第九話 王城からの使者
初夏のある日、子爵からの呼び出しで、舘を訪れた。
要件は、金山の査察に、王城から使者がやってくることだった。金鉱を発見したあと、王城へは、報告を届けてあり、金の産出の2割を税として納めることに、決まっていたが、その報告が適正か、毎年、査察があるとのことだった。
ついては、その使者の対応を頼みたいとのこと。
数日後、使者が到着するとの先触れがあり、俺は出迎えに、加わっていた。
「ハーベスト子爵、出迎えご苦労である。」
「マルカス伯爵、お役目ご苦労様です。」
「道々、ハーベスト領の発展を目にしたが、凄まじい発展ぶりだな。」
「地震からの復興を期に、金鉱の資金をつぎ込みました。」
子爵の舘に一行を迎え、歓談が始まったが、なにやら雲行きが怪しい。
「街々を発展させるには、ただでさえ莫大な金がかかる。その金は、王城に隠れて、金鉱で産出した金を着服したものであることは、明白である。
加えて、街の発展が著し過ぎる。見たこともないような道具も多く、多くの利権も隠しておると見える。
これらは、王城に対する明らかな謀反、ただで済むとは、思うまいな。」
まるで勝ち誇ったように、そういう伯爵を見て、俺が口を出す。
「なにをもって、着服などと言われるのでしょうか? 着服とは、金品財産を隠して、私物化することだと思いますが、伯爵が道々ご覧になったものは、子爵の私物ではございません。
また、利権とは、さまざまな物作りの方法を取引にすることでしょうが、領内の全ての道具類は、私どもが直接命じて作らせたもので、どなた様にも何もお売り致してはおりません。」
「その方が、噂の代行か。無礼にもほどがあるぞ、言葉を控えよ。」
「無知な伯爵様に、わかるように説明した、つもりでしたが。
かつて、どこぞの某、ブログリュー公爵とかが、この領地に手出ししたことがありましたが、その顛末をご存知でしょうか。」
そう告げると、伯爵に剣を突きつける。
その犯人が俺と、気付いたのであろう、伯爵は、顔色を変えて、驚愕している。
ブログリュー公爵の顛末は、知っているはずだが、討伐をしたのが、俺とは知らなかったに違いない。
護衛の者達が色めき立つが、
「むしろ、伯爵様は、王城に謀反を企んでおられるようですから、王城に使者を遣わし、ことの真偽を確かめさせていただきます。」
「儂になんの謀反の嫌疑があるというのだ。なにもしておらんではないか。」
「今言われたことが、証拠です。ハーベスト子爵に横領の罪を被せて、この地を自分のものにしようとしていること。王城に隠れて、真っ当な領主を無実の罪に貶めること。
これが謀反でなくて何でしょう?」
「伯爵家の護衛の皆さんも、抵抗するなら、伯爵の謀反に加担したものとして、処罰しますよ。」
「ポーカー、伯爵を牢にぶち込み、監禁してください。それから、王城へ手紙を書きますから、使者を立ててください。」
固まっていた、その場の者達は、俺の指示に従い、慌ただしくその場を離れた。
「子爵、横領の証拠など、どこにもないのです。ましてや、領地を発展させて、王城が咎める訳がない。
もし、王城がハーベスト領の発展にけちをつけるなら、王城では、同じことができないのかと聞いてやるまでです。」
しらっとして、そういう俺を見て、呆然と立ちすくむ子爵であった。
それから間もなくして、王城から返事があった。
この度のことは、マルカス伯爵の独断で行ったことで、王城は全く関与しておらず、マルカス伯爵を、厳しく処断する、とのことであった。
ちなみに、俺の書いた手紙には、王城は、マルカス伯爵に命じ、ハーベスト領を乗っ取る考えでいるのか。そういう考えなら、正面から堂々と戦争をなされよ。
加えて、今後一切、王城には協力をしないし、ハーベスト領は、独立してやっていくから、そのおつもりで。
ついでに、おみやげに、酒の蒸留設備を使って作った、高濃度のアルコール火炎瓶を、使者にお披露目するように、指示したから、使者もその威力を知らなかったし、王城では、ひと騒ぎ起きたようだが。
王城からは、宰相のランドル宰相みずからが謝罪に訪れ、平謝りだったとか。
しかし俺は、身分が違いすぎるからと、謁見を固辞して、雲隠れしてた。
ランドル宰相は、俺が会見を避けたので、俺の怒りが解けていないのだと理解し、ひどく落胆して帰って行ったらしい。
ただ、子爵がハーベスト領は、今後も国の一員として、協力を惜しまない。と明言したので、宰相は安心したようだ。
もし、王城が攻めて来たら、開発した地雷と迫撃砲で、返り討ちにしてやろうと、準備していたが、それらは、まだ当面、秘匿することになった。
余談ではあるが、街中に雲隠れしている間、「人目に付いては、いけませんから。」と、
レイネに言われ、屋内から一歩も出られず、隠れていたのか、監禁されていたのか、判らないあり様だったことを報告しておく。




