闇に沈む。声を奪われ
──暗闇の中に居た。
僅かな光も届かない、永遠の暗闇の中。そこに言葉は漂っていた。漂う、という表現が適切だった。どこにも足を付けることなど出来なかったし、重力に身を引かれることも無かったから。
ここはどこなんだろう。私はどうしてここに居るんだろう。……思い出そうとしても、頭の中に靄が掛かっているみたいに、思い出せない。
そうして考えようとすればするほど、その靄は強くなっていく。言葉の頭を覆って、意識を阻害していく。夜の星が雲に隠れるように。
まあいいか、と思う。どうせ自分は死ねないし、死ねたとしたらラッキーと思うくらいだ。別に、別に生きることに、執着なんて無い。
──……。
無い、なんてことも、無いけど。
「──大丈夫」
声が、響く。
「貴方の願いは、必ず叶える」
何、と呟く。否、呟けない。もうそんな気力もない。闇に呑まれていく。そんな感覚がする。
怖い、と思った。この感覚は、あれに似ている。囲まれて、好き勝手に弄られて、声も出せなくて、暴れてもびくともしなくて──。
怖い、怖い、怖い怖い怖い。怖いのに、動けない、声が出せない、目も開けられない、何も出来ない。
薄れる意識の中、言葉は、名前を呼んだ。愛していると、ずっと一緒に居たいと言ってくれた、彼女の名を。
しかしやはり声にはならず、無音の中に消えていった。




