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花田種苗の5人姉弟妹  作者: グレープヒヤシンス
第3章
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バスケ練習

 翌日の放課後、体育館に来た。姉達は一度家に帰ってから来ようと主張したが、学校からの方がバス一本で便利だとアピールして、なんとか直接くる事が出来た。一度帰宅してしまうと、もみじ(・・・)としての参加になる恐れがある。トイレなら個室なので、最終的に覗かなければ一応はセーフだと思うけど、更衣室はそうは行かないよね。えっ?トイレもアウト?そう言えばそうだよね。

 体育館の中にはバスケのコートが2面でゴールが4つ、それに加え移動式のゴールが2つで計6箇所で3on3のように使うルールっぽいが、1面を占領しているグループがいた。もう1面はかなり混みあっていた。

 桐は、係員の人に体育館のルールを確認しに行った。『利用者同士で譲り合って下さい』って感じで特にハッキリしたルールは無く、1面占領を注意するのは面倒で見て見ぬふりを決め込んでいるようだった。

 桜は、しばらく彼等のプレイを観察していて、桐からの情報を聞くと、彼等にゴールを1つ開けるように申し入れた。全く譲る気は無いらしく、以前は係員が注意していたが、全くの無視を続けいいるようだ。反対のコートの混み具合をアピールすると、

「じゃあ一緒にやろうよ!で、その後ゴハンどう?」

「そうね、試合してあなた達勝ったらゴハン行きましょうか、私達が勝ったら即刻退場して頂く事でいかがでしょう?」

ニヤニヤしていた男達がムッとして、試合を受けた。


 体育館の係員にフエを頼んで、試合が始まった。ティップオフはハンデをくれたのか、180台が何人かいたけど、カレンより少し背が低い男がセンターサークルに立った。カレンがヒラリと舞うと、次の瞬間、桐、桜を経由して芒がランニングシュートを決めていた。相手ボールでゲームが進むと、いつの間にかボールを奪い桐の3ポイントが炸裂、ゴール下からボールを入れる所をカレンがチェック、苦し紛れのパスを桜がカット、ハーフコートを出る事無く、5分で15対0になった。点差が開く度に、彼等のプレイがラフになる。それでも華麗に躱してレベルの違いを見せつけた。彼等のオフェンスもなんとかパスが通り、初めてセンターラインを越えた。ゾーンで守ると、点差を考えての作戦かいきなり3ポイントを狙って来た。リングに弾かれ大きく弾むと、カレンのジャンプは、10センチは背の高い男を上回り、芒の手に移ったボールは大きな弧を描き、フリースローラインで待ついろはの手に渡った。リングの上で危なかっしく弾んだが、なんとかネットをくぐった。その後は相手の3ポイント狙いが続き、ほとんどが、カレンのリバウンド、そこからの速攻でどんどん差が開いた。お約束のようにリバウンドを制したカレンが吹っ飛んだ。相手のセンターの肘が、カレンの顔面を狙う。カレンは予測していたかのように、ボールを盾に防いだが、衝撃を吸収し切れずに、吹っ飛んでダメージを避けたようだ。ファールでこちらのボールになると、相手はマンツーマンで守る。と、見せかけ、抱き付いてカラダを触る作戦に出てきたようだが、それもお見通しでただの鬼ごっこになっていた。結局30対6の圧勝だった。

 このあと、男達が暴れるのがセオリーかと思ったが、意外とあっさり負けを認め、ルールを守る事を約束して、ゴールを分けてプレイした。

 ビデオカメラを構えた若林さんが現れた。さっきまで戦っていた男達に手を振ると彼等は嫌な顔をして、休憩スペースに退散した。

「仕返しなんか考えたら、今のゲーム拡散させるって釘指しておいたから安心して!」

えっ?若林さんって味方なの?しかもその制服?夏休み中、オソロで来ていたコスプレセーラーだった。

「ねえ、秋野さん、私も(・・)この制服似合うかしら?」

「う、うん似合う、か、かわいいよ!」

「有難う、練習頑張ってね!」

ゴールの後から、撮影しながら応援してくれた。練習を終えると、

「画像見てみません?練習の参考にならないかしら?」

若林さんの提案に、桜は、

「アイツ等一応おとなしくなったけど、念の為、単独行動はやめようね、先ずはウチでビデオ観よっか?」

若林さんも一緒にウチに帰った。

ビデオの画像はクラウドに保存してあって、スマホをテレビに繋いで大画面で見る事が出来た。画像を見ると練習中に説明していた事が、客観的に理解出来たようで、いろはは自信を付けた様だった。

