変態襲撃
ゼイゼイと荒い息をしながら、俺はそれでも相手に剣を振りかざす。
「笑止。」
そんな一言で、あっさりと防がれ俺は吹き飛ばされた。
くそっ、しゃれになんねえ!
吹き飛ばされた衝撃に、げほげほとせき込みながらそれでも俺は、相手の動きを見逃すまいと奴を見据える。
「哀れだなあ、勇者よ、仲間の力を借りねば何一つ成し遂げれぬ弱きものよ。」
奴…魔人が歪んだ笑みでそんな言葉を俺に投げつけてくる、うっせえ、そのぐらい知ってるよ!
それにしても何なんだこの魔人は、さっきから切っても焼いても何にも効果がないどころか、一瞬で怪我が治りやがる。
「…師匠たちをどうした。」
朝起きたら師匠たちがいなかった、正確に言うならこいつの攻撃で目が覚めて、その時には師匠たちは影も形もなかった。
「それをお前が知ってどうする。」
「それこそてめえが知ってどうする。」
俺は魔人を睨み付けたままそう切り返す。
殺されてはいないはずだ、あの人たちは簡単に殺されるようなタマじゃない、だったら多分みんなバラバラにされて、各々魔人に襲われているんだろう。
だったら目の前の魔人を倒してさっさと師匠たちに合流すればいい、…それはともかく。
「てめえ!俺の服どうした!」
何が悲しくて全裸で戦わなきゃいけないんだ!俺は露出狂でも変態でもねえ!
「そのくらいの楽しみがなければつまらぬ。」
!!!!!変態だあああああ。俺の全身がぶわっと鳥肌を立てる。
「死ね変態!」
変態は抹殺すべし!
「は!その程度か。」
くそっ足が痛くて集中出来ねぇ。
「どうした、先程よりさらに動きが鈍っているぞ。」
奴のせせら笑いに、俺は力一杯剣をふりおろす。
「うるせえ!てめえだって裸で戦ってみやがれ!」
「ほう、良いのか?」
ニヤリと笑う魔人にゾッとして慌てて距離をとれば、にやにやと笑いながら。
「ふん、勘の良いことよ、その肌に触れるには、まだまだ活きが良すぎるな。」
マジもんのド変態!鳥肌がおさまらない!なんなんだこのド変態!
こいつ今おれの尻揉もうとしやがった!嫌だ、気持ち悪い、師匠すいません、無理、これ無理、近寄りたくない。
「何だ逃げるのか?良いぞ、逃げれるものなら逃げるがよい。」
まあ、貴様のその赤子の様な足では血に染まって動けなくなるだけだろうがな。
うるせえ!現代っ子は裸足で歩かねえんだよ!
俺はもう一度今度は雷撃を奴に叩きつける。
クソ!弾かれた!
でも近寄りたくない、なら徹底的に遠距離攻撃で倒してやる!
そうして、俺は奴と一定の距離を保ちながら、魔法と斬撃をガンガン飛ばして少しでも奴にダメージが与えれそうなときにだけ一瞬間合に飛び込み一振りしたら、すぐまた魔法を片っ端からぶち込んで、距離とる事を繰り返した。
「ふふ、随分とがんばるではないか。」
余裕綽々の魔人が憎たらしい、俺は肩で息をしながらそれでも奴との間合いを取り、魔法をぶち込む。
さっき一瞬魔人に腕を掴まれた、とっさに奴の腕を切り落として逃げた、その時に感じた叫びだしたくなるほどの凄まじい気持ち悪さに、二度と触られたくない俺は、必死に抵抗する。
うっかり一瞬でも触られようなら吐く自信がある、そんな自信は要らないが本気で吐く、それぐらい気持ち悪い、魂が拒絶するってこういう事かって心の底から納得出来るレベルで無理。
「いつまでもつやら。」
奴の言葉にイラッとくる、さっき切り落としたはずの腕まで元に戻ってやがる、魔法を力いっぱいぶつけても何の効果もない、まさに絶体絶命だ。
でも、いつまでもつ、なんて言葉は俺にはない、俺にあるのはただ一つ。
「お前を倒す!」
一気に間合いを詰めて思い切り横に一振り。
「…ほう、ようやく我に届いたか。」
腹を切られそれでも余裕の笑みを浮かべる魔人、傷が治らない、効いた!
