトをとりあえず使うだけで初心者がミックスしたとは思えない出来にはなるんだけどね。もうびっくりするぐらいの」


 聡平そうへいは一人でブツブツいいながらソフトを閉じて、いつも使っている作曲ソフト(DAW)を立ち上げる。これから、いつも通り一から自分の手で音を混ぜ混ぜして曲を完成させるのだ。


「こんなことをしてもー。すぐに凛くんにはバレるだろうし、ボクとしても楽しい作業だし大事な作業だと思うから誰かに盗られたくはないかな」


 マウスを動かして、ひとつずつ地道に音へ様々な効果を付与していく。


 AI全てが悪いとは思わないけれど、あんなの使って楽しいのかなとは思う。いや、楽しかった。俺も実際使ってみて凄さは分かったし、参考になることもあった。音楽だけでなくて、小説も絵もAIの手によって、いくつもの作品が日々生み出されている。


どれもワンタッチでとりあえずは作り出せる。難しいことは無しで、イメージを目の前に作り出せる感覚は楽しいなと感じた。こだわれば、その人にしか出力を指示出来ない特殊な方法があることはさておき。


 でも、創作をすることを選んだ人間がAIを使って作品を発表することに関しては、自分の中で揺るぎない大きな疑問がある……。


 俺は頭が煮詰まってきたので、大まかな状態で作業を終えて、今日は辞めることにした。不思議なもので、一旦寝てから、朝起きて聞いてみると全く違く聞こえる。これを繰り返すと、堂々めぐりになってしまうので、どこかで見切りは付けなければならないけど、出来た一発目よりかは良い音になる。「えー、昨日の俺。こんな風に作ったの!」って別人みたいになるのはよくあるよね。おやすみなさい。

 



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