第六話 さらばスカンジナ地方
季節は、春から夏へ移ろうとしている。北国の初夏は、木々の若葉が青々と茂り、日射しが眩しい。
スカンジナ三領のうち、ヒーロー男爵領での新たな農作物の種植えが終り、生育も順調に育っている。秋の収穫が楽しみだ。
ノルエー男爵領の石炭と鉄鉱の鉱山開発も順調で、秋には本格的な採掘が始められるようだ。加えて、キノコともやしの栽培は、既に一部の出荷が始まっている。
フィンレー男爵領の酪農は、《ルイーズ農場》が王都で物産展を成功させたことで、領内の農業者達に酪農への転換をただしたようで、ハーベスト領から、牛の購入が相次いでいる。
乳牛ばかりでなく、肉牛もやる人が出て来たようで、今後の発展が期待できる。
そんな中、スカンジナ三領での役割を終えた俺達は、ハーベスト領に帰ることにした。
オスロの駅には、帰る俺達を見送る人々で溢れた。
「コウジ卿、なんとお礼を申しせばいいのか、ウルト共々、この御恩は生涯忘れません。」
「コウジ卿、私も同様にございます。コウジ卿が見つけてくださった鉱山で、いずれハーベスト領に恩返しさせていただきます。」
「ルイーズが大変お世話になり、その上、酪農を根付かせるためのご尽力、深く感謝致しますぞ。」
「コウジ教官、秋には収穫できた作物を送りますから、、」ウルトが涙ぐんでる。
「教官、教官と過ごした日々は、僕の宝物です。ロッドさんもほんとうにありがとう。」
「レイネ奥様、アイリスちゃん、いろいろありがとうございました。美味しいチーズができたら送りますね。」
「コウジ先生、俺達、先生からいただいた作物を何倍にも増やして、ここだけじゃなく、王国中の食糧難を無くしてみせます。」
「若奥様、教えてくださったクッキー作り。領内の若い人に伝えて、ここの伝統の菓子にしますね。」
「コウジ先生よぅ、椎茸がホダ木の種類によって味も実も変わるなんて、面白いぜっ。おらぁ、いろんなこと試して、先生が驚くようなキノコを育ててみせるぜっ。」
「コウジ先生、ここでは忙しくて大変でしたけど、帰ったら子づくり頑張ってくださいね。」
「若奥様、赤ちゃんができたら、お知らせくださいね。栄養たっぷりの粉ミルクを送りますからね。」
「コウジ先生よぉ、なめ茸とかオクラとか、ヌメリのあるもんが、あれに効くだ。いっぱい食べてがんばってくんろっ。」
なんか最後の方は、お礼の言葉じゃなくて、俺達へのエールになってるみたいだが、レイネは、真っ赤になって、うつ向いてしまうし、アイリスは、吹き出しそうにしている。
この騒ぎで、列車の発車時刻を遅れさせてしまったが、それだけでは済まなかった。
列車が駅を出ると、沿線に見送ってくれる人々が多勢いたのだ。皆、汽車に向かって、手を振っている。
そんな人々が両側にいるので、俺とレイネは左右の窓に別れて、手を振って応えたが、人影がまばらになっても、遠くにポツンといる人も、皆、この汽車に向かって、手を振って来るのだ。
それは、スカンジナ地方を出るまで続いた。
「ああ、終わってしまったわね。なんか寂しいわ。」
「皆さん良い方ばかりでしたね。とても親切にしていただきました。」
「口は悪いけど、気っ風の良い人達でしたね。酒好きなのは、弱りましたけど。」
「人はね、こちらから、好意を示せば無碍にする人はいないのさ。困っている人なら、尚さらだよ。」
「今回、スカンジナ地方の人達の、ちからになれて良かったわね。皆で、がんばったかいがあったわ。」
わずか2ヶ月程の間だったが、俺達の心に残る旅だった。
北国の生活は、厳しい。だけど、創意と工夫で豊かな暮らしを目指してほしい。




