第六話 インフラ整備
金鉱という、莫大な資金をハーベスト領に調達できた俺は、その資金を使って、街づくりを進める提案をし、ハーベスト子爵の快諾を得た。
キスカ川の少し上流に、小さなダム湖を築き、農業用水と上水道の整備を行った。
各所の農地に用水路を通し、また、飲料水用の水路と排水用の水路を、ローマンセメントで作った∪字溝で作り、街中に配した。
各家の台所には、小型の量産型の手押しポンプを設置し、トイレを水洗としたのだ。
道路の整備も併せて行い、主要道路には、ローマンセメントで舗装し、乗合馬車を設置した。運行時間は、いいかげんだが、利用客が多いので、ひっきりなしの運行となっている。
この膨大な公共事業で、ハーベスト領は、空前の好景気に沸いた。仕事を求めて、他領からも大勢の人々が流れ込んで、人口の増加も著しい。
次に着手したのは、公共施設の建築である。
学校と病院、教会に公民館。各建物の周囲には、庭園を設け、公園とした。
今回のような災害時には、避難所として役立つように、食糧や資材を備蓄する倉庫を併設した。
ちなみに、医師は他領から誘致したが、好条件に多数の応募者があったし、看護士は領民から公募して、育成することとした。
思わぬ余録もあった。教会は、もともとこの街にもあったが、人口の増加と共に、司教やシスターが増やされ、孤児院にも二人のシスターが増員配置されるとともに、ナターシャさんがこの街の教会の評議員に選ばれたのだ。
ナターシャさんは、地震の際に、救護施設の医師として大活躍したし、領民の信頼と人気も絶大であることから、選ばれたそうだが、名前が『聖シスターナターシャ』と呼ばれるようになり、俺もそう呼ぶと、顔を真っ赤にして、
「コウジ様には、ただのナターシャと呼んでください。」
と怒られてしまった。何が気に入らないのだろうか。そう言えば、ナターシャさんの年齢は、まだ、22才だとか。
落ち着いているから、もっと年上かと思っていたと言うと、さらに、猛然とおこれた。
レイネといい、わけがわからないまま、怒られることが、このごろ増えたような気がする。




