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力不足

 僕は地面を蹴る。対して千馬さんがしたのは、手を振るうことだけ。それだけで僕の身長の倍以上に巨大化したミーくんが動き出す。飛び上がって日本刀を振り下ろすが、片腕だけで防がれてしまった。

 いや、それどころか。


 ミーくんの背後から溢れるのは、黒い人影。これは、たぶんジンの──。


 黒いそれは僕の日本刀に絡みつくと、ぐっ、と下に力が掛かる。引っ張られて、しまった、と思うと同時、僕の体は大きく投げ出された。


「あっ、ぐっ」


 固い地面に体を打ち付け、全身が痛む。しかしすぐに起き上った。寝ている暇などない。


 投げ出された場所は明け星学園の校庭だったため、可動範囲が広くなる。……さっきまで路上だったから、校庭に連れてきてもらって良かったかも……なんて思った。別に2人はそこまで考えてないだろうけど。


 黒い粒子を纏ったミーくんは、のそのそと校庭までやって来る。その後ろから言葉も様子を窺うように敷地内に入ってきた。離れた場所にいてね、という念を込めて言葉を見つめてから、僕は足に力を込める。


 やっぱり千馬さんが操るミーくんは、力が強すぎる。日本刀を振るうだけでは力負けする。黒い人影の時はその圧倒的なパワーに助けられていたが、いざこうして戦う羽目になるとな……。

 そしてその黒い人影──今は粒子──もあちらに付いている。散々苦戦させられた相手だ。というかジンってどういう能力なんだ? というかそもそも異能力者なのか? そこ聞いておけば良かったな……。


 まあとにかく。そんな存在2つに結託されると、圧倒的にこちらの分が悪い。


 ──けど絶対、負けるわけにはいかない。


 僕は再び飛び上がる。あくまで距離は取ったまま。空中で狙いを定め。


「──『Z→A』」


 生成するのは、大量の日本刀。それらを一気に、ミーくんの元に放った。


 襲い掛かる日本刀の雨に、千馬さんはぅえぇっ、と声をあげる。そしてミーくんは頭を守るように腕を頭に乗せただけだったが……黒い粒子が四方八方から伸び、僕の生成した日本刀を全て絡め取ってしまった。

 それらは火を噴いて溶けるように消えてしまう。結構頑張って同時に生成したんだけど……。


「あ、ありがとう……」

「気にしないで! ほら、次来るよ!」

「ひぇぇぇぇ」


 なんだか朗らかな空気の2人を他所に、僕は次の攻撃を仕掛ける。今度は「A→Z」で空気抵抗を極限まで削除。ミーくんの足元まで辿り着くと、足に斬りかかって……。

 が、これも黒い粒子に阻まれてしまう。再び刀身に纏わり付かれたため、今度はすぐに身を引いた。だけど日本刀が燃え始めてしまったためミーくんに投げておいて(まあこれも粒子に妨害されてしまったが)、新しい日本刀を生成する。


 ……分が悪いな。分かっていたことだが。

 とにかくジンが厄介だ。接近も遠距離も上手くいかない。千馬さんは今のところ、ジンにいい感じにサポートをされているだけだが……油断は出来ない。今はアワアワしているが、それが無くなった時……僕は本当に勝てなくなるだろう。

 2人はタッグを組んだばかり。まだ互いの動きになれていないはず。決めるなら──今しかない。


 ……理屈として整理しても、じゃあどうするって話なんだけどね!!!!


 短期決戦。その方針で固めた僕は、「Z→A」で様々なものを放つ。光線、炎、水流、風、鉄。とにかく何でもいい。相手の動きをとめることができれば。……こちらも「Z→A」を使い続けることで代償が出始めているが(僕の心境が変化したからなのか、幻聴はののかの声ではなく意味を成さない雑音のようになった)、構わない。これで、決める。決めたい。

 ──そうは思うが、そこはやはりジンだ。全てに対応していく。呑気に指を振って、黒い粒子で全てを絡め取る。遊ばれている、とそう分かる。……この対応力は言葉ははおや譲りなのか、なんて現実逃避がてらそんなことを考えた。


 一方で千馬さんは、こちらの攻撃を慌てたように避ける。ミーくんの表情は当然変わらないが、千馬さん自身はアワワワワと言っているのが遠目でも分かった。大丈夫かな……と遠目で見ても思う。


 だが遠慮するつもりはない。こちらも譲れないものがあるので。


 攻撃を仕掛け、守られる。逆にあちらからも仕掛けられ、なんとか対応する。攻守交代に規則性はない。たまに千馬さんが挟まる。

 ……まあ、僕は明らかに押されていた。


 正直に言うと、僕が一番強かったのはSmileとの戦いの時だったと思っている。あの時が一番異能力や日本刀を使った訓練をしていて、特別要請で実戦に出ることが多かったから。それが終わってからは異能の使用を控えるようになり、言葉との戦いでは生徒皆に助けてもらった。……つまり実力的には右肩下がりということになる。

 情けない話、僕は自分の力不足を実感していた。


 さてどうする。そろそろ体力も危うい。連続的に異能力を使い続けているからもう一方の代償もそろそろ心配だし、ジンは余裕そうだからこれから益々押されていくだろう。千馬さんも千馬さんで、ジンのお陰で全然動いていないから力が有り余ってるだろうし。

 あの黒い粒子をどう突破し、勝利に持っていくか──僕がそう考え始めたところで。


「つまんない」


 突然ジンがそう言って手を止めるので、思わず僕も千馬さんも動きを止めてしまうのだった。

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