クエスト85 [英雄の影]
光を見て悟った。
白神と、黒神は今間違いなく死んだと。
これ程のエネルギーはコアからしか出せない。
コアが割れたという事は、すなわち死亡を意味する。
長年の戦いに遂に終止符が打たれたのだ。
「…フ…フハッフハハハハハハ!」
笑いが止まらない。
今、自分の敵が完全に死んだ!
自分を邪魔するものは目の前のゴミカスしか居ない!
しかもそいつは動かなかった。
今、実に気分がいい。
長年の宿敵の死と、手下の放心。
俺は少し調子に乗った。
「…寂しいか?なら、お前も送ってやるよ。彼奴等の元にな!」
俺は拳を放つ。
此奴を殺して、この戦いの完全なる終止符とする!
しかし、俺の拳を此奴は片手で止めた。
周囲には爆風が発生する。
だが、彼奴等ですら真正面から受ければ重傷間違いなしの拳を此奴は無傷で受け切った。
俺は驚くしかなかった。
俺は今、手加減をしていない。本気で殺す気だった。
何が起こったのか理解が追いつかなかった。
その時、此奴は口を開いた。
「…笑ってんじゃねぇよ。」
そう言って此奴は俺の脇腹に一発撃ち込んできた。
「グッ…!」
その一撃は重く、とても無力な生物の一撃ではなかった。
俺は直ぐに距離を取った。
俺は焦った。
まともなダメージを食らったのはこれが初めてだったから。
さっきの戦闘でも大したダメージではなかった。
だが、俺は今間違いなく怯んだ。
何故…?
「…!まさか!復活させたというのか?!命との引き換えに?!」
あり得ない!自分より何倍も下等なこんな生物に全ての力を委ねたというのか?
しかも、それだけじゃない。明らかに何かが違う!
封印を力尽くで解いただけじゃない!
もっと何かが大きく変わった!
力が変わった!別の何かに!
「カオス!俺はお前を必ず止める!
彼奴から託された物を、壊させはしない!」
俺は一瞬、幻覚を見たのかと思った。
だが、あり得ない。
俺はこいつらを見たことがない。
話には聞いていたが、そいつ等は分体が殺した。
遥か昔に!
眼の前の此奴と同じように遥か昔、歯向かってきた神の手下。
龍人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、鬼人族、ヴァンパイア族、甲殻族、巨人族、三目族、ハーフリング族…白神に黒神まで!
そいつらの幻影が何故彼奴と重なって見える!
それだけじゃない。
彼奴の…恐らくは硬化の能力…だが、報告と違う!
今まで、全員が同じ能力を使ってきたから知っている。
これは彼奴等の使う硬化の域を遥かに超えている!
これはまるで…全盛期の自分レベルの硬さ!
今の一瞬で、何があった!
俺は覚えているぞ。
彼奴と初めて会った時、奴は傷が完治していなかった。
つまり、戦闘でついた傷があるという事だ。
傷を治す前に能力が封印されたのだからそういう事だ。
ならば何故!彼奴等よりも強い俺の攻撃に対して無傷なのだ!
「どうなっている…お前は何をしたんだ!」
「そんなの知らねえよ。」
「ならば、質問を変える!お前の背後に居る亡霊達は何なんだ!」
「背後の亡霊?」
彼奴は後ろを振り向いた。
だが、自分には見えなかったのか首をかしげていた。
だが、何が気がついたように首を戻した後、此方を向いて嫌な笑みを浮かべながらこう言い放った。
「お前を殺す義兄義姉達だよ。」




