異国の女神は幻のような光を追いかける
これがこの物語の最新エピソードです。楽しんでいただけたら嬉しいです。
宴は終わった。
火は弱まり、声は静まり、
人々はそれぞれの場所へと散っていった。
街は再び、夜の中に沈んでいく。
簡素な寝床が用意されていた。
地面に敷かれた布。
それだけだ。
だが、誰も不満を口にしない。
法城はすぐに横になった。
疲労が一気に押し寄せ、意識はあっという間に沈んでいく。
一方で――
ステファニーは、まだ起きていた。
仰向けになり、空を見ている。
紫と黒の境界のような空。
静かだった。
(……不思議ね)
そう思う。
恐怖は、なかった。
むしろ――
どこか、落ち着いている。
彼女は、自分のこれまでを思い出していた。
ロサンゼルス。
生まれ育った場所。
アフリカ系アメリカ人の家庭。
両親は、形成外科医だった。
裕福ではなかったが、貧しくもなかった。
努力して、今の地位を築いた人たちだった。
教育も、環境も、
与えられるべきものは、すべて与えられていた。
不自由はなかった。
危険も、なかった。
――問題は、何もなかった。
(……それなのに)
満たされなかった。
理由は分からない。
子どもの頃から、ずっとそうだった。
何かが足りない。
だが、それが何なのか、分からない。
そもそも、
それが“存在するもの”なのかどうかすら、分からない。
(おかしいのは、私の方だと思ってた)
すべてがあるのに、
満たされない。
それは、贅沢ですらない。
ただの欠陥だ。
そう考えた。
(だから……)
自分のことを考えるのをやめた。
代わりに、他人を見ることにした。
助けが必要な人間。
飢えている人間。
戦争の中で生きている人間。
ジャーナリストになった。
世界を回った。
貧しい国々。
紛争地帯。
忘れられた場所。
彼女は見た。
そして、記録した。
問題を調べ、
報告を書き、
人々に伝えた。
組織を立ち上げた。
資金を集めた。
人を動かした。
確かに、意味はあった。
誰かの役に立った。
それは、事実だった。
(でも……)
それでも、
どこかで思っていた。
(これじゃない)
満たされないまま、
前に進んでいるだけ。
そして――
子どもたちの失踪。
最初は、犯罪だと思った。
人身売買。
組織的な誘拐。
だが、証拠が足りなかった。
記録がない。
痕跡がない。
ただ、消える。
その代わりに、
奇妙な話が残る。
「神が連れていった」
「救われたのだ」
老人たちは、そう言った。
彼女は、信じなかった。
(そんなはずがない)
そう思っていた。
そして――
飛行機が落ちた。
炎。
衝撃。
その次に目を開けたとき、
ここにいた。
プロスペリタス。
(……本当に、あったのね)
空を見つめる。
ここには、食料がある。
秩序がある。
争いは見えない。
子どもたちは救われる。
それは、
彼女がずっとやろうとしてきたことだ。
それが、
すでに完成された形で存在している。
(じゃあ、私は……)
何のために、
ここに来たのか。
静かな疑問が、胸に残る。
満たされないものは、
まだそこにあった。
形を変えただけで、
消えてはいなかった。
風が、わずかに吹いた。
遠くで、誰かの寝息が聞こえる。
ステファニーは目を閉じた。
答えは、まだ出ない。
だが――
この世界には、
何かがある。
それだけは、確かだった。
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