第36話【奴れ、いや、新入りちゃんたち】
少年老い易く学成り難し。時間経過が早い。いつの間にか学年も上がって、後輩が出来た。今年の新入生はスポ薦が6人で内部進学が0。なんというか、俺らのときは片倉がいなかったら学年で団体が組めなかったのを考えるとアレだが、しかしセレクション1位の江藤も7人に食い込む実力もなさそうだ。
頼りなさそうだが下っ端が出来た。ということは、それすなわち俺たちは先輩になったということだ。
「恵一、俺が細かいことは教えていくから」
何がどういうわけだか知らんが、柴田がやる気を見せてきた。俺としては、後輩の指導に矢野ほど自然体で強圧的になることも、新浦ほど囲いを作っていける気もしなかったので、一つコイツの手腕に任せてやろう。いや、渡りに船で助かる。
そいで俺の期待に応えて、というわけではないだろうが、柴田がいろいろ立ち回ってくれて、1年生は仕事をきちんと覚えてくれて、俺は自分のことに集中できた。
はてさて迎えた団体の関東予選。
案の定で、選抜のオーダーから新たに食い込んだやつは一人もいなかった。正オーダーはいつぞやのように倉富、柴田、新浦、外田、矢野。序盤戦は倉富と柴田が控えで、先鋒と次鋒が田中と和田という3年生だ。
それが例年通り、そして去年が例外だったと言わんばかりに、チームは無難に機能して、正オーダーになったのは準々決勝戦。そこで睦沢学園川崎を、準決勝で川和国際を片付けて、決勝戦の相手は相も変わらず南和大橘。先鋒中堅を獲って次鋒は引き分け。副将の俺も引き分けて勝負が決まった大将戦、橘の大将は去年から大将を務める柳だった。実力者である柳に対して矢野も光誠学園の大将として正面からぶつかった。
先に1本を獲ったのは柳。矢野の返しドウ狙いを読み切って、面のフェイントで矢野の手元を浮かせてからコテ。この1本を喰らったのが残り30秒もないところだったが、2本目開始直後に矢野が継ぎ脚もなく開始線からメンに跳んで五分五分に持ち込む。そのあとは両者決まり手なく引き分け。
割と今年の神奈川は、夏もインハイ予選突破だけなら問題ないように思える。その気配を察したのは俺だけではないのだろうか、徳川も目先のことについては言わず、全国を意識して試合をすることを念頭に注意をしてきた。
その後の関東大会は団体は決勝トーナメント1回戦負け。なんせ所詮インハイ予選前の前哨戦未満だと言わんばかりに、大会前日まで調整なんて微塵もなく、全身が筋肉痛になるまでメチャクチャにしごかれた。お陰で全員動きが悪く、普通に負けた。個人は矢野が気を吐いて優勝、俺はベスト8に収まる。
そして神奈川のインハイ予選で団体で優勝、個人では矢野が優勝してインハイ個人戦への切符を手に入れた。残す神奈川からの個人戦出場枠は柳が手に。
「結局、お前との同門対決は1回だけだったな」
俺が準決勝戦で柳に負けて、これで県大会でもインターハイでも矢野と対戦することはなくなった。 矢野はそこに一抹の寂しさを覚えて、というよりは、「大したことないやつだな」とでも言いたげな表情でほき捨てきた。
さて、問題のインターハイ神奈川県予選団体の部。




