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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
二章 進出、人類領域
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ガドウVS最強の魔王

戦いになってはならない。そんな事を考えていた筈なのに状況は最悪の方へ転じてしまった。


「アハハハッ!いいね!君の本気見せて貰うよ!」


目の前の少年はそう言って無邪気に笑う。だがその姿に油断するべからず。

相手は最強の魔王と呼ばれる存在、エビル・グランツェだ。一瞬の油断が命取りとなる。


「正直、あんたとは戦いたく無いんだけどな……まぁなってしまったのは仕方無いし、こちらも死にたく無いから全力で抵抗させて貰うぞ」


そう言って竜神刀をエビル・グランツェに向ける。そこで俺はある事に気付いた。


(ん?竜神刀の色が変わっている?)


そう、竜神刀の色が変わっていたのだ。

俺が混沌竜(カオスドラゴン)の時は漆黒の刀身に赤黒い柄の禍々しい刀だったが、今の竜神刀は当初の竜神刀以上の白銀をした刀身に僅かな汚れも知らないような純白の柄をした神々しい刀となっていた。


(感じる圧力も以前の比じゃないし、内包される魔力も以前までとは桁違いだ……)


そして何より手に馴染む。

以前までの竜神刀も十分手に馴染んでいたが、今の竜神刀は最早身体の一部と言っても差し支え無い程の馴染み具合をしている。


(これなら少しはまともにやりあえるな……)


俺は改めて未だにニコニコと笑っているエビル・グランツェを睨み付ける。


「うん?なんか雰囲気変わったね?楽しめそうになったよ」


エビル・グランツェはそんな俺の心情の変化をしっかりと読み取り、笑顔ではあるものの油断無い瞳でこちらを伺って来る。


「はっ!」


取り敢えず牽制の意味合いを込めて刀を振り抜き、その衝撃をエビル・グランツェへと飛ばして攻撃を仕掛けるが、予想通りエビル・グランツェはこんな物なんとも無いとばかりに片手で払い除けた。だがそれは先述通り予想出来ていた事なので、それに対する俺の対応も速かった。


「む?」


エビル・グランツェは咄嗟に前へと大きくステップし、そのまま魔力弾を自分がさっきまでいた所に向けて放った。


「おらっ!」


そこには俺の姿が有り、自分目掛けて飛んで来た魔力弾を竜神刀を使って弾き返した。


「むん!」


弾き返した魔力弾は威力はそのままにエビル・グランツェへ向かって飛んで行くが、エビル・グランツェはその魔力弾を腕力のみで弾き飛ばした。

弾き飛ばされた魔力弾は近くにあった大きな岩へとぶつかり、岩をばらばらに崩壊させて消えて行った。


「驚いたよ。今のは影移動かい?確か僕のペットと戦っていた時も使っていたね」


「はっ!全く驚いたようには見えないけどな!」


俺は火魔法で大量に作った火の玉を一つに纏め、大空へ向けて放った。

何百個もの火の玉を一つに纏めたそれは全長300メートルはあるだろうか。

最早小さな太陽と言っても差し支え無い程に成長したそれはエビル・グランツェへ向けて一気に落下して行った。


「この程度で僕にダメージを与えられるとでも?」


確かに纏めた事により巨大化したとは言え、この攻撃だけじゃエビル・グランツェにダメージは与えられ無いだろう。だがそんな事魔法を放った俺が一番分かっている。


「確かにこれだけじゃダメージを与える何て無理だ。だがこうすれば?」


俺は縮地で一気にエビル・グランツェとの距離を詰め、竜神刀を構えた。しかしエビル・グランツェもこれにはきっちり対応して来くる。

だが俺は奴の抜手が俺を捉える瞬間、タイミングを合わせて瞬身を発動させ、一瞬にしてエビル・グランツェの背後に回る。


「ーー⁉︎」


流石のエビル・グランツェもこれには驚き、一瞬俺を見失った。

それは本当に一瞬であったが、俺にはその一瞬があれば十分だ。


「おらぁ!」


魔力纏換で嵐魔法を纏い、背後からエビル・グランツェの背中を斬りつける。だがエビル・グランツェはこれにギリギリのタイミングで反応し、背中から生える漆黒の翼で俺の竜神刀をガードした。

幾ら強くなった竜神刀とは言え、最強の魔王の魔力により強化された翼を斬り落とすには至らず、嵐魔法で強化されている一撃でも深い傷を付ける程度で終わってしまった。なので俺はその傷に追い打ちを掛けるべく追撃を仕掛けた。


