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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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祝勝会

ズッシリの募金箱を職員室の金庫に預けに行った。

「あと7万円あると、演劇部と放送部が希望する機材が買えるのよこの重さならいいとこ行くよ!」

教頭先生が立ち会って売り上げ?いや募金を数えた。68572円だった。

「足りないのってちょうど7万なの?」

教頭先生が聞くと、

「はい、あとは・・・」

委員長の答えを聞いた教頭先生は千円札を2枚出して、小銭の山から、

「お釣り貰うわね!」

と、572円を取った。

体育館に戻ると照明を担当していたゲキブ(えんげきぶ)のコと、アナウンス担当の放送部員が後片付けをしていた。委員長は小さいカラダで大きいマルを作って、機材購入金額に到達した事を伝えていた。

バスケ部は、普段は半面しか使えない所、バレー部と、前半後半で全面使わせて貰ったそうで、椅子を片付けて、ロードワークに出てしまっていた。替わってネットのポールを立てていたバレー部のキャプテン?クラスにスカウトに来てたコが、仕事を後輩たちに振って、またカレンを口説き始めた。さっきのゲームを見ていたようで、いろはと美月も捕まり、姉達も含めて6人総取りを狙っているようだった。

 つい姉達を基準に見てしまい、いろはは運痴(・・)だと思っていたが、平均以上の運動神経で、努力でなんとかなる所は、かなりの高水準だ。バスケのフリースローや、バレーのサーブは、球技大会の都度、『足を引っ張りたくない』って姉達の特訓を受けてたから、今日も100%だったし、ほとんどフリースローっぽい、ノーマークのフィールドゴールも結構決めていた。ディフェンスが姉達に集中出来なくするだけでも、かなりの戦闘力になっていた筈だ。今度は、バレー部と練習試合かな?

「私、突き指するから、バレーは嫌!」

カレンはシャットアウト。

「私はボールしっかり掴むのが使命だったからバレーだと、ついついホールディングなのよね!」

美月も乗り気じゃなかった。新体操で培った技術はデメリットになるらしい。サラッと流すと、

「お団子乱れちゃったから、直してくださる?」

美月も疑問文と命令文を混同しているようだ。シュシュを外して、手直しをすると、

「まあまあの出来ね!」

言葉の割には結構喜んでいた。

ターゲットは元々の本命、姉達に移ったが姉達は取り付く島もなかった。

「あっ!あなた球技大会で連続サービスエースの!!」

ターゲットはいろはになったが、人違いだと言い張って、体育館を後にした。

バレー部のキャプテンはカップリングのテレビ番組でゴメンナサイされた人の様な表情で、立ち尽くしていた。逆に満面の笑みで駆け寄ってきたのは、新機材の購入の目処が付いた、委員長とゲキブと放送部。

「祝勝会の足しにして下さい!ファミレスなら、ケーキとドリンクバー位は入ってます。」

ファンタジーの漫画とかで、異世界の冒険者が金貨を持ち歩く様な袋を差し出した。袋は演劇で使う小道具で、中身はお茶会資金で、硬貨でザックリ5千円近くはありそうだった。機材の購入資金に廻そうとしていたが、募金でクリア出来たので、お礼に頂けるそうだ。遠慮しようとしていたが、委員長が、受け取るように促すので、受け取る事にして、ファミレスに向かう事になった。

「こっちは、放送部から預かっていた分で、こっちが生徒会役員の分!」

総額8千円を越え、ランチ、ドリンクバー、デザートに手が届いた。


「10名様ですと、あちらの席しか無いんですが・・・」

ウエイトレスさんが凄く申し訳なさそうに席を指したが何も問題なさそうなので、その席にして貰った。

 席に着いてオーダーをしてドリンクを取りに行こうとすると、隣の席に高校生と思われる男子が4人とドリンクバーから戻って来た。丸刈りだから、体育会系だろうな。ヤンチャそうなので、ナンパとか面倒くさそうだな。ウエイトレスさんが気にしていたのは彼等のせいだろうな。

ふと見ると、夢愛がいつにも増して小さくなっていた。

「何かあったの?」

隣の席から顔が見えない席に座って、

「アイツらうちの柔道部。」

つぶやくように絞り出した。中学生の制服姿を見られるのは流石に不味いんだろうな。ドリンクバーに立たなくていいように、夢愛の分も取ってくるようにオーダーを聞くと、

「ぶどうジュースとトニックウォーター半々で氷無し!」

慣れているようだった。

 しばらくは、おとなしかったお隣さんだったが、向こうの食事が一段落すると、誰が声を掛けるかヒソヒソ話が聞こえて来た。

「俺たち、麻幌の柔道部だけど、啓愛だよね?部活の帰りとか?」

1番下っ端らしい先鋒は、桐に軽くあしらわれて撃沈。次鋒を選ぶのに揉めていた。

僕がトイレに立つと、

「男もいたんだ、アイツに交渉しようぜ!」

トイレから戻るのが憂鬱になった。

便器に向かって立っていると、

「ねえ、おぼっちゃま、君一人で大勢の美少女引き連れて不公平だと思わないか?」

交渉じゃ無く、恐喝だよね。3人ピッタリ後ろに立っていた。面倒臭いヤツらだな。大体こういう人って、女子の中の少数派がどんなにかたみの狭い事か解らないんだよね。何言っても無駄だし、無視が1番かな?

