ガドウVS最強の魔王2
遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m
また、今話かなり短めです。
瞬間、地面が爆ぜた。エビル・グランツェもといグランが地面を蹴ったのだ。
グランは目にも留まらぬ速度で俺へと肉薄して来る。
「ぐおっ……!」
先程までとは比べ物にならない重さの一撃に一瞬苦悶の声をあげるも、なんとかふんばってグランを弾き飛ばす。
「まだまだだよ!」
弾き飛ばされたグランは、地面に足が着くと同時に再び肉薄して来た。しかし今度は真正面からでは無く背後に回り込んでの攻撃を、だ。
「うわっ⁉︎」
だが今度の奴の動きは成長した超思考で認識能力を10万倍まで引き上げていた事で問題無く認識する事が出来た。そのついでに背後に回り込んだグランに振り向く事なく竜神刀を振るうが、俺に動きを把握されている事に気付いたグランは、咄嗟にしゃがみ込んで俺の攻撃を回避した。
「驚いた……まさか動きが捉えられているなんてね……」
グランは俺の攻撃を回避した後、バックステップで大きく距離を取りそう言った。だがそこで俺はある疑問を感じた。
(驚いただと?それに超思考を発動しているとはいえエビル・グランツェ程の相手の動きが見えた……?)
俺はグランから意識を離さず思考する。
(何かおかしい……そもそも最強の魔王と呼ばれているエビル・グランツェ相手に俺がここまで戦えるものなのか……?)
そう、アクウェリウムのギルドで篭った資料室にあった文献ではエビル・グランツェは、戦争に参加していれば戦況は大きく変わっていたと言われる程の化け物であった。しかし今俺が戦っているエビル・グランツェにはそこまで言われるような脅威を感じ無い。
幾ら異常な成長速度であると自負している俺であっても、たった数年生きただけの子供が何千年何万年と生きている存在にここまで食らいつけるとは流石に思えない。
「お前……本当に最強の魔王エビル・グランツェなのか……?」
そう思った俺は離れたところにいるグランに思わずそう問いかけた。
「ん?何か言ったかい?」
だが返って来た答えは簡素なものであった。いや、そもそも本当に聴こえていないのかもしれない。だが少なくとまその反応からは何も読み取る事が出来無かった。
「いや、何でも無い……続きと行こうか」
気にはなるが一先ず今は戦いに集中しよう。もしこのエビル・グランツェが偽物であったとしても今の俺より格上な事には違い無い。あれこれと考えるのはこの脅威を退けてからだ。
俺は縮地を使いグランへと迫る。だがグランもきちんとそれに反応してカウンターの要領で俺に拳を突き出して来る。
俺はそれを片手で払い、拳を突き出した事で空いている胴体目掛けてもう片方の手に持った竜神刀を振るう。
「ガハッ⁉︎」
だが攻撃を喰らったのは俺の方だ。
竜神刀を振るった先にグランの姿は無く、それに同様した一瞬の隙に背後から重い蹴りを喰らった。
「ゲホッゲホッ!」
口から血が溢れる。肋骨も数本折れてしまっただろう。
「凄いね、完全に虚をついたと思ったのに咄嗟に全身に魔力を纏う事で僕の一撃をガードするとはね」
グランは変わらず笑顔のまま俺を見ている。
「ゲホッ、今、のは、影移動、か?」
苦しい。息がし辛い。傷は自動再生で回復しても呼吸機能までは回復しない。
俺は息がし辛いのを我慢してよろよろと立ち上がる。
今の一撃にはトウテツの一撃並みの威力があったことだろう。進化前の俺なら攻撃を喰らった部位は吹き飛んでいた。
(だがやはり弱いな……このエビル・グランツェは……奴が文献通りの化け物だとしたら今の一撃で俺は死んでるはずだ)
俺は直ぐさま立ち上がり、一瞬でアイテムポーチから取り出したシュヴァルツ・ヴァイスを雷の如き速度で放った。
しかしグランはその全てを片手で掴み、こんな物何でもないとばかりに消滅させた。
「ちょっとは本気出すって言ったでしょ?まだまだこんなもんじゃないよ?」
その直後背中にゾワッと嫌な気配が走った。咄嗟に空力を使って空へと逃れると、一瞬前まで自分が存在していた場所に目をやり、視界の端に映った何かの正体を探る。
それは黒い靄のようなものであった。
(あれは喰らったらやばいな……)
その黒い靄は数秒そこに留まると、何事もなかったかのように消えて行った。しかし何事も無かったかのように消えて行ったのは黒い靄だけであり、それが存在していた場所はとても悲惨な状態であった。
「腐食に、死滅……なんつー危ない事をしやがる……」
黒い靄があった場所の草木は枯れ果て、土は黒く変色していた。
「アハハハッ、一目で僕の使った技の正体に気付くなんて、やっぱり君は最高に面白いねガドウ」
「そう言うのは魔王同士でやってて貰いたいんだけどな……」
俺のぼやきはスルーされ、グランは翼を広げて空にいる俺へと迫って来る。
「まったく……どうして俺はこうも化け物達に遭遇しちまうのかね……」
直後グランは急加速して俺の心臓目掛けて手を突き出して来る。それを竜神刀で弾き、お返しとばかりに蹴りを繰り出す。
グランはそれを同じような蹴りで相殺させ、お互いその衝撃を利用して距離を取る。
(一先ずこのエビル・グランツェの正体は置いておくか……そもそも考え事しながら戦える相手じゃないからなこいつも……)
「さぁガドウ!もっと楽しもうよ!」
空中での第3ラウンドが始まった。