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7-7 女神新時代 リネーム

「朕の目標は、無論大陸統一だ」

「右に同じ」


 昼食を平らげてみさきちを待つ間、これからどうしたいかを各々が述べる。他に客が居ない食堂で同じ顔が4人。顔が同じなら意見も同じと言うわけではないはずだけど、4人が大陸の征服を言い出す。そうか、全員がこういう連中か。魔王とジョージB含め、このメンバーで僕以外はそういう志向なんだろう。


「では、その目標に向けて何から始めるのじゃ?」

「いや、目標、それに決まったわけじゃないからね?」


 では僕がやりたい事は?

 身体を取り戻すというのは、ちょっと後退。先の作戦が失敗して分かったけど、取り戻しても再度取り返すすべを彼が持ってるだけに、それを封じる方法を見つけないことには先に進めない。ここで考えていて思いつくよりは、何か他の事をやっていた方が情報を得られるんじゃないか。そんな訳で、身体を取り戻すことの次にやりたい事を僕もやりたい。


「知り合いの様子を見に行きたい」

「では、サクラの知り合いを訪ねつつ、大陸統一を目指した旗揚げの機会を探るとするか」


 知り合いと言うと、寿命とか無さそうな女神達は置いといて、箱根、小田原、熱海、三島、秦野に居た人達。これまでの情報からすると、秦野以外は武田領ということで、行けば戦いになる? ただの一般人として行けば大丈夫かな。

 位置が近いから、まずは秦野から。そこで情報を得て、小田原や箱根に行くかについて考えよう。


「まずは様子を見に行くだけ。正体を隠して一般人の振りをして、秦野に行こう」

「攻め込むわけではないか。まあ良い」

「我とサクラは良いとして、こいつら4人をどう隠すかじゃな」


 門前で鑑定を受ける際に考えた、僕がネクロマンサーで4人を従えている設定。城ではその設定で通したけど、良くそんな怪しいのを城側は受け入れたものだ。ちなみにみさきちの帰還を含め、僕らのことは秘密にするということで城の人達と話はついている。問題は街だ。

 食事前に注文を取りに来た店員にも、同じ顔が4人ってのはギョッとされたし、正体以前に怪しい。


「ノーライフキングって、どんな存在?」

「うむ、高位のアンデッドと言われておるが、実物を見たことは無かった。他に存在するアンデッド、例えばスケルトンやゾンビなど人としての意識は失った者じゃ。こやつらの様な、考える、話す、食べる、眠るなど、人と同じ振る舞いをするアンデッドは、聞いたことがない」


 多くの部分は人と同じ。違う部分は、倒されてもすぐ僕の部屋に復活できること。それさえ見られなければ、人間って事で通せる。

 それでもこの世界には鑑定という物があり、それによって人ではないと判断されたら排除されるだろうか?


「人と会うような場所では、4人には僕の部屋に隠れておいてもらおうか。魔物扱いで敵意を向けられるかも知れないし」

「降りかかる火の粉は払えば良かろう」

「火のない所に火を付けるのは止そうよ」


 鑑定を欺く方法と言えば、僕とハコネはデコイの魔法で鑑定を撹乱し、普通の冒険者の振りを出来る。魔法で不可視のおとりを身体に重ねて造り、かわりに鑑定に掛からせて本体の鑑定を防ぐ。ハコネと出会った頃に聞いた懐かしい話だ。何か工夫して、同じ様に誤魔化せないかな?




