第二十八話 ギルドでの初仕事
王都出発から三日目、馬車は順調に目的地へ向かって進んでいた。
昼頃、三人は馬車を道のわきに留めて昼食を食べ、打ち合わせをする。
「この先からしばらくはモンスターに遭遇する確率が高い。万が一遭遇した場合は馬車を加速して振り切る」
ガストルはカイルとレスタへ方針を伝えると、二人は頷く。
「カイル、お前は行商人の経験どれぐらいなんだ?」
「半年以上、一年未満といったところだ」
「俺は一年ぐらいだな。経験としてはお互い差はねーってことか。まーこのギルドでは俺の方がお前より先に実績を残すんだけどな!」
「お手並み拝見させてもらおうか」
「んだよ、お前も乗って来いよ。……ところでガストルさんはギルドに所属する前は行商人してたんですか?」
「そうだね。だいたい三年ぐらい行商人やってて、それでギルドに加入した」
「ってことは俺たちよりもだいぶ経験豊富ですね!」
「まだ豊富ってほどでもないけどね」
「……レスタは何でこのギルドに加入しようと思ったんだ?」
カイルは自分が加入について迷っていたのでレスタの理由が気になった。
「自己紹介の時も軽く言ったけどよ、そりゃ、この選択肢が自分にとって一番成長できると思ったからだ。お前はどうなんだよ?」
「同じような理由だ」
「んだよ、理由まで同じってか。つまんねーな」
「君たちは志が高いね」
「ガストルさんはどういった目的で加入したんですか?」
カイルが尋ねた。
「私にはもう君たちのような熱意はないよ。目的……そうだな適度にギルドの仕事をして生活できたらそれでいいかな」
話に区切りがつき、休憩を済ませると三人はそれぞれの馬車に乗り、目的地へ向かう。
三人は周囲を警戒しながら進む。
周囲は森にはなっていないが背の高い草花が生い茂っているため、隠れやすい地形になっている。
しばらく進むとガストルは草むらに潜む何かしらの影を捉え、周囲の異変に気付く。
彼は右手を挙げる。
事前の打ち合わせ通り馬車を加速させるという合図だ。
カイルとレスタは合図を確認し馬車を加速させた。
それに合わせ草むらに潜む影も連動して動くが、馬車のスピードにはついてこれない。
カイルも自分の馬車が、草むらに潜む影を追い越すのを確認した。
数秒後に後ろを振り返ると草がザザッと動いているので、まだ追ってきているのは分かったがだいぶ距離を離していた。
(なんとか振り切れるな)
ガコン! ガガガガザー!
(なんだ?)
カイルは大きな音が鳴った方向へ顔を向けた。
正面を向くと、ガストルの馬車は停止しており、レスタも止まろうとしてた。
レスタの馬車にぶつからないよう慌てて速度を落とし、停止させようとする。
ガストルが操る馬車の荷台に視線を向けると、四つ付いている車輪のうち右後方が外れているのを確認した。
(車輪が外れて馬車を止めたか。追いかけられている状況ではまずいな)
追手と馬車との距離がどんどん縮まってくる。
「カイル、レスタ時間を稼いでくれ! その間に車輪を修理する」
ガストルが自身より後方にいる二人に声がはっきり届く程度の大声で指示を出す。
「だってよ。俺一人で片付けてやるから、一緒に車輪直しててもいいんだぜ」
「残念だが、修理について詳しくないんだ」
草むらから馬車を追っていた者たちがカイルたちの前へ姿を現す。
ショートソードやこん棒で武装したゴブリンの集団だ。
「数は12体か」
「おー、これは結構な団体さんじゃねーか。おい、カイル! 俺の手柄横取りすんじゃねーぞ」
レスタはゴブリンの集団へ駆け込んでいき、最も近い相手へ手持ちのダガーで一撃を加える。
斬撃を食らったゴブリンはそのまま崩れ落ちた。
商人の動きではないと感じた。
もっともカイルも他の商人から見ると同じように思われるだろう。
レスタ一人で集団に突撃していったのでカイルから少し距離が離れていた。
彼は優勢に戦い、すでに数匹のゴブリンたちが倒されている。
しかし、相手も数が多いのでレスタは囲まれようとしていた。
カイルも応戦しようと駆け出し、レスタに斬りかかろうとするゴブリンの腹へダガーを突き刺す。
「手柄横取りしてすまんな」
「ふん! お前もボウズはかわいそうだから、一、二匹ぐらいならいいぜ」
それから二人が応戦した後、周囲には八匹のゴブリンが倒されていた。
ゴブリンの知能は高くないが、自分たちが不利になると一斉に逃げだす傾向がある。
残ったゴブリンたちは馬車から遠ざかる方向へ逃げた。
「よし! 直った!」
ガストルが車輪を修復し終えたことを告げる。
「こっちも終わりました!」
レスタが返事をする。
「ん? 全部倒したのかい?」
「全部ではないですが、おおむね。残りのは逃げて行きました」
「逃げるまでの時間稼ぎができれば十分と思っていたけど、まさかほとんど倒してしまうなんてね」
「まー所詮ゴブリンですからね」
レスタが得意げに話す。
ガストルの積荷に大きな破損が無いことを確認して三台の馬車は目的地までの道を進む。
夜は全て野宿で過ごした。
全て野宿にすることで宿代を浮かせることができる。
数日分、三人の宿泊費だけでもかなりの経費だ。
だが野宿なら、三人いることで一人が就寝中でも護衛態勢が組める。
カイル、レスタ共に戦闘の心得があるので、傭兵を雇う必要もない。
その分、無駄な経費がかからないので、顧客がギルドへ支払う料金を抑えることができる。
ギルド マグロックが依頼先として選ばれる魅力の一つである。
――無事に目的地に着いた三人は積荷の積み下ろし作業を行っていた。
「よし、これで全部だね」
「はい」
カイルはガストルに返事をする。
三人は作業が完了すると依頼先から代金を受取り王都への帰路につく。




