妖狐はだいたいあぶらあげが大好き
「お前結構強そうだけど普段はどこでなにしてんだ?」
俺はオーガ9からのフレンド申請を受ける。すると視界の左下にフレンド一覧が開く。任意で消したり開いたりできるようだ。
「普段は最前線組に混ぜてもらって、ダンジョン攻略してるよ。ファーストクリア報酬がおいしいしね。この家も、そのうちの一つ」
「はぁ〜そんなもんか。てか、レベル高っ! 62!?」
俺まだ3なのに……と付け加えながら、オーガ9のレベルに驚く。
「あはは、これでも中堅上位くらいだよ。進んでる人は今ならもう80超えてるんじゃないかな」
「うはぁ〜、やべぇな」
「そんなことより、アラタはこのあとどうするの? クエスト行く?」
「そうだなぁ〜、せっかくだしスキル活かしてゴースト退治といくか」
「そうだね、ファーストクリアボーナスも貰えるし、ゴースト系のクエスト片っ端から受けるのがいいかも」
「よっしゃ、そうと決まれば」
「や」
ソファの方から不服そうな声が聞こえる。エリスだ。
「や、じゃない。それじゃあエリスにゴブリンを相手にしてもらうことになるぞ」
「それも、や」
ワガママすぎる。何食ったらこう育つんだよ、あぶらあげか?
「あぶらあげを、買ってやる」
エリスの耳が、ピクンと動き、尻尾が少しだけ、ユラユラ揺れる。
このゲーム、現実でできることは基本何でもできるし、料理なんかも材料さえあればなんでも作れる。日本で食えるものはたいていプレイヤー料理人が作り上げ、販売しているらしい。
「狐が全員あ、あぶらあげが好きだとは限らない」
そのわりには耳がピクピク、尻尾ゆらゆら、興味津々なのは見ればわかる。もうひと押しだ。
「2枚」
「さ、3枚なら……」
「いいだろう」
なんとなくエリスの扱い方がわかってきた。こいつ生意気なわりにチョロい。たまにいる何考えてるかわからないクソ悪霊に比べりゃ100倍わかりやすい。
「……何か今失礼な事考えなかった?」
「いや、別に。じゃあ行くか、クエスト」
「はいはい」
エリスがソファから飛び降りて俺を駆け上がり、肩に乗る。
「じゃあオーガ9、頑張って追いつくから、追いついたらパーティ組んでくれよ」
「もちろん。多分、すぐ追いつくと思うよ。ゴーストに攻撃通るのはそれだけ恩恵があるからね」
「そうか、じゃあ行くよ」
「くれぐれも有用な才能保持者、特に10個以上持ってる人たちには気をつけて。エリスを聖獣だって見抜く人も出るし、アラタのステータスを読めるスキル持ってる人もいるから」
「ご忠告ありがとうございます。ではでは失礼します」
俺はオーガ9の有難いご高説を賜りながら、彼のプレイヤーホームを後にした。目指すはプリムスマギアのギルド集会所。
ここでクエストを受け、レベルを上げ、ダンジョンを攻略し、装備を整え、才能を磨き、努力し、そして悪の帝王にたどり着く。それがIIOだ。
あとはたまにやってる季節イベントもあるらしい。そして肝心の悪の帝王だが、今のところいる場所もわからなければ、動きもない。
閉じられた街を解放し、ダンジョンを攻略し、情報の断片を集めるのが正規ルート。だが、俺はまだチュートリアルをクリアしたばかり。とりあえず、なにかしらクエストを受けることにした。
「ほう、ここがギルド集会所か。どれどれ、面白い依頼はあるかな?」
……ボードに掲示してあるクエストの量があまりにも膨大で、どれがいいのかわからん。すると、その横に本屋にあるような検索端末がいくつか置いてあるのに気づく。
「なんだ、このボード、飾りかよ……」
俺はそんなことを言いながら、端末を操作する。がやがやしているが、ギルド自体はあまり混んでいない。
というか、こんなザ・ギルド集会所って感じなのも本当に面白いな。酒場併設、たまにギミックとしてこういう科学的なものが混ざってる。なかなか興味深いゲームだ。
「どれどれ〜、おっ、ファーストクリアボーナスありでソートできんじゃん!」
俺はさっきオーガ9から聞いたヒントを元に、ゴースト系のクエストを探した。したら、出るわ出るわ、わらわらと。俺はその中からいくつか選択し、自身の進行クエスト一覧に投げ込む。
「よーし、がんばるぞ!」
最初は、街のお屋敷の異音・怪現象調査だ! 俺は意気揚々と、プリムスマギア中心部、高くそびえるお城のお膝元、高級住宅街へと、歩いてゆく。
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依頼 No. 1/IIO
お屋敷の怪現象調査
難易度:★★★☆☆☆☆☆☆☆
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