令嬢の得意技
誰がどう見ても美しい社交界の華…!
ロエリア・ブルーウィングとは私のことよ!
ドヤァ感も隠しきって、いやらしくない声掛けができちゃうんだから!
「………なにか?」
だっかっらぁー!なんでさっきと同じ反応なのよ⁉
すぐ横の側近の反応があなたには見えないってわけ⁉
かわいそうなくらい首を想いっきり振っている側近男性から「笑顔ですよ!笑顔って言ったじゃないですかぁー!!」と心の声が聞こえてくるほどだった。
任せて。私はこれくらいじゃひるまなくてよ。
まずは2人で話すきっかけを作る!
「ご挨拶がすんでいなかったので……あと、オルレアン様とお話したいことが…」
「閣下、私はさきに馬車の用意をしておりますので…」
「いや、すぐ済むだろう。で、なんの用だ?」
側近がさっき言ってきた進言もオルレアンは聞く気がないようだった。
心底申し訳なさそうな顔をして側近が私に会釈をする。
「ここでは少々…気恥ずかしいと言いますか…オルレアン様だけにお伝えしたいことがありまして」
少し憂いを帯びた目で、可愛く言ってあげたわよ!
なんなら、少しくらい勘違いしてもいいんだからねー?
転生直後だからだろうか、それともさっき殺された恨みかわからないけど、私の底から巻きあがる感情はまちがいなく……!
こいつを跪かせてやりたい!!
『ロエリア様のご命令なら、結婚の1つや2つ!今すぐにでも!私が国の平和を維持しつづけましょう!』
そんなイメージが膨れ上がる中、絶対に断ることはないだろうと、高をくくっていた私に、
さっきと同じトーンの拒絶の言葉が帰ってくる。
「私はなにもありませんが?きちんとお会いするのもの今日がはじめてですよね?」
は……っ?
「初対面でいささかそのような発言は令嬢らしからぬのでは?」
はぁ……っ??
「とにかくー…私はこれで失礼いたします」
そう言って私の真横を通り過ぎようとしていく。
………こんの野郎。レディーに恥を欠かせる気?
どこまで女性に対して失礼なのよ!こんなんじゃモテるはずもないわ!
逃がすかーっ…!
ムカつく気持ちで、ぐっと目をつぶり、内心のイライラとは反対に、フラッとか弱くオルレアンに向けて手を伸ばして、よりかかる。
「!」
「ロエリア嬢⁉」
心配するのは側近かーい…。オルレアンは私を支えたまま、凝視している。
見とれてるわけじゃなさそうね。んんん…っていうかこの反応……。
「大丈夫ですか……?」
固まっているけど、私を支える手にはほとんど力が入っていない。
まるでガラス細工を触っているかのように。
私はすぐに、ごほごほっと咳をして、気分が悪そうにしてあげる。
「ごめんなさい……少し気分が……。迎えの馬車はまだなんです。でも王城ではご迷惑ですので……公爵低で待たせていただいてもよろしいでしょうか?」
しっかりと、オルレアンの手を握りながら。