第一話 護国卿
新章になります。
読み応えがあるように、一話、一話がんばります。
帝国軍との戦いが終わって、俺は火縄銃の回収を行った。ハーベスト家の武器庫に保管して厳重に管理した。
そして、鍛冶ギルドに作ることを厳禁した。
もし万が一にも、新兵器による武力だけを振りかざして、私利私欲に走る輩を生まないためだ。
敵となる軍がハーベスト領軍と同じ武器を使えば、数量の勝負になって、小さなハーベスト領では、かなわないからだ。
鍛冶ギルドの皆は、このハーベスト領を守るためには、絶対必要なことだと理解してくれた。
また、ボッシュにも孤児院の皆にも、《モーターグライダー》を作ることも、孤児院以外の人間に見せることも禁じた。
必ずしも平和利用だけに使われるとは限らず、人殺しの武器として使われるかも知れないと話し、戦争がない世の中になるまで、我慢するようにと話した。
王城へは釘を刺した、《火縄銃》や《モーターグライダー》を欲するならば、その集団の長以下100人の命と引き換えであると。
自分達でなにもせず、他人から力を得るなど、言語道断と言える。
ましてや、帝国に使われていれば、王国はとっくに滅んでいたことを理解しているのか。
これ以上、王城がハーベスト領に依存しようとするのであれば、ハーベスト領は独立して、別国となる。そうも付け加えた。
アレク·シルバニア王からは、次のように
な手紙が届いた。
『武器、武力となるようなハーベスト領の産品は、ハーベスト領外への持ち出しを厳禁とするよう取り計らう。
しかし、王国の領民の生活を豊かにすることのできる、ハーベスト領の産品は、積極的に知らしめ普及させてほしいと。』
また、俺に《護国卿》の地位を与え、ハーベスト領の産品を保護する権限を与えるとのこと。
ちなみに《護国卿》とは、国の防衛最高責任者であり、防衛に関しは宰相を従える権限を持っている。
まあ、妥協点かな。ただ、そのために俺が、ハーベスト領から積極的に出るようなことはしないとの条件を付けた。
護国卿の任命式には、出ない訳にはいかないので、俺はポーカー騎士団長以下の護衛を引き連れて、王城へとやって来た。
アレク国王とは、初めての謁見となる。
儀礼に則り、膝まづいてアレク国王の入場を迎えると、王から声を掛けられた。
「よくぞ引き受けくれた、コウジ卿。
帝国との戦いでは、そちの力添えでことなきを得ることができた。
これまで、なにも報いてやることができず、心苦しく思っておったところじゃ。」
「もったいないお言葉、恐縮でございます。
この度は、陛下から格別なご配慮賜り、感謝申し上げます。」
「ひとつ卿に尋ねたいのじゃが、卿はなぜハーベスト領のみにこだわるのか?
この王国全ての民のために、働いてはくれぬのか?」
「陛下、民のためには働きたいと思っております。
しかし、ハーベスト領の外の地では、私と民の間に入る者がいて、それができないのです。」
「ほう、それは貴族のことか。貴族がおると何故にできぬのか?」
「陛下、何故か、お目にかけましょう。」
「今から、陛下にお伝えすべきことを、こちらに居並ぶ皆様に、耳打ちでお伝え致します。
耳打ちされた皆様は、隣の方に耳打ちでお伝えください。そして最後に陛下へお伝えください。」
それでは、「········。」「········。」「······。」「··········。」「·····。」
「陛下、お聞きなりましたでしょうか?
私は、『陛下のお顔の色がすぐれないように見えます。何か心配事があるのでしょうか? それとも私の杞憂でしょうか。』と、申し上げました。」
「なに? 全く違うぞ。『儂がコウジ卿を心配して、ハーベスト領に格別の配慮をしたのだ。』と聞いたのだが。」
「それが答えでございます。人は各々自分の考えを持っています。
ですから、他人から聞いたことを自分なりに解釈して、自分なりの言葉で伝えます。
それ故、何人もの人を介すると、初めとは全く違う話になってしまうのでございます。
私は、このようなことが起きて、民のためにとなしたことが、逆に民を苦しめる結果となることを恐れています。
それ故に、ハーベスト領の外のことには、関わらず触れないようにしております。」
「そちの言にも一理あるか。」
「陛下、しかし、先に申し上げたとおり、決して、この王国の人々の幸せを願っていない訳ではありません。
人々の生活がより豊かなものになるよう、これからも新たな道具や方法を、ハーベスト領から発信していくつもりです。」
「そうか、それを聞いて安堵した。できれば、卿には王城において、その力量を振るってほしいと思うたが、詮無きことか。」
「おそれながら、それはいたずらに争いを招くだけで、利口な方策とは思えません。
ここにおられる貴族の方を含め、貴族としての今までのやり方を改めることは、受け入れ難いことです。
また、私のような若輩者に従うのを良しとしない方も少なくないことでしょう。
いずれは、反乱や内乱を生むことでしょう。
陛下は、それをお望みですか?」
「· · · · · · 。」
こうして、俺の謁見は終わった。
アレク国王は、まだ30才を過ぎたばかり。
わずかな時間の謁見ではあったが、俺の話したことを理解し、納得していた様子なのは、好感が持てる。
【ある貴族の視点】
帝国との戦争で、5万の帝国軍をたった二千の領地軍で破り、さらに帝都の王と貴族を城ごと葬り去ったという、ハーベスト子爵家の領主代行なるものを、その功績から護国卿に任ずるとのアレク国王の勅命に従い、任命式に列席したが、なんとまだ20代の若者ではないか。
5万の軍を二千で破るなど、まぐれなどではできない。新兵器を用いたそうだが、その兵器は秘匿するという。確かに、その兵器を手に入れた者が野望を抱かぬという保証はない。
では、王家の近衛だけに配備するとしたらどうなのだ。だめか、その兵器の秘密が漏れ、いずれ真似て作られることになりかねん。
しかし、我らの領地に手出しせぬというのは、一長一短だな。我らの権利を犯さぬ代わり、かの地の優れたものがすぐには、伝わらぬ。
それにしても言うてくれるわ。人には人それぞれの考えがあるか。確かに人の言うとおりに物事を行えば、おのれの存在価値が無くなるであろうし、才覚も発揮できぬ。
しかし、耳打ちで、上の者の命じたことが伝わらぬことを、目の前で見せるとは、恐れ入った。




