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俺だけ持ってるゴースト特攻!? 〜最強退魔師(自称)はゲームでもゴーストから逃れられない〜  作者: 氷見野仁
クエスト1 お屋敷の怪現象を調査しても、マイホームが安く手に入ることはない
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オンリーワンのスキルなんて結局災いのもと

 俺はエリスを肩に乗せ、噴水前で大雅を待った。しかし、時間を過ぎてもなかなか現れない。約束の時間を15分ほど過ぎたころ、横から声をかけられる。


 俺はそれに応じようと横を向く。そこには2メートル近い、真っ黒い豪奢(ごうしゃ)なフルプレートメイルを装備した、加えてその鎧と同じデザインの鬼面(きめん)をしたナニカが。


「うわぁ、鬼だ!」


 俺はつい癖で、手が出てしまう。しかし、その攻撃はよくわからない透明の壁に阻まれ、振り抜いた腕の動きが止まってしまった。


「アラタ、焦り過ぎ。鬼でも普通いきなり殴りかからないよ?」


「あぁ、なんだ、大雅か……脅かすなよ」


 鬼であるならいきなり殴りかかるようにしてるとは口が裂けても言えない。とにかく、目の前の鬼面が大雅でとりあえず一安心(ひとあんしん)だ。VRMMORPGでリアルネームで呼ぶのはマナー違反なので、大雅のPNを確認する。


「オーガ9(ナイン)?」


「うん、僕の名前から連想したんだ。装備もそれに合わせて作ってもらってる」


 大雅(オーガ)(ナイン)鬼ってことか。九鬼の鬼は、そのままオーガね、考えるなぁ。それに、装備?


「作れるのか」


「うん、お金はかかるけど。プレイヤーに鍛治師もいるしね」


「そうなのか」


 俺は感心した。すると大雅、ゲームの中だからオーガ9と呼ぶことにする、は俺の肩に乗る真っ白の狐を一瞥(いちべつ)したあと、一拍置いて話をしだした。


「……とりあえずいろいろ(はな)したいし、僕のプレイヤーホームに行こう」


「プレイヤーホームなんかあんの?」


「あるよ。僕の体、どこでもいいから触ってくれる?」


「お、おう」


 そう、上級者っぽい装備に身を包んだオーガ9に言われては拒否できないし、拒否する理由もない。俺はそのままオーガの鎧に手を当てる。すると、ジジジ、と音がすると同時に目の前の景色が移り変わり、それはもう立派なお屋敷がドンと現れた。


「うわぁ……お前現実でも金持ちなのにゲームの中でも金持ちなの? 天はお前に何物与えたんだ?」


「……まぁそれはいいじゃないか、入ってよ」


 こいつ、()()に及んでまた誤魔化(ごまか)すか。まあいい、それで詰めた結果、なんの情報も得られないのが最悪のシナリオだ。甘んじてその話題そらしを受け入れようじゃないか。今はなぁ!


 そんなこんなで俺はその屋敷へ足を踏み入れる。城ってほどじゃないし、現実のオーガ9の家に比べれば小さいが、それでもデカい。余裕で6SLDKはある。そして、玄関を通った先にいたのは。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


「はぁ!? メイド!?」


 なんと、現実のこいつの家よろしくメイドがいたのだ。しかもこの同年代のメイドどこかで見たことあるぞ……。


「アラタも会ったことあるでしょ。うちのメイドの柊。こっちでは……なんだっけ?」


「ホリィです。大雅様」


「あーそうそう、ホリィね、ホリィ。いやぁ、うちの親って厳しいからさ、ゲームの中でもお目付役をってね」


(わたくし)はほとんど大雅様の動きを関知しておりませんが」


「ね? いいメイドでしょ?」


「あ、あぁ……」


 マジでザ・金持ちなんだよな〜こいつ。なんで俺と友達やってんだろ?


 そんなことを考えながら2メートル黒鎧の後ろをついてゆき、2階の書斎へと案内される。


「ホリィ、しばらく人払いを」


「承知しました」


 そう言うとホリィは部屋から下がる。


「人払い?」


「うん。どこで誰に聞かれてるかわからないからね、このゲーム。ただでさえ掲示板もあるし、『暗殺』とか、『新聞記者』とかの才能持ってると、そのユニークスキルでかなりエグいことできるらしいから。プレイヤーホームは基本的にゲームシステムで守られてるけど、それでも可能性はゼロじゃない」


「はぁ〜」


 俺はただただ感心する。だって、たかが(・・・)ゲームでそこまでするとは。


「今、たかが(・・・)ゲーム、って考えたでしょ?」


「なんでわかるんだよ。毎度察し良すぎだろ」


「アラタが単純すぎるんだよ。たかがゲームだけど、されど(・・・)ゲームなんだ。僕たちは全員何らかの才能を持ってる。ゲームを続ける以上、そういった、自分たちを取って食おうとする人と戦っていかなきゃいけない」


「うはぁ」


 俺は、うはぁ、しか言えない。なぜなら実感がないからだ。個性が一個、これで狙われる? ないない! ただゴースト属性にちょっと強いくらいだし!


「じゃあ、するべき話をしよう。本当は他のことを話すつもりだったんだけど、優先順が変わった。……アラタ、正直に言って欲しい。チュートリアルの3番目、クリアしたね?」


 ビックゥ!!!!! いきなり自分が幽霊を倒せることがバレかける。俺はダラダラと汗を流し、なんとか取り繕おうとするが、オーガ9の鋭い視線が俺をザクザク射抜いてくるので、白状してしまう。


「……はい。クリアしました」


「なるほど、だからその白い狐を連れてるんだね」


「……ハイ」


 やべー! そこまでバレてんのかよ! こいつマジやべー!


