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第32話【地力がちゃいますねん】

「メェ、オメーン!」


 光誠の1試合目、俺はメンの2振りで試合を終わらせてやった。


 いかん。話にならな過ぎて、アップの地稽古より意味がない。


「外田。初太刀にすっ跳ぶやつはバカだ」


 おかげで徳田にも有り難い言葉も頂戴した。


「へえ、すんませんです」


 解散後に矢野からも


「てめえ、新浦以下の考えなしかよ」


 お叱りの言葉をいただいた次第である。


 まあ、格下で慣らし運転しなくてどうするんだと、じっくり構えて調子を把握しろというのは分かります。そんなことは重々承知していたが、テンションが上がって仕方ないんだ。なんせ一場がいる。1年生大会ではお預けをくらったもんで、昂ぶりは相当なもんだ。


 ついでに、新浦は初戦は誰が相手だろうとそこそこ緊張してるので、チンタラやって1本勝ち。いや、それだけじゃない。今回こいつは大将に置かれている。というのも、あまりにもメンタルが弱すぎて、中堅でグダグダやらせるより、ショック療法で一度大将を経験させてみるというものだった。


 選抜予選でそんなことすんなよ、とも思ったが、選抜予選という大事な大会だからこそ、やらせる意味があるんだろうな。


 お陰で倉富と柴田は正選手の先鋒と次鋒にも関わらず1回戦から保険で出させられている。オーダーとしては矢野が新浦の代わりに中堅で、俺は副将のままになった。これ、ひょっとして俺も試されてんのかな。普通繰り上がりで俺が中堅、矢野は副将にするもんだろ。


「お前な、一応言っとくがわざと勝たないで新浦に試合を回す必要はないからな」


「あ、はい。いや、いいんですか?」


 章領の前に出来たら新浦が負けたら代表戦くらいのスコアに調整してやろうかと考えていた。だって下手したら全部大将戦前に決まるかもしれないぞ。


「いいんだよ。あいつの使えなさを見くびるな、大将ってだけでクルクルパーだから」


 確かにクルクルパーな試合ぶりだったが。


「だったら直接言ってあげたらいいんじゃないですか。…ってぇ!?」


 思わず声を上げたのは、矢野から強烈な肩パンをもらったから。


「それでどうにかなるんなら、とっくにやってらあ。あいつは普段あんな腰抜け野郎のくせして、俺に言われたときだけ絶対言うこと聞かねえんだよ。出来ねえんじゃなくてやろうともしねえんだ。クソが」


「そりゃまあ、なんというか、はあ」


 確かに口うるさい矢野が勝負に関わることで傍観するわけがない。俺が入学する前の1年間でいろいろあったんだろうか。


 適当にうなずいてさっさとこの場を終わらせた。というか肩が痛い。同期だったらやり返してた。まさか、こういう暴力癖で新浦を怒らせたわけと違うよな。だったら擁護できないぞ。




 新浦新浦と嘆いてはいたが、そこは名門の地力というか他校の弱さというか。楽々と準々決勝まで勝ち進んだ。

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