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チートな師匠と普通な俺  作者: azusa.yukari
13/17

 この世界の魔人とは

 そうして、変態魔王の襲撃のインパクトに心を傷つかせている俺に、無言で師匠が俺の口に芋っぽい何かで作った芋きんとんモドキを放り込んできた。

 食べ物を与えておけば何とかなると思っている師匠に、一言物申したい、まあ、食べるけど。

 うま!前に俺が作った芋きんとんモドキより確実にうまい!

「師匠もう一個ください!」

 そうして結局三つの芋きんとんモドキを食べ終えた俺は、いつも通りの機嫌に戻っていた。

 チョロい自覚はある。

「さて、隆二の機嫌も戻った事だし、具体的に何をするべきか考えねばな。」

 ティナさんがにやにやしながら言う、はいはいすみませんでした。

「…俺が多少頑張って、一発でアレを殺れるようにするんで、皆さん頑張って瀕死に追い込んでください。」

 消極的本音。

「隆二さんふざけてると後頭部割るわよ?」

 …はい、すみませんでした、でも本当にアレには二度と関わりたくないんです、判ってください。

「皆さんだって、突然裸に剝いてきて、その上尻を揉もうとしてくる変態が、一切自分の攻撃を受け付けない状況になれば逃げるでしょ。」

 俺の言葉に全員が声を詰まらす。

「…それは、死んでも関わりたくありませんわ。」

「…出来るものなら自分の手を汚す以外の方法で、即刻抹殺したいな。」

「…そんな状況になったら、まともに反撃できる気がしないわ…。」

 各々が思い浮かべた状況に顔を青くする、そうだよね、そして俺はそれをやられた、その俺が…。

「アレに関わりたくないって思うのは我儘ですか?」

「「「正当な意見です。」」」

 判っていただけて大変うれしいです。

「師匠、そういうわけで修行を怠る気は一切ないですが、あれに関しては止め役だけでお願いします。」 俺のあまりにも真剣な表情と、奴と対峙した時の事を知っている師匠は折れた。

「…状況が許せばな。」

 と言ってくれた、やったね!何がなんでもそういう状況に持っていきますとも!