「フム、遊びが過ぎたか、もう少し遊んでおきたかったが仕方あるまい。」
そう言いうや、奴の周りに恐ろしく巨大な火球が出現した。
「死ね。」
その一言で、火球がこちらに飛んでくる。
「負けるかああ!」
俺は俺で火球を出す、これは水魔法じゃとても無理だから、火球同士で相殺するしかない。
ああクソ!どっかのバトル漫画の主人公にでもなった気分だ、クソ重い!何だこの魔力、負ける…
「…かってんだ!」
俺は魔力をさらに込める、ふざけんなクソ熱い上に未だに全裸とか本当ふざけんな!
ど変態が!消し飛べ!
ほんの少し俺が火球を押し返せば奴の魔力がさらに加わる。
まだ余力十分ってか!上等だ!
キッと奴を見据えたまま、俺は火球を水球に変化させ。
「なるほど、それなりに頭も回るらしい。」
魔人の腹に深々と剣を突き刺し、そして火炎魔法を最大火力で奴の体の内部に放った。
ぞわりとした感覚に後ろを見れば奴がいた。
「ダミーか!」
「つれないな、ほんの少し貴様の肌に触れようかと思っただけだと言うに。」
「気色悪い!」
俺が斬撃と共に後退すれば奴が笑いながら間合を詰めてくる。
「ふふ、本当に可愛らしい、人間の王には感謝せねばな、このような我好みの子を連れて来てくれたのだから。」
奴の手が一瞬頬に降れた。
瞬間、気持ち悪すぎて思考が停止した、その一瞬を見逃さなかった奴に、べろりと胸を舐め…。
「ぎややややややややややあああああああああああああああ。」
我武者羅に魔法をぶつけ逃げる俺を気にも留めず、奴は不快そうに。
「ふん、神め無粋な事を、可愛らしき場に奴の刻印など付けられては、じっくり堪能も出来ぬ。」
と言うやつの口から焦げたような煙…?ああ!聖痕の加護!これか、この時の為か!
とその時、見知った気配と共に、ばさりと布がかぶせられた、安堵のあまり涙目で俺はその気配の主を仰ぎ見た。
「師匠!」
「遅くなった。」
険しい表情で、ど変態魔人を見据えながら、それでも俺をいたわるように、ポンと頭をひと撫ぜしてくれる、師匠が来てくれた、それだけで俺は安心できる。
「気を抜くな。」
「はい!」
「服はどうした。」
「あの変態魔人にとられたっぽいです。」
起きた時から全裸でした。
そう言った瞬間師匠が魔人を細切れにしていた、…さすが師匠。
「ほう、世界最強の名はだてではないと見える。」
うそだろ…奴が平気な顔して立ってる、ありえない、師匠に細切れにされたはずなのに。
「…魔王か。」
「いかにも、我こそは魔王ガンゼム。」
奴が楽しげに笑う。
…こいつが魔王!?はああ!?
「魔王がド変態とかふざけんな!!」
俺これ倒さなきゃいけないの!?この気持ち悪いのを!?冗談じゃない!
「師匠!止めだけ挿すので奴の事瀕死にしてください!今すぐ!」
これ以上こいつと係わりたくありません!
俺のはっきりきっぱりとしたダメダメ発言に両者が一瞬あっけにとられた顔をする。
「本当につれない事を言う。」
おもしろそうに笑いながらペロリと唇をなめる奴が気持ち悪くてしょうがない、思わず師匠の後ろに隠れて、師匠をぐいぐいと前に押し出す。
「隆二…。」
師匠の呆れたような声に必死に首を振る。
「嫌です、人の事裸にして尻揉もうとしたり、胸舐めてくるようなド変態と戦うとか。」
俺が涙目で嫌々していると、奴はニヤニヤしながら。
「よければその可愛らしきモノもたっぷりと遊んでやるぞ。」
と俺の下半身を見ながらこっちによって来る。
ヤダヤダヤダ!マジで嫌だ!助けて師匠!
無言で師匠が再び奴を細切れにする、俺も間髪入れず最大火力の炎魔法をぶち込む、死ね!
「やれやれ、その男が居ては分が悪い、いったん引くとしよう。」
今までで一番ダメージを受けたらしい変態魔王は、それでも悠然とマントを翻しすっと消えて行った。
とりあえず脅威の変態が去って行ったと確信できた瞬間。
俺は吐いた。
「ぎもぢわりいいいいいいいい。」
強者への恐怖?そんなものはない!師匠の方がよっぽど強い!でも気持ち悪い!とにかく、ひたすら、気持ち悪い!