 店を出て、人気のない場所で実験。


「デコイ!」


 最初は僕がデコイの魔法を自身に掛ける。レベルは50の人間としておいた。


「戦術ビューでは複数を同時に見通せるので、神族のサクラと人族のサクラという情報が表示されるのじゃ。そして、鑑定! うむ、人族のサクラしか見えぬ。良く出来ておる」


 ハコネは鑑定の魔法が使える。複数の情報が表示される戦術ビューの方が有用だから普段は使わないけど、鑑定でどう見えるのかの確認をすることは出来る。

 さて、次は……


「鑑定! 名は皇帝、レベルは11、種族はノーライフキング、職業はサクラの眷属。戦術ビューで見たのと同じ情報じゃな」


 そこで、皇帝さんにデコイを掛ける


「鑑定! 名は皇帝、レベルは11、種族は人間! 出来ておるな」

「皇帝さん、動いてみて。そうそう……駄目か」


 戦術ビューで見ると、デコイは一緒に動いてない。自分に掛ける際は、自身の動きにデコイが追随してくれるけど、自分以外に掛けると位置固定になってしまう。鑑定を受ける時だけ掛ければ使えるけど、鑑定することを前もって伝えられた場合にしか使えない。不意に鑑定を掛けられたらおかしいことが分かる。


「もう、ネクロマンサーって設定で乗り切ろうか」

「ノーライフキングなんぞ見たことあるものなど居らぬ。ノーライフキングは無害、そう言う認識を広めればよいのじゃ」


 結局、隠さない。嘘を見破られるよりは、嘘をつかない。その方が僕としてもやりやすい。ノーライフキングは話せば分かる、って方針で行こう。


「ところで、城で言われた名の件、皇帝や国王というのは、何とかせぬのか?」

「全員が丈二という状況での呼び名だからな。サクラにそう呼ばれたらそれが名になってしまったのだが」

「じゃあ、僕が違う名で呼べば、その名になるんじゃない? それぞれ名前決めたら、そう呼ぶよ」


 国王と呼ぶのは、本当に国王がいる世界だからまずいけど、ジョージCとか呼ぶのもどうかと思うからね。


 シンキングタイム。その場で考えるより、ネタ探しをしたいという事で、僕の部屋に移動。本とかパソコンで色々調べて、それぞれが考えた名前。


「余はルイだ。聖王に太陽王、国王と言えばルイが相応しい。断頭台はカンベンだ」

「私はオットー。ドイツ帝国建設の立役者、ビスマルクに由来する」

「朕はガイウス。ガイウス・ユリウス・カエサル。ユリウスが名だと勘違いして居たが、名はガイウスだ」

「俺はヨリトモにしよう。足利が居るのだから、ヨリトモが出てきても良いだろう?」


 色々酷い。欧風で揃うかと思えば頼朝と来るし、皇帝さんは皇帝じゃないカエサルが元ネタだし。でも本人がそれが良いというのだから、それで呼ぶけど。


「ルイ、オットー、ガイウス、ヨリトモ」


 戦術ビューで見ると、ちゃんとその様になった。




「ほら、これだ」


 自称ガイウスが、冒険者ガイウスになった瞬間だ。

 「冒険者のギルドがある」と聞いてやって来たら、2階建ての建物に大きな入口。入ったらカウンターと掲示板という、小田原で見たような同じ形式のがあった。魔物を狩るハンター、危険な場所にも踏み込む人達、そう言うのをまとめて冒険者と言うらしい。仕組みも大きくは変わらない。

 鑑定であっさり4人が人間でない事がバレたけど、構わないってことになった。魔王軍の魔物を狩ってくれるなら種族などどうでも良いらしい。それだけ魔王の脅威は増していて、味方を欲している。良い状況の時に来たのかも知れない。

 これまで狩っていた魔物の素材を売却し、銀貨36枚を得た。1人9枚ずつ。さっきの昼食が6人で銀貨9枚だったから、あまり高くはないけど、これでも素材そのものの値段に魔物を倒すということの報奨を上乗せしてあるそうだ。


「まずは大陸一の冒険者パーティを目指すか!」


 あっさり捨てられた大陸統一の目標はどこへ。そんなに推したい目標じゃないから良いのだけど。

 他にも居る冒険者に絡まれるとか、そういうのは無い。新入りがトップを目指すという威勢の良い事を言っても大丈夫。皆最初はそうだったさ、とのことだ。


「ここに居ましたか! 探しましたよ」


 声に振り返ると、城の門で会った門番の人。僕らを探していたらしい。そう言えば行き先とか告げてなかったっけ。


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