第二十七話 少女と買い物
二日後の昼過ぎ、王都を散策しているとアイリスが歩いてくるのが見えた。
アイリスもカイルに気が付いて手を振り近づいてくる。
「こんなところで会うなんて偶然だね」
「そうだな。今日は家の手伝いは休みか?」
「うん。カイルは仕事中?」
「仕事は休みにして今日は王都を散策してる」
「それなら私も少し一緒に付いていってもいい?」
「構わない」
二人は会話をしながら王都を散策し空いているベンチを見つけると、そこへ座った。
「王都には少し慣れた?」
「そうだな。主要な道はだいぶ慣れた。アイリスの店へも地図を見なくて行けるぐらいにはな」
「おー!」
「商人は道に迷うと大きな損失になることもあるので気を付けているんだ。それと実は先日と合わせて二回行っている」
食品など劣化する品目は、それも計算に入れて行動しなければならない。
迷ったりして予定が狂い売り物にならなければ全て破棄することになってしまうので細心の注意を払う必要がある。
「そうなんだ。私が留守の時だよね?」
「そうだな。店が閉店する頃合いに訪問した」
「お母さんもお父さんカイルが来たこと何も教えてくれなかったんだから」
カイル自身で報告すると伝えていたので、両親は訪問したことも黙っておいてくれたのだと思った。
「そうだ! アイリスに重要な報告があるんだ」
「なにかな?」
アイリスはカイルの顔を見つめて次の言葉を待った。
「ギルドに加入することにした」
「そうなんだ、おめでとう! でも行商人を続けたいって言ってたのにいいの?」
「考えた結果、今はこの経験が役に立つと思った」
「しばらくは王都にいるんだね?」
「そういうことになる」
「私も依頼しちゃおっかなー」
「何を依頼するんだ?」
「さーなんでしょーねー、ふふ」
アイリスは嬉しそうに答えるとベンチから立ち上がる。
「そうだカイル、この近くで買い物しようと思ってたから一緒に行こ」
その後、雑貨や服を取り扱っている店舗を見て回った。
(王都は本当に色んな店があるな。今度こういうものも仕入れて他国で売ってみるか)
「どうしたのカイル? 考え事して」
いつの間にかアイリスが何かを思考しているカイルの顔を見ていた。
「なんでもない。ちょっと仕事のことを考えてただけだ」
「今日はカイルもお休みなんだから、ゆっくり羽を伸ばそうよ。この服可愛い? 似合う?」
そう言いながら購入候補の服を自身の上半身に当てて、それをカイルに見せる。
「わかった、わかった……うーん、可愛いし似合うんじゃないかな?」
じー
「ちゃんと見て考えてるー?」
アイリスは訝しんだ表情でカイルを見る。
「厳しいなー」
「厳しいのですよ! 仕方ありませんねー。今日はこれで勘弁してあげましょう。……ふふ」
妙にかしこまった言い方をして最後に笑顔で微笑んだ。
そのまま手に持っている服を購入し、その後いくつかの店舗でも服を購入した。
「今日もありがとうね。買い物に付き合ってくれて」
「俺も気分転換ができてよかった」
「ギルドの仕事頑張ってね!」
「あぁ。頑張るよ、ありがとう」
――ギルドでの初仕事当日。
「早速仕事だ……わかっているとは思うがいきなり大きな仕事は任せられねえ」
「はい、わかっています」
「そこでだ。カイルには仕事に慣れてもらうため、まずは運搬依頼をこなしてもらう。念のため聞くが行商人だから経験はあるよな?」
「はい、大丈夫です」
「なら説明は省く。指定の積荷を馬車三台で運んでくれ」
「わかりましたが、馬車三台で同時に運搬した経験はありません」
「今回はカイルの他にも二人ギルドメンバーがいる。三人で協力して取り組んでくれ。後で他のメンバーも紹介するからよ」
「わかりました」
カイルは積荷と目的地、運搬ルートについてマグロックから説明を受けた。
「……といった依頼だ。じゃー、これから他のメンバーを紹介するからついてきてくれ」
カイルはマグロックと一緒に別の部屋へ移動する。
扉を開けると二人の男性がいた。
部屋にいた二人はカイルとマグロックが入ってきたのを確認すると会話を中断する。
「それじゃ、今回の依頼に取り組むメンバーが揃ったんで各々軽く自己紹介してくれ」
二人の男のうち一人は見覚えがある。レスタだ。
「レスタです。先日まで行商人をやっていました。大きい仕事をしたくてこのギルドに入りました」
先日のカイルとの会話とは異なり、丁寧に話す。
「一年先輩のガストルです。よろしくお願いします」
二人の自己紹介が終わり、カイルも続けて行った。
「本来は当ギルドに所属するメンバー全員の前で新規メンバーを紹介するつもりだったんだが、タイミングが合わなくてな。この依頼が終わってから改めて紹介する。では皆よろしく頼む」
マグロックが発言すると部屋から出て行き、カイル、レスタ、ガストルの三人が部屋に残った。
「なんだよ。さっそくお前と一緒の仕事かよ……」
レスタがカイルに聞こえるよう不満そうにつぶやいた。
「さっ、じゃーさっそく仕事の準備を始めるよ」
ガストルがカイルとレスタに合図をする。
王都ロムヘイムスから目的地へは約一週間かかる。
各々は積荷の確認をすると、馬にまたがった。
ガストルの馬車を先頭にして、レスタが続き、その後ろにカイルが続く。
今回の依頼はEランク相当だ。
相当というのは、本来ランクは依頼受付所が決めるものだからである。
ギルドへは依頼受付所からでなく、個人や組織から直接くるものも多い。
そういったものはランクが明示されておらず、どのランクに相当するかは依頼内容を確認してギルド側で判断する。




