50収穫祭
王と王妃へエリザベスではなく、聖女として戻ると宣言することで、クリスとの婚約を解消した。
そしてリックとの婚約が決まり、急遽結婚の準備は取りやめとなった。
クリスは最初から考えていたのだろうか、大方整ったその場を、私とリックの婚約発表をする場として手配してくれたのだった。
そして収穫祭当日。
私は早朝に目覚めると、クリスを連れてリックの家へ向かった。
「杏奈」
「里咲さん」
彼女の姿に嬉しさが込み上げ、ギュッと彼女の体を抱きしめた。
「噂で伺っております。収穫祭でクリストファー様と結婚されるのでしょう。おめでとうございます」
「ふふっ、違うわ。婚約の発表をするのよ、リックとのね」
杏奈は目を丸くすると、オロオロとクリスへ視線を向けた。
「杏奈、会いに来るのが遅くなってごめんない。一つお願いがあるの。お城へ戻ってくれないかしら?」
「……私がですか?宜しいのでしょうか?」
「もちろんよ、二人で聖女になりましょう。うるさい貴族連中は私に任せておいて」
「あの……でもお店は……?」
「ふふふ、私が戻るわ。やっぱり私はエリザベスとしてではなく、リサとして生きていく。もちろん家族や友人たちとの関係は継続するわ。だけどエリザベスがいたその場所には戻らない。私の居場所はリックの隣だと気が付いたから」
「里咲さん……」
杏奈はギュッと私の体を抱きしめ返すと、コクリと静かに頷いた。
「今日は聖女のお披露目も兼ねているのよ。収穫祭を楽しみましょう」
彼女の手を掴むと、そのまま馬車へと乗り込んだ。
人が溢れ音が溢れ、賑わう街並みの中を杏奈と並んで進んで行く。
街中には露店が並び、人々の笑顔が映った。
城へ戻り杏奈と私は着替えを済ませバルコニーへと案内される。
王と王妃の挨拶が終わり、入れ替わるように外へ出ると、目の前には地面を埋め尽くすほどの人々が歓声を上げこちらを見つめていた。
「「聖女様―――――――」」
アイドルファンの歓声のような声に杏奈は恥ずかし気に頬を染める。
そんな彼女の手を取ると、バルコニーの前へ出て民衆へ手を軽く手を振って見せた。
聖女が二人だと公の場で公表すれば、煩い貴族連中たちも少しは大人しくなるだろう。
聖女の紹介が終わり、クリスが前へ出ると、リックと私を呼ぶ。
「今日はもう一つめでたい発表がある。俺の古からの友人であるリチャードと聖女との婚約発表だ」
クリスはこちらへ笑みを見せると、民衆たちの歓声が大きくなった。
私はリックの手を握り前へ出ると、祝福の声が響き渡った。
「リサ、こんな日が本当に来るとは思わなかった。必ず幸せにします」
「何度も言わせないで。幸せにするのは私よ。リック愛しているわ」
私達は民衆たちの前で口づけを交わすと、頬を染めながら笑いあったのだった。
そんな私たちを離れたところから眺める、杏奈とクリス。
「とても幸せそうですね。ですがクリストファー様……宜しかったのですか」
「あぁ、これでいいんだ。友人の幸せを喜ばないわけないだろう」
そう話した彼の表情は和やかで、杏奈も自然と頬を緩ませていた。
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最後までお読み頂きまして、ありがとうございます!
後半部分はかなり急ピッチで進めた感がありますが……。
お話はこれで完結となります。
ご意見ご感想等ございましたら、コメント頂けると嬉しいです。
改めまして、お読み頂きありがとうございましたm(__)m
また別の作品でお会いできるよう、これからも頑張ります。




