第十二話 村人達の話し合い。
「村長!逃げましょう!」
「だが、囲まれるかもしれんぞ?それなら、応援を信じて守りを固める方が良いのでは無いか?」
「最悪の事態を想定して、防衛力は強化したんだ。守りきれるんじゃないか?」
「確かに、そうだ。それに今のこの国の状況では、何処に行っても同じじゃないか?なら村を守る方が良い。」
「そうだ。おらも村を守る方が良いと思う。」
「貴方達はどう思う?」
村人の話し合いの場。
脅威は間違いなくある事を連絡した後、直ぐに開かれた。
どちらにしても、夜の行動は厳しい上に、護衛軍が居ない。
朝にならないと動けないのは確かだ。
「どちらを選ぶにしても、危険はついてきます。どちらを選択されても、僕等は行動を共にします。」
「それは助かります。」
「そもそも、危険だと言って防衛強化をするんじゃなく、あの時点で逃げれば良かったじゃないか。」
確かにその通りだ。
しかし、その判断は出来なかった。確証が無かったからだ。
「そうかもしれません。すいません。」
僕は素直に謝った。
「謝って済む問題じゃないだろ!」
「デイズ。言い過ぎだ。この方達は、ただの冒険者だ。管理者じゃない。ただ助けてくれているに過ぎん。力があるから、無い者を助けてくれているに過ぎん。勘違いするな。責めたいのならば、村長である私にしろ。私が逃げる選択をしなかった。あの時の情報ではこうするしかなかった。ただ、結果が最悪な方へ転んだに過ぎん。」
文句を言っていた村人は、村長の言葉に頭を垂れた。
「すまねぇ。」
「かまいません。貴女が言った事も、危険である事をもっと強調できたかもしれません。」
「いやいや。煉さん。そんな事は無い。貴方達は良くやってくれた。ありがとう。」
「そうだぜ。デイズは馬鹿なんだ。すまねぇ。気にしないでくれ。」
「そうだそうだ。この馬鹿が!レンさん達の所為じゃねぇ。すまねぇ。」
村人が僕等の判断の所為じゃないと、一生懸命言ってくれた。
デイズさんという村人は皆から殴られたり、怒られたりしている。
気持ちを受け取った僕は、話を変えた。
「わかりました。では、これからどうしますか?」
「そうだ。これからが大切だ。どうすんだ?」
沈黙が場を支配する。
重要な判断だ。迂闊な行動はとれない。
「皆、どうだ?逃げず、村を守ろうじゃないか?」
「だけど敵がオークキングじゃ、やばいだろ?」
「確かにそうだ。敵は巨大だ。じゃが、ここにはレンさん達も居る。それに、応援も明日か明後日には来るはずだ。レンさんそうですね?」
「ええ。その通りです。その予定で考えて問題ないでしょう。」
僕は強く頷く。
「皆、聞いたな?応援が来るんだ。逃げずに戦おうじゃないか。それに逃げた所で襲われないとは限らない。それなら防衛力を上げたこの村の方が安全だと思わんか?」
「村長の言う通りだ。やろう!」
「そうだ。おら達の手で村を守ろう!」
「おしやってやる!」
「よし。決まりだな。今日は見張りの番の者以外は明日に備えよう。」
「「「おお!」」」
「レンさん。協力をお願いします。」
村長が改めて僕に頭を下げた。
僕は横に居るプレストンさんとアリアさんの顔を確認する。
二人とも頷いてくれた。
「わかりました。喜んで協力させてもらいます。」
本来は、僕達は協力する義務はない。
冒険者という大きい意味ではあるかな?
≪人類の為に≫
それが、冒険者ギルドが掲げる思想だから。
でも、助ける事は義務じゃない。
僕は少しでも関りを持った所が被害を受けるのは嫌だ。
個人的な思いだと思う。
僕が何も出来ない人間なら、関わらずに逃げる方が正しい選択かもしれない。
だけど、今の僕は撃退するだけの力を持った。
もちろん、数の暴力に屈してしまう。実力が上の敵には負けてしまうかもしれない。
僕が下した決断は、この村の人達を助ける事だった。
だから、この人達を助ける為に僕は全力を出す。
そう決めたのだ。
村の話し合いは終わった。
村に残り防衛する。その準備と予めの予定を立てた。
村人はそれぞれ村長宅を出て行く。
僕等も村長宅を出て馬車に向かう。
「錬君。あんまり難しく考えちゃだめよ?」
「えっ?」
「彼らが決めた事。私達はその協力をするだけよ。」
僕は甘ちゃんなのかもしれない。
けど、目の前で誰も死なせたくない。
あの無力感は味わいたくない。
「はい。」
『任せるのじゃ。』
『承諾。』
「もう。」
アリアさんが諦めた顔になっているのは気の所為だと思いたい。
「良いんじゃないか?煉らしいって思うぜ。」
「でも、それじゃ体がいくつあっても足りないでしょ?」
「良いじゃないか?目の前にある命を守る。カッコいいと思うぜ。」
「それは、否定しない。けど、それで煉君が傷つくのは嫌なの。」
「だってよ。煉。お前、愛されてんな。」
「あははは。」
僕は笑って誤魔化した。
「もう。本当にわかってる?」
「はい。わかっていますよ。」
「まぁ、一生懸命やる。それでダメならそれまでさ。」
「はい。」
僕は元気よく頷いて返事をした。
やれる事はやる。出来る事はする。僕には今も昔もこれしかない。