「そのかわり…覚悟はいいな?」

「…はい、よろしくお願いします。」

 そして俺は何度目になるかわからない、地獄行脚…ではなく、師匠の修行を受けるのだった。


「死ぬ…。」

 涙目で倒れてる俺にルルさんが慌ててヒールをかけてる、両足吹っ飛んでるしちょっと時間かかるかなぁ。

 師匠の修行の方が死にかけるのはいつもの事だけど、ここまでの大けがが毎日なのは久し振りだ。

「…何で俺生きてるんだろう…。」

 やばい、この感覚になれたら元の世界帰った時うっかり大けがして、のた打ち回って死にそうだ…向こうでもヒールって使えるのかな、俺も覚えた方が良いのかな。

「そんな半端な鍛え方はしていないと言っている。」

 俺の考えがダダ漏れだったらしく師匠が真顔で言い切った。

「いや、でも俺が向こうに帰ったら加護とかほとんどなくなるんですよね?」

「問題ない、鍛えた体は嘘はつかん、少なくともお前が言う程度の危険などでは、お前を死なせん。」

 …師匠は何処までも師匠だった、要するに魔法抜きでもちゃんと修行で身に着けたものは残るから大丈夫だと言いたいらしい。

「…純粋な体術とかそういうのですか…。」 

 加護の力が大きい気もするけど師匠がこれだけ自信満々で言うなら、困らない程度に残るんだろう。 

 元の世界に戻った後の体力測定がちょっと楽しみになってきた。

 そうして足の治った俺と治したルルさんが、栄養補給の為モンスターの肉をうまうましている時、ふと気がついた。

「なんか比較的肉の旨いモンスターばっかりですね。」

「当たり前ですわ、まずいモンスターの栄養など微々たるものですもの。」

 肉にぱくつきつつさも当然のように、そう言うルルさんに俺は何度目かのハテナマークを浮かべた。 

「どういうことですか?」

「つまり肉の不味いモンスターはこの世界の存在じゃないから私たちの栄養にもほとんどならないし肉もまずいのよ。」

 植物型のモンスターの実を煮たコンポートモドキをつまみ食いしながらサシャさんがそういうが俺のハテナマークは増える一方だ。

「この世界の存在じゃない?」

 俺のハテナマークは量産されていく、そうしてそれに気が付いた師匠がぼそりと。

「肉の不味いモンスターは外の神が作りだし、この世界に無理やり植えつけられた存在だ。」

 外の神?また知らない単語が出たぞ。

 あまりにもハテナマークだらけの俺に、ルルさんが代表して語ってくれたのは、どこをどう聞いても天地創造の神話だった。

 曰く、この世界の神様はこの大地とか空とか海を作って、人間と獣を作ったそうな、まあこの辺は俺の世界にもある話だ、ただ違うのはこの世界の場合完全な実話である事と、獣がただの獣ではなくて、

魔獣だと言う事、なんでそんな危ない存在を?と思ったが、それにはちゃんと理由があった、この世界は魔力があふれる世界だった、そのせいで人間はただそこに居るだけで大量に魔力を体に取り込み、病気になる人間がたくさんいた、それをあわれに思った神様が魔獣を作った、魔獣は大量に魔力を必要とする存在として生まれた、だんだんと魔獣が増えて人間が魔力で病気になることがなくなった、魔獣と人間はお互いきちんと住む場所も判れていたから、滅多に出会わなかった、時々魔力不足で苦しむ人間の所にだけ現れて、魔力を貯めていたその血肉を自ら分けてくれた、人間も魔獣と魔獣を作った神様に感謝し、必要以上に魔獣を恐れず、彼らの住家を荒らすようなまねは絶対しなかった。

「神様は、人間を完璧にすることも、魔獣を最強とすることもしませんでしたわ、モノは歪ゆえに寄り添えるとおっしゃって。」

 なるほど、深いお言葉です。

 そんな穏やかで優しい世界を、突然悪夢が襲ったんだそうだ。

 全く別の世界の神が突然この世界に現れて、その神は嬉しそうな言ったそうだ。

「壊しがいがありそうな世界だ。」

 と、そうして彼は自分の世界とこの世界を無理やりつなげ、この世界とは相反する性質の生き物たちを大量に放出した、それが魔人であり、モンスターだったそうだ。

 弱く穏やかだった人間は魔人に襲われただただ、命を落としていき、魔獣たちはモンスターと争ううちに穏やかな気質を凶暴さにすり替えられていった。

 そうして荒れ果ててしまったこの世界だが、神様は見捨てたのではなく、元凶である別の世界の神と壮絶な戦いを強いられていたらしい、この世界を守りたい神様と壊して遊びたい別の世界の神、結局は同じように世界を滅ぼしかけられていた、また別の世界の神々の加勢で元凶となった神とその神の世界は滅んだそうだ。

「その時に魔人もモンスターも共に滅んだはずなのです。」

 なのに、千年の時がたった頃、突然それは現れた、モンスター、魔人、そして存在などしなかったはずの魔王と言う存在。

 魔人がひざを折り、モンスターを支配し、魔獣を狂わせる、この世界にとって最悪の災厄、それが魔王と言う魔人の形をして現れたのだそうだ。

「最初は何がどうなったのかもわからない人間達に神様は神託をくださったのです。」

 魔王とは滅んだ神の欠片、それがこの世界にほんの少し残ったやつの世界の因子に根付き、あきれるほどの時間をかけて、魔王と名乗る存在として現れたのだと。

 直接自分が手を下せば、お前たちの世界にを壊してしまう、だから勇気あるものに加護を与えよう、加護を受けし者たちよ、どうかこの世界を守っておくれ、そう神は人々に語りかけ、神の加護を受けた多くの若者が旅に出て、数十人の若者が、過酷な旅の末に魔王を討ち果たしたそうだ。

「それがお師匠様達のご先祖様でのちの神仕えと守護騎士の初代達ですわ。」

 はい、なるほど、師匠は初代勇者の末裔と…なああああんで師匠が勇者じゃないんだ!