「あと3人来るから7人回してくれればいいぜ、中学生は要らないから!」

無視を貫くが、トイレから出る方法を考えないとならないな。

「ぐふぇ!」「んぐっ!」「ごぼっ!」

妙なうめき声に振り返ると、白眼を剥いた3人と、そいつ等の首根っこを掴んだ山岸さん、斉藤さん、千葉が立っていた。

「松太郎、いつまでも戻らないから、大きい方かと思われてるぜ!」

千葉がニッコリ笑ったが、目は笑ってなかった。

席に戻ると、お隣の柔道部の面々はお通夜と言うか、処刑の順番待ちの様な顔をしていた。山岸さんがスッと首振ると、皆んな逃げるようにレジに並んだ。

若干、場が沈んだが、ナンパのあしらいに慣れっこの姉達が、へっちゃらの様子だったので、皆んなも元気を取り戻した。

 委員長が3人を席に招いて祝勝会を再開した。いつもの目付きに戻った猛者達は、お約束のように大盛りをオーダー、やっと落ち着くと、

「もみじに、手を出すなんて言語道断!」山岸さんが吐き捨てるように言うと、二人も頷いていた。

「もみじ、モテモテね!」

委員長がツッコむと、3人は真っ赤になっていた。今は松太郎なのにね。バスケの活躍を解説しながら説明すると、猛者達は驚き、一緒に観ていた委員長は、

「なんでいろはのシュートの時に邪魔が入らないのか不思議だったんだよね!」

基本的な作戦は、姉達が3人で撹乱してシュート、ディフェンスが寄って来たら、その分空いたゴール下のカレンかフリースローラインのいろはにパスを送るので、2人は邪魔が入らずにシュートが出来る。2人にディフェンスが付くと、姉達の自由度が増して、シュート出来る。言うのは簡単だが、2年程のブランクで現役を翻弄するテクニックは、しつこく勧誘に来るのも当然かと思った。

 デザートを頼む時、チョコレートケーキとティラミスで迷った。皆んなは直ぐに決まり、私だけだと思うと少し焦ってしまった、見かねた委員長は、

「千葉君がチョコだから、ティラミスにして、『あーん』し合えばいいんじゃない?」

千葉がまた真っ赤になったので、直ぐにチョコレートケーキに決めた。面白くてたまらない表情の委員長を横目に、

「私、チョコレートケーキ!」

ん?一人称が『私』になっていた。委員長は直ぐに気付いて、更に面白そうに笑っていた。学校では気を付けていたけど、この面子だと、気が緩んだようだ。前は『俺』だったけど『僕』のほうが雰囲気に馴染めそうなので、学校では、『僕』、帰ったら『私』。恥ずかしさを噛み締めながらケーキを食べて、祝勝会はお開きになった。

 お会計は、猛者達の分も含めて今日の稼ぎで賄えた。観ていただけの私達や、偶然合流した猛者達までご馳走になるのは気が引けたが、委員長がせっかくのご好意なのでって言うので、素直にご馳走になった。

 委員長、美月、夢愛はそのままお泊まりのつもりらしく、もう暗かったので、猛者達は送ってくれる事になった。目立ち過ぎるから、僕一人じゃまたナンパに合うのが心配だと言っていたが、委員長は、

「ちゃんと『もみじ』になった所を見たいんでしょ?」

3人は揃ってそっぽを向いたが、薄暗い中でも、赤くなっているのが解った。元は僕だって解ってるのに、不思議な反応だな。まあ、そのうち慣れるかな?


 家に帰って、皆んなにお茶のリクエストを聞いていたら、委員長は、

「ドリンクバーでたくさん飲んだんだから、さっさと着替えておいで!」

取り敢えず掛けたヤカンを委員長に頼んで、着替える事にした。いろはは用意していた物じゃなく、急いでコーディネートしてくれた。たぶん普段着の中で1番のミニだった。ナンパ騒動を収めてくれたお礼かな?

いろははそのつもりらしいし、猛者達も喜んでくれそうなんだけど、微妙に納得が行かない。まあ、下手な考えなんとかって言うから、気にしないようにしてリビングに降りた。委員長は、素足にスリッパだった脚を露出し過ぎとチェック、

「思春期男子が目のやり場に困るでしょ?」

猛者達に感想を求めた。3人とも、まともな回答ができずにいると、いろはに指示して何か用意させていた。

千葉にコーヒーミル(手回し)を頼んで、ドリッパーの準備をしていると、いろはが靴下を持って来た。くるぶし上のショート、膝下のハイソックス、膝上のニーハイ。履き替えて、猛者達の反応を調べた。3人共、ニーハイがお気に入りだそうだ。

「肌を見せりゃいいってもんじゃないのよ!すこしは男心(・・)勉強しなさいよ!」

委員長にダメ出しされたが、男心から言わせて貰うと、ニーハイはミニかショーパンに合わせる物だから、露出多めに直結するし、絶対に女の子の物だから、過剰に反応してもおかしく無いんだよね。余計な事を言うと、また面倒が増えそうなので、おとなしくしておいた。短い順に履いて、最後がニーハイだったのでそのままで過ごしていると、猛者達の視線が、私の脚に集中しているのが解った。目のやり場に困るんじゃ無く目のやり場が固定し過ぎて困るんじゃ無いかな?コーヒーを飲むと猛者達は爽やかに帰って行った。

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