第七話 それぞれの戦い4 [レイネと孤児院の子供達]
レイネは、住むところを追われ、あてもなく逃げ惑う、女性や子供達のことを考えていた。
頼れる者がいない中、心細く不安な避難をしているに違いない。
食べ物も飲む水もなく、空腹と喉の渇きに苦しみながら、必死になって逃げていることだろう。
なんとかして、彼女らを助けてあげたい。
まだ侵略を受けていない私達にしか、助けてあげられる者は、いないのだから。
そう考えながら、教会の前を通りかかった時だった。
大勢の女性達が祈りを捧げていた。そのうちのひとりが、レイネに声をかけてきたのだ。
「レイネお嬢様、帝国に追われた人達は、無事に逃げられているのでしょうか?
きっと、心細くひもじい思いをしていると思うんです。
どうか、子爵様のお力で、その人達をお救いください。」
「そうです。私達も、なんでもお手伝い致します。どうか、お救いください。」
「みんなの気持ちは、わかったわ。避難している人達をなんとか助ける方法を、考えるから、その時は、皆の力を貸してちょうだい。」
私ひとりでは、なにもできないけれど、孤児院のみんなにも相談すれば、何か良い知恵が見つかるかも知れない。
人を思いやる気持ちが、人一倍強いあの子達なら。
孤児院の年長組には、春の聖バレンチノ誕生祭に、素敵なプレゼントが送られていた。
《モーターグライダー》男の子なら、誰でも大空を飛ぶ夢を見るだろうと、孤児達にコウジが送ったものだ。
送られたのは、ニ機の《モーターグライダー》。
上翼で視界が良く、たとえモーターが停止しても、滑空して安全に降りられる。
そのうちの一機は、コウジが完成させたものだが、もう一機は、仕組みを理解させるために、男の子達に組み立てさせたものだ。これには、年少組の何人かも加わっている。
おとな二人乗りなので、子供達だと年長組だと四人、年少組だけだと六人も乗れる。
さっそく操縦を覚えた子供達は、もう何回も飛んでベテランの域になっている。
シスターのナターシャから、帝国が侵略して来て、多くの避難民が着の身着のままで、逃げていると聞きました。
食べ物はもちろん、飲水もなくて、困っているに違いないのです。
そう聞いた時、子供達のひとりがつぶやきました。
「僕達の《グライダー》で、その人達に食べ物や飲水を届けられないだろうか?」
レイネが孤児院に着いた時、子供達は、もう、具体的にどうすればいいのかを話し合っていました。
さっそく、相談を受けたレイネは、少し考えた後、皆に言葉を選びながら話した。
「まだ子供のあなた達には、危険すぎることだと思うわ。
でも、体が軽い子供のあなた達なら、荷物をたくさん積むことができる。
危険だけど、あなた達にしか、できないことだとも思う。」
「お姉ちゃん、やらせてよ。親を亡くして、僕達のような孤児が増えるのは、嫌だ。」
「そうね、こんな時こそ、やらなくてはいけないわね。私達にしかできないことですもの。
私に皆の力を貸して頂だい。」
こうして、レイネと孤児院の子供達、そして街の女性達による《空からの救援作戦》は、他のギルドや領地軍に先駆けて、実施された。
まず、《モーターグライダー》には、パイロットの年長組一人と、荷物を撒く年少組が二人が乗り込むこととした。
空から撒く食糧は、街の女性達がサンドイッチと飲水の紙パックを一組ずつ、紙で包み、10個ずつを紙で作った《パラシュート》で撒くことにした。
《紙パック》や《パラシュート》は、もちろん、コウジさんが教えてくれたものです。
私達の計画を話したら、イチモニも無く、危険だが是非やってほしいと言われ、しかもコウジさんでも考えつかなかったよ、と褒めていただきました。
加えて、包装する紙には、『ハーベスト領で皆が待っているよ。』と書き添えてほしい、とも言われました。さすがコウジさんです。
僕の名は、シンジ。《モーターグライダー》で、避難する人に空から食べ物を届けたらどうか、と提案しました。
皆が賛成してくれて、僕が最初のパイロットになりました。
ハーベスト領を出て、最初の避難する人々を発見したのは、隣のグラント男爵領を出てまもなくでした。
人々の手前に、《パラシュート》を投下すると、最初は警戒してた様子でしたが、何人か拾うと、書いてあることを見たのでしょう。手を振ってくれました。
最初の集団は、30人くらいでしたから、引き続き次の集団を探しました。積んでいる《パラシュート》は、50個ですから、500人分のサンドイッチセットを積んでいます。
全部撒いたら、帰還して、どの位置で何人の人々に撒いたか、レイネお姉ちゃんに報告です。
レイネお姉ちゃんは、報告をまとめて、次に撒く地域を指示してくれます。
こうして僕達は、日中交代で空からの救援作戦を、その日から三週間、休みなく続けました。




