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24 戦意喪失



 突然の閃光に、恋慕は目を覆った。

 何が起きたのかわからず、

 咄嗟にバリアを張り、身を守る。

 光が止む頃、

 恋慕はゆっくり眼を開いた。



 目前には禍々しいドラゴンの顔があった。


 恋慕が一口で収まってしまうような巨大なアギト、ギラギラとした目玉。


 ぶうぅぅっと湿っぽい風が恋慕を通り抜ける。ドラゴンの呼吸だ。



 まさか――――、



「おにい……ちゃん?」

「GUUUUUUOOOOOOOOO!!」

「ひっ!」


 空気が震えるほどの怒声が恋慕の体をびりびりと震わせる。

 野生の本能を剥き出しに、ドラゴンは小さな獲物……恋慕に食らい付いた。




 ゴッ!!



 ドラゴンの背中を、

 同スケールの巨人が襲う。

 巨大ゴーレムだ。

 倒壊した建物を材料に作ったのか。



「下層人がァ!! なめやがってッ!!」



 見えないが、

 ゴーレムの頭上でネイギーが吠えた。

 怒りを露わにし、ドラゴンはゴーレムに反撃をはじめる。




 暴れる二体の巨獣を前にしながら、



 恋慕は逃げなかった。



 いや、逃げることが出来なかった。



 命の危機が麻痺してしまうほどの喪失感に心を奪われてしまっていたからだ。



 やっぱり、あのドラゴンは敦なのだ。

 プロセスはわからないが、

 彼は再び変身したのだ。

 友好の欠片もない雄叫びと、

 どう猛な本能。

 あの目は恋慕を餌としか見ていなかった。



〝首輪の外れたドラゴン〟だ。

 ……敦は自分を保てなかった。




 やさしかった、兄と慕ったあの人は……恋慕を護るために、わけのわからない怪物に変わってしまった。



 目の前にラブラが現れる。



 魔術を一撃……それがなんなのかわからずに恋慕は転がった。だがもう立ち上がれなかった。立ち上がる意味を見いだせなかった。



 そのときになってようやくわかった。

 恋慕は次元捜査官として戦っていたのではない。いつしか、ただ一人の兄のために戦っていたのだ。



 それを失ったと悟った瞬間、

 恋慕の体から力が一気に抜けていった。



「どうした捜査官。立たなければ死ぬぞ」



 ラブラが剣を構えてやってくる。




 ああ……好きにして。


 体は痛いし、頭ももう回らない。


 殴られたり、

 蹴られたり、

 ぼろぼろになりながら、

 護りたいものも護れずに



 ……馬鹿らしい。



 もういい。

 あんまり長いこと生きてはいないけど、いろいろあったし、よく頑張った。

 さっさと楽にしてくれ。



「お得意のはねっかえりも無しか。

 少々寂しいな」



 だんだん意識がもうろうとしてきた。



 眠い。……寝たまま死ねるならその方が楽かも知れない。




 恋慕はゆっくりまぶたを閉じた。

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