「で、でもただチュートリアルクリアしただけじゃないっすか、オーガ9さん。俺、何かやっちゃいました?」


 もう汗が滝のように出る。肩に乗るエリスが、うわぁバッチィって顔をしながら飛び降り、トトト、と近くのソファに行き、丸まった。あいつ、逃げやがった!


「盛大にやっちゃってるよ。3番目をクリアしたってことは、あのレイス達を倒したってことだよね?」


「ハイ」


「結論から言うと、今このIIOの世界にゴースト属性を倒せる人間はいない。アラタを除いてね」


「マジスカ」


 正直、驚愕して声も出ない。俺はただ、自分の力を、ゴースト属性に対してちょっとダメージが増える程度だと思っていたのだ。


 それが、ゴースト系にダメージを与えられるのが現状俺だけ? 嘘じゃん、才能由来なんだからバレるじゃん、仕事。そんなことを考える。すると、察しの良すぎるオーガ9が、察しが良過ぎて勘違いをしだす。


「アラタ、才能に幽霊が見えるとかがあったんじゃないの? そこからゴーストに対して有効打が打てるユニークスキルが作られた」


 察しの良さが一周したのか、まさか俺が幽霊を退治できると思っていなくて、かなりズレた予想をするが、ここは乗るべきだと考え俺は肯定した。幽霊をもともと倒せるなんて非科学的だししょうがないか。


「そうなんだよ! いやぁーオーガ9は察しが良過ぎて困るよ」


「やっぱりか! なんか寺生まれって感じだね」


「ハハハ、そうなんだよ。まったく寺生まれってだけでこんな非科学的な、困るぜ」


「本当そうだよ、あはは」


 二人であははははは、と笑っていると、ソファの方から呆れ声が聞こえてくる。


「ねー、話終わったぁ? バレてんだし喋ってもいいよね? 僕暇なんだけど〜?」


 ピシィ、と場が凍る。正確には凍ったのはオーガ9で、それを見た俺がちょっと遅れて一緒に凍ったのだ。


「あれ? もしかして僕が喋れることまではバレてなかった? ……やっちゃった? えへ、アラタ、ごめんね?」


「エリスぅぅぅぅぅ!!!」


「ごめんなさい! ごめんなさい! でもどうせ時間の問題だし! 息つまるもん!」


「え、喋れるってことは、聖獣? マジ?」


 もうバレてしまってはしょうがない。そもそも友達どころかもう親友と言っても差し支えない男だ、この際最後までバラしてしまった方がいいだろう。


 そして、こっち側に引き込む。それが得策だと、昨日からあったことをすべて、自分の才能と副業のことをうまく隠して伝える。


「マジか〜まさかチュートリアル3のファーストクリア報酬があの白狐で、しかも聖獣扱いだったとは……」


「ってか、その聖獣ってなんだ?」


「このIIOの世界にいるモンスターで、プレイヤーやNPCに友好的か、今は敵対的でも条件クリアで友好的になる強力でユニークなモンスター達のことさ。それらと契約すると、契約聖獣として使役できるらしいんだけど……」


 オーガ9が口をつぐむ。だが、言いたいことはさすがにわかる。あの生意気な使役されてる感じのない狐が本当に聖獣なのか、と。そうだろ? そうだよな、オーガ9。


「しかし、聖獣は生きてるみたいだとは聞くけど、本当みたいだね。なにか特別なAIを使ってるのかな?」


「さっきからアラタもオーガ……9? もAIとかなんとか言って意味わかんない。それで、話終わったのー? ひまー!」


「ごめんね、もう少しかかるんだ」


「そ、早くしてね」


 こいつマジで順応早いな。むかつくぜ。


「とにかく、僕が言いたいのはアラタがゴーストを倒せるってのと、あと一つ増えたけど聖獣を連れてることをどうにかして隠すべきってことなんだけど……」


「その点はエリスとも話して、テイマーで通すことになってる。電話した時も言ったけどな」


「ああなるほど、だからか。じゃあ聖獣の方はどうするの? 白い狐なんて巷のモンスターにはいない。チュートリアル3自体も物好きが受けてて内容もバレてるし、白い狐がいたことも拡散されてる」


「それのなにが問題なんだ?」


「このゲームでは街の外ではPKができる、そして、聖獣は、ユニークモンスター扱いだ」


「そうなのか……。で、結局それのなにが問題なんだ?」


「ユニークモンスターは、プレイヤーと違って、死んだら、それまでだ」


 生き返らせる方法はなくはないけど、基本無理だしね、と付け加えつつ。


「え、「えっ、僕死んじゃうの!?」」


 エリスが被せてくる。こいつマジで生意気だな。


「死ぬんだってよ。せいぜい生き残ることだな」


「え、いやいや! いやぁ! ちゃんと守ってよ!」


「自分の身は自分で守れ、せめて黄色くならないと聖獣だってバレるぞ」


 俺は、無理難題をエリスに押し付ける。するとエリスがはぁーとため息をつくと。


「わかった、黄色くなればいいんでしょ!」


 そう言うと、白かった毛が、スゥ〜っと、黄色くなっていく。


「ハイ! これでいいでしょ!」


「マジかエリスすげえな」


「ふふん、僕、すごい!」


「……聖獣ってすごいね」


 オーガ9が言う。


「でも、このままだと心配だな。そうだ、もともとそのつもりだったけど、ゲーム内でもフレンドにならない? 僕IIOでそこそこ有名だし、少しは安全になると思うんだ」


 そう、オーガ9が提案してくる。


「フレンドか、確かにそれもいいな。こっちでも仲良くしようぜ!」


 俺は、オーガ9が守ってくれるなら百人力だと思い、それを承諾した。

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