「師匠が勇者じゃない理由がわからない!」

 此処まで聞いたうえでの感想がこれかとか言わないでほしい、一応は理解した、この世界の神様が優しさで生み出したのが魔獣達、元凶が作り出したのがクソまずモンスター、何が楽しかったのか元凶の趣味は人様の世界を壊して遊ぶこと、それにブチ切れた色んな世界の神様にさっくりやられて、なのにしぶとくこの世界に潜り込んで魔王とか名乗ってまた調子のって暴れてる、そのせいで俺が落とし穴に落ちる羽目になった、どこか間違ってますか?

「…まあ、大体あってはいるな。」

「隆二さんは被害者ですから腹立たしいのは判りますがもう少し…。」

「せめて布でくるんだ言い方は出来ないの?」

 三人の疲れ切った表情に、だって本当の事じゃないですかと言い切ってみる。

「じゃあ、あの変態は元凶の生まれ変わりですか?」

「そういうわけではないらしい、ただ強烈にこの世界を破壊することに執着を持っているようだが。」

 ぬう、なんにしても迷惑な、それはそれとしてなんで師匠は勇者じゃないのでしょう。

「…俺では魔王の不の感情に飲まれると言われた。」

「…それはどなたに?」 

 師匠の言葉に俺は慎重に聞く、また教会の奴らか?

「神だ、俺の与えられた唯一の神託だ、必ず勇者は現れる、だから待てと、その勇者の力になってやれと、それこそが俺にとっての救いの道となると。」

 師匠が穏やかに俺の頭を撫ぜる、…こんなへっぽこですみません。

「卑屈になるな、少なくともこうやってお前たちと穏やかに言葉を交わす未来など、お前が召喚される前には考えもしなかったんだ。」

 相変わらず頭を撫ぜている、師匠的には息子を褒めてるんだろうけど三人の嫉妬がすごい、皆むうっとした顔をしてこっちを見てる。

 イタイイタイ視線が痛い。

「隆二さんだけずるいですわ!」

 二度目。

 割って入ったルルさんに、苦笑しながら師匠がルルさんの頭を撫ぜる、後の二人もすすすっと近づいて行く、相変わらず師匠の事が大好きな三人が師匠に頭を撫ぜられご満悦な隙に、師匠はこっそりと俺に言った。

「お前が俺の光だ。」

 …死ぬほど恥ずかしい、そういうセリフは奥さんに言って差し上げて下さい、顔を真っ赤にしながらそういう俺に、水浴びに行くぞと俺を引っ張りながら。

「彼女は、俺の生きる意味だ。」

 と甘ったるい顔でのろけてくださいました。

 こんなに師匠に思われてる奥さんに一度会ってみたいな。

 魔王倒したら会えるかな、結婚式とか改めてやるならぜひお祝いしたいな。

 そんなことを思って師匠と水浴びと言う名のお風呂に入りつつ、師匠に結婚式をするならぜひ参加したいと言ったら、じゃあ俺の付添人になってくれと言われた、この世界じゃ花嫁と花婿に一番近しい人が付添人として式の間必ず彼らの横に寄り添って彼らと共に誓いを立てるのだそうだ、魂の道行きさえも彼らと共に苦楽を共にと、親友や戦友が務めるその役目を俺にさせてくれるらしい。

 何か気恥ずかしいが、そんな風に言われたらうれしくないはずがない、ド変態魔王の事は考えるとテンションが下がるが、その先が師匠たちの結婚式だと思うと浮き浮きしてくる。

 よし!頑張ってド変態を倒しましょう!




 多分隆二は三人にいろいろ毒されてることに気付いていない、ライトハルンは気付いてるけど隆二の事が(息子のように)かわいいので放置。

 いっそ本当に息子にしたいけど帰る家のある子を無理に息子になんてできないから、せめて結婚式の誓いを一緒にしてもらいたいと思っての言葉。


 三人も一緒にお嫁にいけなかったらお互い付添い人になろうと誓い合ってる。

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