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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
二章 進出、人類領域
21/55

VSトウテツ

「……来たか……」


俺はゆっくりと立ち上がり、無限廻廊の通路の奥を睨み付ける。そこからは抑える事など出来ない程濃密な威圧感が大瀑布の如く押し寄せて来ており、それに伴い何か巨大な生物が歩いているかのようなズシンズシンと言う音も聞こえて来る。いや、事実巨大な生物が歩いて来ているのだろう。やがてそれは現れた。


「おいおい、こりゃあ洒落にならないぞ……」


現れたのは見るからに硬そうな皮膚を持つ獅子とサイを足したような四足歩行をした生物。頭には天を穿つかのような捩れた角が二本生えている。

その双眸は血のような赤色をしており、こちらをギロリと睨み付けて決して逃さないと言わんばかりに輝いている。


「グオオオオオン‼︎」


その生物は俺を視認するとわ唐突に咆哮を上げた。それだけで大気が悲鳴を上げるかのように揺れ、それ自体が攻撃かのように押し寄せて来る。


「ぐっ、う……!」


俺はそれを竜覇気を全力で纏う事で何とかやり過ごし、咄嗟に神魔眼で目の前の化け物の正体を鑑定する。


ーーーーーーーーーー

トウテツ・・・悪魔型。普段は魔族領に生息しているが、一度人類領に現れれば人類に多大な被害を撒き散らす。硬い皮膚で殆どの攻撃を受け止め、逆にその硬さを利用した反撃を行って来る。また、見た目によらず驚異的なスピードを持っており、攻撃を当てるのも難しい。Over級。

ーーーーーーーーーー


「なっ、Over級だと!?」


俺の神魔眼は統合された際に相手の能力を正しく解析出来るようになった。そこに熟練度云々は最早関係しないほどに。

だがそうであるからこそこの解析結果に表示された級に絶望を抱かざる得ない。


Over級とは、冒険者ギルドで言う特Aランク以上の冒険者を指す時の名称と同じようなものだが、こちらのトウテツのような魔物を指す場合、今の俺では測る事が出来ない生物に対して現れる表示である。

かつての熟練度が低い状態の完全解析ではこのOver級の生物は全て特SSS級として表示されていたので、神魔眼に統合された事にで、より確かな情報を視れるようになったと言うのが分かるだろう。感覚としては自分より5つくらい格が上の相手の場合にこれが現れる。それ以外の場合は特S+とか特SSS+とかで表示されるのだが、今は関係無いので説明ははしょっておく。


「俺と言う個体の今の級は大体特SSランク程度……つまりこいつは少なくとも特SSS+級を軽く超えてるって事か……予想はしていたが、やっぱり直接実力差を見せ付けられるときついな……」


俺の呟きに反応するかのようなタイミングでトウテツの角に魔力が収束されて行き、次の瞬間にはそこから挨拶代わりだと言うかのように青白い雷が放たれた。


(早い!?)


普通の雷程度なら特に問題無く躱せる俺だが、トウテツから放たれた雷は普通の雷の何倍も早い。

俺は咄嗟に身を地面に倒すようにして回避すると、先程まで俺の頭があった場所を巨大な魔力を含んだ雷が通り過ぎた。


(あれは喰らった一撃で終わりだな……)


俺はすぐに立ち上がり、雷を放った事によよってか、硬直しているトウテツの元まで縮地で近付き、竜神刀に嵐魔法を纏わせて勢いに乗せて斬りつける。


「ぐっ、かってぇ……」


だがそんな攻撃など効くものかとばかりに俺の振るった剣はトウテツの硬い皮膚に弾かれる。

トウテツは攻撃が弾かれた事により一瞬、動きの止まった俺目掛けてタックルを繰り出して来る。

俺はそれを瞬身を使う事により何とか回避し、痺れの収まった手で再びトウテツを斬り付ける。ただし今度竜神刀に纏わせているのは嵐魔法では無く混沌魔法。


「これならどうだ!」


トウテツは本能でこれは危ないと悟ったのか、その巨体からは想像も出来無い速度でバックステップを行い、俺の攻撃を回避する。


俺の攻撃は空を切り、そのまま地面を深く抉るだけに終わるが、僅かに掠めたトウテツの角の先を斬り飛ばす事に成功する。


「よし、これならトウテツにダメージを与えられるな!」


俺の攻撃はトウテツに通じると言う事は分かった。ならばここからは攻勢に出る!