「ぐっ……これは毒かな?」


そう、俺が使ったのはヒュドラを喰らった際に獲得した毒生成だ。

毒生成を使ったのは初めてだったが、使い方だけはきちんと把握していたので何とか実戦で使い物になった。その証拠にエビル・グランツェの表情は苦しそうだ。


「しかも丁寧に君の魔力を練り込んで無効化し辛くしてるね……だけど甘いよ!」


だが相手は最強の魔王エビル・グランツェ。その苦しそうな表情も一瞬で元に戻り、俺が付けた傷も既に塞がれていた。恐らく毒は無効化され、傷も高速治癒に準じる何かによって回復されたのだろう。


「即死毒を作ったつもりだったんだがな……流石は最強の魔王って言われるだけあるな」


「いやいや、正直僕の方が驚いているよ。油断していたとは言えまさか君に先に傷を付けられるなんてね。しかもご丁寧に魔法を纏いながら毒まで仕込んで来るんだもん。驚いたよ」


エビル・グランツェはとても楽しそうにそう言いのける。


「そうか、ならもっと驚かせてやるよ」


そう言って俺は上を指差す。


「なっーー⁉︎」


エビル・グランツェはそれに釣られるように上を向き、今度こそ声を上げて驚愕を表す。


「さて、この魔法はあんたに通じるかな?」


そこにあったのは小さな拳程度の大きさの火の玉。しかしその小さな火の玉に含まれる魔力が尋常じゃなかった。


「ばーん」


俺の声と同時にその火の玉は轟音を立てて弾け、天を穿つが如き勢いで空も大地も覆い尽くした。


俺が行った行動は至って単純だ。最初に浮かべた何百個もの火の玉を纏めた小さな太陽を更に圧縮して小さくさせたのだ。

勿論普通にやっていたら間違いなくエビル・グランツェに気付かれて無効化させられていただろうが、それを回避すべく俺が自らエビル・グランツェに傷を与えに動いたのだ。

そして狙い通りエビル・グランツェの意識は俺に向き、その隙に圧縮した小さな太陽を一気にエビル・グランツェ向けて落としたのだ。

その際小さな太陽の落下に合わせて嵐魔法を発動させて威力補正と形を整えると言う行動を行ったのだが、まさか俺もここまでの威力を出せるとは思っていなかったが、これには恐らく俺が新たに獲得したパッシブスキル「魔力の泉」が関わっているのだろう。


魔力の泉はパッシブスキルであるため、神魔眼で能力の解析をする事が出来ない。だがこれを獲得してから幾ら魔力を使っても全然減った感じがしないのだ。


(いや、恐らく消耗はしているんだろう。だがその消耗する魔力を遥かに上回る速度で魔力が回復しているって事なんだろうな……)


その証拠に小さな太陽ーー『太陽嵐(ストーム・サン)』ーーで減った魔力も既に完全に回復している。魔力があればそれだけで魔法を連発出来るし、一撃の威力を大幅に上げる事も出来る。


「これで倒せないまでも重傷を負わせられれば逃げる事が可能なんだが……」


「アハハハハハハハハハハハッ‼︎面白い!面白いよ!ほんっとうに最高だよ君!」


「まぁそう上手くは行かないよなぁ……」


太陽嵐(ストーム・サン)』の余韻が残る中、あの化け物の声が天から響き渡った。


「おいおい、結構強力な攻撃だと思ったんだがな」


そこに居たのは服こそボロボロになっているものの、肉体的には無傷なエビル・グランツェであった。


「いやーまさかここまでやられるとは思って無かったよ。君、本当に強いね。名前聞いても?」


「……ガドウだ」


エビル・グランツェが何時も通りの無邪気な笑顔で名前を聞いてきたので、渋々ながらも答える事にした。

父さんから貰った大事な名前はそれが例え敵であろうと知っていて欲しいのだ。


「ふむふむ、ガドウね。覚えたよ。じゃあガドウ、僕の事はグランって呼んでよ」


「……分かった。で?まだ続けるのかよグラン」


「当然♪」


愛称で呼ばれて嬉しそうな表情をするエビル・グランツェーーグラン。どうやらまだ逃げる事は出来無いらしい。


「ガドウ、君との戦いは本当に面白いよ!だから僕も少しだけ全力を出してあげる♪」


全力を出す。今の俺には死刑宣告にしか聞こえ無い。


(だがここで引くわけにもいかないよなぁ……)


例え逃げても間違いなくグランは追い付いて来る。ならせめてここで戦って満足して帰って貰うしかない。


この場は『太陽嵐(ストーム・サン)』で地面は融解し、周囲の温度は急上昇している。しかし俺の額や背中から流れる汗は変わらず冷たいままだ。


「正直、全力を出すのは遠慮して頂きたいのだが……無理だよな……」


「うん♪」


俺と最強の魔王の戦いはまだ続く。

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