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第41話【頼りにするから頼りにして】

 最終日、泣いても笑ってもインハイ最終日だ。


 男子団体戦、決勝トーナメント1回戦。ついに島原海南と向かい合って整列している。光誠の選手が背丈も体格もそれぞれバラバラなのに対して、海南は全員の体格がガッチリとしていて軍人のようである。連中がゴツいのは、これまでも見てきた。だが百聞は一見にかず、百見は一戦にかず。高層ビル群を目の前にしているようだ。強い圧を感じる。




 今年1度も手合わせのない相手。だからこそ、先鋒戦で流れが決まってしまう部分が大きい。頼むぞ、倉富っ。


「シャテァアッ」


 倉富は立ち上がるや否や、すぐさま相手の稲田の小手に鋭く切り込む。惜しい一撃だったが決まらない。そうなると、逆にこういう奇襲の一発が決まることはなくなった、と見ていいだろう。


 そこからの鍔迫り合い、倉富が左右に仕掛けを見せるが稲田がガツンと一発押し込むとあっけなく倒された。


 中断が明けて構え合う。稲田は不用意な入り方はせず、厳しいところでは足捌きとガタイを駆使して有利な展開に持ち込んでいった。


 これだ、これこそが海南の剣道なんだ。派手な大技は控えて、相手の崩れを構えとフィジカルで誘う。そしてこれが5人全員に徹底されているという、相手からしたら全くつけ入る隙も逃げ道もないチームが組まれている。


 小柄で体格勝負では厳しい倉富は、しかし果敢に手数を出していって、とにかく稲田の自由に攻め込む時間を減らすことに努めた。これが功を奏してお互いに決定的なシーンもなく時間切れとなった。


 次鋒戦の柴田の相手は吉木。お互いが2年生同士の同士の対決は、どちらも捨てきった技のやり取りが少なく、波風のない膠着の様相で引き分けになる。




 中堅戦、新浦が対するのは寺井。


「コタッ、ダァレヤアア!」


 初太刀にコテからのドウ。これを鮮やかに決めたのは新浦だ。倉富の初太刀を見て思うところがあったのだろう、寺井は棒立ちでなくコテに対してメンを出そうと振りかぶったところに、どてっぱらで新浦の竹刀が爆ぜた。


「シャラ、コテッ」


 手元自体は浮かさないものの、軽快な足捌きから機を見てのコテで間を潰していくという時間の使い方で、危なげなく新浦は1本勝ちを収めた。


 結果的にこれが決定的な一打となった。新浦が倒したこの寺井、実は玉竜旗までは大将を務めていた選手で、今回中堅を任されたのは、降格ではなくポイントゲッターとしての起用だった。そこを叩いたことで、チーム全体にダメージを与えることができ、俺も時間内に慌てる相手のメンに対して返しメンで1本勝ち。これで光誠学園の勝ちが確定した。矢野はプレッシャーのないところで省エネ剣道をして引き分けた。


 正直、島原海南に大将まで回さずに勝つとは予想外どころではない。事実、俺が勝った瞬間に会場中の空気が変わったのを感じた。周りがまだざわついている。


 それも仕方ない。去年、県予選で負けた光誠学園と島原海南との対戦だ。大がつかないものの金星と言ってもいいだろう。


 俺たちが若干浮ついた気持でいるのとは対照的に、海南の空気は死んだように沈んでいる。2年連続で玉竜旗で勝ち上がって、まさに今がピーク。当然今日も優勝を目指していただろう。


 残念には思わない。お互い1勝1本で天地の差を見てきて、それでも剣道に人生をかけるに値すると思ったからこそ、強豪の門を叩いた身だ。ただ、ガッツポーズをしないのは、こういうところからなんだろうなと痛感する。


 とにかくこれで、ベスト8。

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