俺は混沌魔法を纏わせた竜神刀を構え、トウテツの影に向かって影移動を行う。そして完全に無防備な背中に向けて竜神刀を振り下ろす。


「グルァ!?」


振り下ろした竜神刀は少しの抵抗など無意味とばかりに大きく背中を斬り裂き、纏った混沌魔法がその場所を大きく消滅させる。

いきなり意識から外していた場所に大ダメージを受けたトウテツは悲鳴を上げ、暴れながら尻尾を俺のいる場所に叩き付けて来た。


「がぁっ!?」


暴れるトウテツの上にいた俺にそれを避ける為に行動する余裕は無く、トウテツの尻尾による攻撃の直撃を受けて吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。


「はぁ、はぁ、マジかよ……」


吹き飛ばされた俺の身体はボロボロであり、直撃を受けた左半身は装備ごと無残に吹き飛ばされて周囲を血で染める。


「カハッ!はぁ、はぁ、冗談じゃない。なんだよこの攻撃力……。俺は子供とは言え混沌竜(カオスドラゴン)の魔人だぞ……」


そんな俺の半身を無造作に振るった尻尾で吹き飛ばしやがった。こいつの攻撃の直撃を受けたらまずい。当たりどころによっては一撃原型も残らず消し飛ばされてしまう。


俺は血を吐きながらも立ち上がり追撃に備える。身体の方は既に「自動再生(オートリバース)」で回復仕切っている。それにありがたい事にこのスキルは身に付けている装備にも効果を齎し、俺の半身と共に吹き飛んでしまっていたナイトメアコートと宵闇の服をも元通りにしてくれた。もし生き残れたらこの自動再生(オートリバース)と言うスキルの効果を詳しく検証してみたいところだ。

見ると、トウテツの方も俺が攻撃した背中部分の再生を終わらせ、怒りに満ちた目で俺を睨み付けて来る。その威圧感は竜覇気を纏っているのにも関わらず意識が持って行かれそうになる程重く、濃密なものであった。


「くぅ、これは辛いな……」


俺はトウテツの放つプレッシャーを真正面から受け、竜神刀を握る手に力を込める。


「グルァァァァァ‼︎」


トウテツが俺目掛けて高速で突進して来る。俺はそれを全速力の空力で空へ逃れる事で回避し、そのままパッシブスキルの全域移動を活かした立体的な動きでトウテツを撹乱し、隙を見付けては攻撃をしかける。だがトウテツも馬鹿では無い。俺の攻撃の一つ一つを的確に躱し、俺同様隙を見付けては攻撃に転じる。

俺の攻撃は当たっても確実に仕留める事は出来無い。しかしトウテツは一撃でも当てれば俺に致命傷を負わせられる。ここに来てジリジリと自力の差が現れ始めて来た。


俺の方が手数が多く、回避能力も高い。それでも全ての攻撃がトウテツに当たるわけでは無く、何よりトウテツの攻撃の全てを回避する事は出来無い。もう何度体を吹き飛ばされたかも分からない。部位を吹き飛ばされる度に自動再生(オートリバース)で再生しているのだが、それでもこのままだと負けるのは間違い無く俺だ。


「くそっ、せめて俺にもトウテツ並みの体躯があれば……」


そうすればトウテツと攻撃を打ち合ってもそう簡単には負け無いのに……いや、まてよ?さっき俺は何て言った?俺の種族は混沌竜(カオスドラゴン)だと言ったんじゃないか?


「は、ははっ、そうだそう言えば俺は人間じゃ無かったんだな」


今までは戦い易いと言う理由で人間形態で戦って来たが、その所為で戦闘中は俺が魔人だと言う事を忘れていた。


(皮肉なもんだ。以前はあれほど毛嫌いしていた魔人の姿が今や普段の俺なんだからな)


俺は自嘲気味に笑いながら、魔人へと進化した時からの付き合いであるスキル「竜化」を行う。


「GYAOOOO‼︎」


人の姿を捨て本来の姿になった俺は気合を入れるために特大の咆哮を上げる。


「グルァァァァァ‼︎」


それに対してトウテツも対抗するかのように咆哮を上げ、ぶつかり合った両者の咆哮で大気が大きく振動する。


(幾ら同じ体躯になったと言えど俺とトウテツでは種族的に圧倒的差があるのには変わらない。なら勝負は短期決戦!)


俺は今まで使う事の無かった切り札を発動させるべく大きくトウテツから距離を取る。


「行くぜトウテツ。これでお前を倒せなきゃ俺に勝ち目は無い」


さぁ、勝負を決めようか!

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