第0講 社会科って、何のために学ぶの?
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王立魔法学園リュケイオンにレオンが赴任する、およそ二年前。
州都リンドンハーフェンのリンデンフェルト伯爵邸では、
今日も家庭教師の授業が始まろうとしていました。
生徒は、十二歳の双子の姉弟、アーデルハイトとカール。
レオンが二人の家庭教師を務めるようになって、すでに数年が経っています。
最初の頃はなかなか手を焼いたものですが、今では二人とも、すっかりレオンを慕っていました。
もっとも、素直に言うことを聞いてくれるかどうかは、また別の話です。
「さて、お二人にお知らせがあります」
レオン先生が、机の上に一冊の教科書を置きました。
「今日から、いつもの授業に社会科が加わることになりました」
「社会科、ですか?」
アーデルハイトが首をかしげました。
「また勉強が増えるんですか?」
カールは少し不満そうです。
「ええ。でも、社会科は皆さんの暮らしに、とても身近な勉強なんですよ」
「先生、ちょっと聞いてもいいですか?」
アーデルハイトが手を挙げました。
「ええ、もちろん。何でしょう?」
「社会科って、何のために勉強するんですか?」
「おや、いい質問ですね。どうしてそう思ったんですか?」
「だって、歴史の年号とか、国の名前とか、覚えることがいっぱいあるじゃないですか」
「魔術なら、覚えたことを実際に使えますけど、社会科って何に使うんでしょう?」
カールも不思議そうに尋ねました。
「なるほど。では、お二人に質問です」
「また質問ですか?」
アーデルハイトが少し頬を膨らませました。
「ははは。今日は社会科の授業ですからね」
レオン先生は微笑みました。
「では、今朝の朝食を思い出してください。パンを食べましたか?」
「はい! 食べました!」
アーデルハイトが答えました。
「そのパンは、誰が作ったのでしょう?」
「屋敷の料理人さんですわ」
「では、パンの材料になる小麦は?」
「農家の人が育てたんですよね」
今度はカールが答えました。
「そうですね。では、その小麦はどうやって、このお屋敷まで運ばれてきたのでしょう?」
「……馬車でしょうか?」
「そうかもしれませんね。では、その馬車が通る道は誰が整備したのでしょう?」
「ええっ、そこまで考えるんですか?」
アーデルハイトが目を丸くしました。
「ええ。私たちが毎日食べているパン一つにも、たくさんの人が関わっているんですよ」
「農家の人、運ぶ人、料理人さん……」
カールが指を折りながら数えました。
「そうです。そして、パンを作るための道具を作る人や、小麦を売り買いする商人もいますね」
「そう考えると、ずいぶんたくさんいますわね」
「ええ。私たちは、一人だけで暮らしているわけではありません。
たくさんの人と関わり、助け合いながら暮らしています」
レオン先生は二人を見渡しました。
「その人々の暮らしや、社会の仕組みを学ぶのが社会科なんです」
「でも先生、それなら歴史や国の名前を覚える必要はあるんですか?」
カールが尋ねました。
「もちろん、知識も大切ですよ。ただ、覚えることだけが目的ではありません」
レオン先生は教科書を開きました。
「例えば、どうして国によって食べ物が違うのでしょう?
どうして王様がいるのでしょう? どうして昔の人たちは戦争をしたのでしょう?」
「……言われてみると、不思議ですわね」
「でしょう? そうした疑問を調べたり、考えたりすることも社会科なんです」
「つまり、社会科は『どうして?』を考える勉強なんですね」
「ええ。そして、もう一つ大切なことがあります」
「何ですか?」
アーデルハイトが身を乗り出しました。
「世の中には、自分とは違う考え方や暮らし方をしている人が、たくさんいます」
レオン先生は続けました。
「その人たちが、どうしてそう考えるのか。なぜ、そのような暮らしをしているのか」
「それを知ることで、今まで分からなかったことが、少しずつ分かるようになるんですよ」
「じゃあ、社会科を勉強すると、世界のことが分かるようになるんですか?」
「そうですね。もちろん、全部分かるようになるわけではありませんが」
「先生でも分からないことがあるんですか?」
カールが尋ねました。
「ははは。分からないことだらけですよ」
「ええっ、先生なのに!」
アーデルハイトが驚いた声を上げました。
「だからこそ、勉強するんです」
レオン先生は笑顔で答えました。
「さあ、これから一緒に、私たちの暮らす世界について学んでいきましょう」
「はい!」
「よろしくお願いします!」
二人が元気よく答えました。
「では、次回は神様のお話から始めましょうか」
「神様も社会科なんですか?」
アーデルハイトが首をかしげました。
「ええ。人々の暮らしと深く関わっていますからね」
「なんだか面白そうですね」
カールが笑顔になりました。
「ふふふ。それでは、次回をお楽しみに」
今回のまとめ
社会科は、人々の暮らしや社会の仕組みを学ぶ教科です。
国の名前や歴史の出来事を覚えることも大切ですが、それだけではありません。
「どうして、こうなっているんだろう?」
そんな疑問を持ち、理由を考えることが、社会科の第一歩です。
そして、自分とは違う暮らし方や考え方を知ることも、社会科の大切な役割です。
### レオン先生からの質問
あなたが今日着ている服は、どんな人たちのおかげで、あなたのもとに届いたのでしょう?
服を作った人だけではありません。
材料を育てた人、運んだ人、売ってくれた人……。
ほかにも、誰かが関わっているかもしれませんね。
身近なものから、社会のつながりを考えてみましょう。
**答えは一つとは限りません。自由に考えてみてくださいね。**
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