第十三話 オーク軍の襲撃。
その刻は遂にやって来た。
『カンカンカン!カンカンカン!』
街中に銅鑼の鐘の音が鳴り響く。
「来たぞ!オークが来たぞ!」
見張りの人の声だろう。大きな声も響き渡る。
「来たようね。」
「はい。」
「それじゃ、行くか?」
僕達三人はその場から起き上がるとそのまま出て行く。
先ずは、情報が入る村の広場だ。
そこには、臨時のテントがあり、指揮官となる村長が居る場所だ。指令を出す所だ。
「オークの数はおよそ1000。もしかするとそれより多いいかもしれない。」
丁度、報告が来ていた所だったようだ。
「わかった。予定通りの行動に移す。子供たちは隣のテントへ。戦えるものは持ち場へ直ぐに動け。救護班は食事の準備を!」
「「「「おおー!」」」」
「「「「はい。」」」」
村長が直ぐに指示を出していた。
それらを確認した僕等はお互いの顔を確認し合った。
「では、村長。僕等も動きます。」
「はい。お願いします。」
村長やその近くに居た人が頭を下げる。
それを見てから僕達は動き出す。
「手筈通りに。」
「ああ。」
「村の中は私に任せておいて。」
「では、後ほど。」
「ああ。」
「ええ。」
僕達三人は予定通りの行動を開始する。
プレストンさんは村の唯一の入口に行く。
アリアさんは街の中の指揮をフォローしつつ、村全体の壁からの侵入に対処する。
そして、僕も村の入口へと向かう。
オークは村の正面にから向かって来ている様子が見えた。
「かなり厄介だな。」
「はい。統率が取れていますね。」
「ああ。指揮された動きだ。」
オークは二足歩行で動く。
つまり知性ある魔物だ。そして、それを率いる存在がある。
意志疎通をおこない。布陣している様子がその証拠だ。
攻城戦ならぬ攻村戦かな?
僕等にとっては、防村戦という訳だ。
「このまま、真正面からだけですかね?」
「どうだろうな?知性があるから、頭を使ってくるかもしれねぇな。」
「ですよね。1000以上は居そうですね。」
「ああ。下手すると2000とかって数になりかねんな。」
あり得る。
ざっと見た感じで1000だ。
だけど、この見えるだけの数が正しいとは思えない。
「じゃあ、僕は行きます。」
「ああ。十分に気をつけろよ。」
「はい。」
僕は入り口のバリケードを抜けてそのまま、オークの軍団に向かって行く。
そう、僕はオークの軍団に単身で特攻するのだ。
「ヒミコさん。お願いします!」
『任されたのじゃ!』
僕は、村とオーク軍の中間で立ち止まる。
『我が炎を喰らうが良い!』
「獄炎!」
ヒミコ様は火を得意とする精霊神だ。
現世に来たヒミコ様の力は神として能力をフルに活用する事は出来ない。
肉体を持たないから。だが、一時的に僕の体を利用する事で力を行使できる。
もちろん、魔力は僕持ちだし、能力は僕の基本的数値に由来する。
怒り狂う様な青い火が僕の差し出した左手の前に浮かび上がる。
『行くのじゃ!』
そのヒミコさんの言葉を受けてなのか、青い火は徐々に大きくなると人の大きさになった瞬間に横に広がった。そしてそのままオークの軍団に向かっていく。ドンドン大きくなりながらだ。
「えっ?!」
『ぬはははは!』
全て一瞬の出来事。
オークもオークで何事か分からないままに起こった現象。
一瞬にして、オークは消えていった。
消失。
『数など儂の前では無意味よ!ぬははははは!』
見えていたオーク達は消え失せた。
僕の頭に響くのはヒミコさんの笑い声だけだ。
ないわ~。これは無いわ~。
あの悲壮感や、緊張感はどうしてくれるの?
「おい!どういうことだ?」
プレストンさんが、僕の所へ向かって疑問を投げかける。
「いやぁ~。僕にもサッパリ。」
「さっきの魔法は何だ?規格外すぎないか?」
「あははは。」
「あははは。じゃねぇよ。」
ツッコミが入った。
『うぬ。まぁこんなもんじゃ。ほれ、煉。誉めて良いんじゃぞ?』
「あっ、はい。ヒミコさんありがとうございます。凄いっすね。」
『ふふふ。まぁこんなもんは朝飯前じゃ。』
胸を張って威張っているヒミコさんが見える。
確かにそうだよね。仮にも神様だもんね。あははは。
「これが、神様の力なのか?すげぇえな。」
プレストンさんは単純に感心している。
僕はこんな事になるとは思っていなかった。試していなかったからだ。
一発、本番勝負。少しでもオークの数が減れば良いと思っただけだった。
「まぁ、これで助かったのは助かった訳だがな?」
「はい。ちょっとやり過ぎですよね?」
「そうだな。神様の力を借りたとはいえ、普通の人には精霊は見えないからな。」
「ですよね?はぁ~。」
僕は肩を落とす。何事も過ぎてはいけないのだ。
一瞬にして殲滅してしまったオーク軍。
「でもよ。確かに凄い魔法だったけど、あれでキングオークをやれたのか?」
「どうなんでしょうか?」
正直分からない。
キングオークを見た訳じゃないからだ。
「そうだと良いですね。」
「まぁ、そうだわな。」
『キングオーク?それはわからんが、強そうな存在はなら、向こうの方に感じるぞ?』
「向こう?」
『うむ。』
それは村の反対側。裏手を指していた。
「行きましょう!」
「おっ?」
「村の反対。裏側に強い存在が居るってヒミコさんが言っています。」
「そうか。わかった。」
僕とプレストンさんは村の裏側へ向かって走り出した。