え?あれ、俺が倒さなきゃいけないの?本当に?いーやーだああああ!あれと対峙するくらいなら魔人一万とタイマンした方がましだ!
「なるほど、そんな場所に聖痕が念入りに聖痕が刻まれていたのは、あれが原因か。」
げえげえやってる俺とド変態を直接見た師匠が納得したように呟く。
「…そんな場所……師匠、見ました?」
嫌な予感しかしない。
「その場所は予想外だったが魔王があれでは神からの最大限の配慮だったのだろうよ。」
ああああ、見られたああああ、もうヤダはずか死ぬ、畜生、今となっては神様も恨めれない、むしろ最大限の感謝しかない。
恨み言言って申し訳ございません!ご配慮、心より感謝申し上げます!ありがとうございます!!
ド変態が一瞬でも触れてこようものなら、焼いてくれるこの聖痕、なんで恥ずかしい所ばっかりと思ってたけどあの変態対策なら頷ける、俺は神様に深く深く感謝した。
「神への感謝が済んだのならいい加減服を着ろ。」
師匠は土下座する勢いで神様に謝罪と感謝の祈りをささげて居た俺に、放置されていた荷物をぺいっと投げて寄越した。
やばい裸のままだった、こんな格好で祈られたら神様もきっと困ったように笑うしかないだろう。
いそいそと着替え、人心地ついた後もう一度俺ははるかかなたに向かって手を合わせた。
この度はありがとうございました、これからもよろしくお願いします。
そうして、ようやく納得のいった俺と待っててくれた師匠が次に居たのは、ティナさん達と魔人共の乱戦の真っただ中だった。
「「「お師匠様!」」」
「隆二さん!遅い!」
「無事でしたのね!」
「来たか、手伝え!」
三人ともお元気そうで何より、そして俺の所に来たド変態のような存在も居なくてよかった、さあ、うっぷん晴らしさせていただきましょう。
「死にさらせエエエエエエ!!!!」
そうして、俺が暴れまくった結果、魔人は一匹残らず塵になった、むう、まだすっきりしない、その辺でモンスターでも狩ってこようか。
「休め。」
師匠の厳命が入りました、仕方ないとばかりに俺はその場に座って、思いのほか体力も魔力も消費しつくしていることに気が付いた、そして足が痛い(泣)
「何をやったんだ。」
「大変、お水で洗わなければ。」
「やだ、何でこれで動けたの?」
わらわらと俺にかまってくれる三人の治療を受けながら、おおざっぱに魔王の事を話したら、三人にドン引きされた。
「…魔王は勇者の力で倒せるのではなかったのですか。」
それは俺も疑問だった。
「おそらく、隆二の力量不足と聖痕の完成がまだなのが原因だろうな。」
ティナさん容赦ない、まあそれは俺も感じた、…精進します。
「でも本当にお師匠様に細切れにされてもすぐ復活するなんて、そんな相手倒せるの?」
サシャさんが青い顔で呟く。
「倒せるか、じゃなく倒すんです、でも出来るなら俺は止め以外で奴を視界に入れたくありません。」
俺の言葉に全員がこいつ何言ってるんだと言う顔をするが仕方ない、変態にわざわざ近寄りたくなんてない。
話だけでは分かんないだろうな、あの変態っぷりは、まあ百聞は一見にしかずともいうし目の前で体感してもらおう。
ああ、嫌だな、またあれと顔を合わせなきゃいけないのか、なんか遠距離でぱぱっと終わらせる方法無いかな、思わずそんな期待を込めた俺の視線に師匠が口を開く。
「あきらめて精進しろ。」
…駄目かぁ、嫌だなもういっそ知りたくなかった。
最終決戦があの変態とだと思うと俺のテンションは下がる一方だった。
この世界の魔王
代々一癖も二癖もあるその時代の勇者を苦しめる災厄。
一番多いのは戦闘狂の魔王
時点で魔法マニア
三番目に色情魔
変態魔王はレアケース、それを引き当ててしまうのが隆二の運の無さ。
それに気付いたこの世界の神が純潔が守れるように隆二が嫌がろうともそちらの方面に強固な加護を掛ける事になる。