「夏休みに素敵な動画を、撮ったんですけどご覧になりませんか?」

返事を待たないと言うか、そもそも質問じゃ無かったようで、すぐに違う映像が再生された。

「夏休み、温泉に行った時、かわいいコスプレ集団をみつけたの!」

ほぼ、もみじ(・・・)が主人公の観光ロケのように仕上がっていた。

「あのね、秋野さん、私の恋愛対象が女性って、前に話したでしょ?男性には嫌悪感と恐怖心しかないって。花田君には不思議とそう感じなかったの。なんか、温泉に行ってから謎が解けた気がするのよね。あっ、この動画はこのスマホでしか見られないようになってるからね、今は(・・)!」

もしかして、俺の女装動画が人質?

「今度席替えで隣と後が男子でしょ?彼等絶対にあなたの事が好きよ、どっちかでも両方でもいいからあっちにして、もみじちゃん、私に譲って頂け無いかしら!」

いろはが固まると、

「もみじも松太郎も一応自分の考えも有るだろうから、2人で慌てて決めないで、ゆっくり知り合って行くといいよ!一緒に遊んだりお茶したりしてね!」

芒が調整に乗り出した。若林さんは大喜びで、

「秋野さん、メアドはそのままかしら?」

いろはが頷くと、若林さんはサクサクとスマホを操作し、

「さっきの動画は、管理者を秋野さんにしたからあなたのスマホからしか見られないようになったわ、削除もあなただけしか出来なくなったから自由にしてね。」

人質は解放されたが、若林さんが、これからどう関わってくるのか不安が過ぎった。

「若林さん、ファーストネームは?」

カレンが人懐っこく聞いた。

「美月です、美しい月って書くの!」

「十五夜産まれかしら?」

「いえ、母が夢の国の世界一有名なネズミの大ファンで、音を合わせたそうです。家では、ネズミさんの名前でよばれてるんですよ!」

今日はツインテールにしているけど、お団子2つの時が多く、その時はそのネズミさんみたいだと思っていた。その事を話すと、お母さんの趣味でネズミさんの耳を作ってくれるそうだ。

いろはも、必要以上の警戒は解いて、晩ごはんを、食べながら、お互い呼び方を話し合った。名前呼びで統一にすることになった。

「今の姿の時が『しょうくん』で、変身した時が『もみじ』でいいのね?」

「うん、それでOK!美月。」

バス停まで美月を送る。いろはとカレンが一緒に行くと言い出しそうな雰囲気ながら牽制し合った感じだった。ちょっと二人きりは嫌だと思ったら、雨が付き合ってくれた。

 対決は明後日だが、明日はゴールがある所は確保出来ないので、シュートの練習はこれっきりかな?パスやドリブルは倉庫で少しは、出来るかな?今日の動きなら結構期待出来そうなので、試合が楽しみになった、美月もサブメンバーでスタンバイするそうだ、それなら今日一緒に練習すれば良かったのにね。

 金曜日の放課後、即席バスケチームのメンバーが揃って学校を出た。どこか練習出来る所見つけたのかな?当然のようにお供を命じられて、付いて行くと、ファストファッションのお店だった。

 バスケ部のユニフォームはブルー系なので、被らないようにピンクのTシャツとハイソックスを揃えていた。それに合わせて背番号を付けるそうだ。手芸屋さんに寄ってアイロンでくっつくステッカーを仕入れて帰った。

 家に帰ると、誰も居ないはずのリビングに灯りが点いていた。侵入者?警戒して玄関に近づくと、

「おかえり!」

夢愛が迎えてくれた。合鍵を渡されていたようだ。

「これで良かったかな?」

ピンクと黒のリストバンドだった。

「うん、ピッタリ!」

姉達が揃って飛び付いた。

「ピンクって、なかなか丁度いい色って見つからないのよ、Tシャツとソックスと一緒に染めたみたい!もみじ、試着する?」

いつも思うが、『?』って意味知ってるのかな?大体が『イエス』の1択なんだよね。まあ仕方が無いか。


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