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30閑話:彼女との出会い (リック視点)

彼女が消え、大規模な捜索が始まった。

一週間、二週間、ひと月と時間が過ぎていくが、手掛かりすら掴めない。

聖堂も調べつくすが、彼女が居た痕跡すら見つけられなかった。

聖女や聖堂に関する文献を読み漁り手掛かりがないか探してみるも成果はない。

神隠しのように、本当に消えてしまったのだ。


僕は捜索が終わった後、毎夜聖堂を訪れる。

シーンと静まり返ったそこには、もちろん誰の姿もない。

中へ入り最後に彼女を見た場所に立つと、おもむろに天井を見上げた。

エリザベス様……。


あの時彼女を引き留めていれば、こんなことにはならなかった。

いや、最初から聖女を召喚するなんて無理だと、はっきり止めるべきだった。

なのに僕は自分の感情を優先してとめなかった。

もし聖女がやってくれば、彼女が王子の婚約者でなくなる可能性に期待していたんだ。


そのくせ王子と彼女はお似合いだと言い聞かせ諦めようとしていた。

あの時聖女探しを止められなかった時点で、心のどこかで無理だとわかっていたはずだろう。

なんて愚かで浅ましいんだ。

そういくら後悔しても、彼女はどこにもいない。

手掛かりすら掴めない。

ならこの聖堂が彼女を飲み込んでしまったと考えるしかない。


「聖堂よ、聞いてくれ。私が消えるべき愚かな人間なんだ。頼む、私と引き換えに彼女を返してくれないだろうか?」


そう呼び掛けても声が響くだけだった。


もう二度と会えないのだろうか。

彼女の声を聞くことも、笑った姿も見られないのだろうか。

どこへいってしまったのか。

ぐるぐると同じ問いかけを繰り返し後悔するが、何も変わらなかった。


半年が過ぎ、手掛かりがつかめない現状、捜索は打ち切られてしまった。

独断で探してみるも、どうにもならなかった。


皆は今までの通りの生活に戻って行く中、僕の日常には色がなくなった。

剣の稽古に打ち込んでも、どこか身が入らない。

彼女の好きな花が視界に入ると、彼女の残像が浮かび上がる。

思わず手を伸ばしても、そこには何もなかったんだ。


そんな中大きく変わったことがある。

クリストファー王子が女遊びをやめた。

なぜ今やめたのか、理由はわからない。

だが王子は婚約者はエリザベス只一人だと、そう皆の前宣言した。

その目に嘘偽りはなく、城から覗く聖堂をじっと見つめていた。


それから三年の月日が流れた。

もうエリザベスの名を口にするものは誰もない。

僕は無事に王子の騎士となり、隣で仕える毎日。

だが昔のように話す事はない。

僕たちの間にはいつも彼女の存在があったから。


数年たった今でも、彼女の姿ははっきりと思い出せる。

時折彼女を探すように、城を歩き居ない彼女の姿を探すんだ。

何かをしでかす彼女の事だ、ごめんなさい遅くなったと、ひょこり帰ってくるような気がして。


そんな時に聖堂の鐘がなった。

最初は信じられなかった。

王子の後を追うように聖堂へ向かうと、そこに居たのは二人の女性。

一人は黒髪に黒い大きな瞳をした、可愛らしい女性だ。

もう一人の女性は同じ黒髪だが、目に変なものを付け、髪はボサボサで表情はあまり見えない。


聖女が二人も召喚された例は今までにない。

最初はどちらが聖女だと戸惑ったが、答えはすぐにわかった。

可愛らしい女性はこちらの言葉を話し、そしてここへ来る前に鐘の音を聞いたとそう言った。

もう一人の女性は言葉が分からず会話すらできない。

王子と聖職者と話し合い、杏奈という異世界の女性を聖女として城へ招いた。

そしてもう一人の女性は聖女ではないと判断され北の塔へ移されたのだった。


北の塔は城から大分離れ、孤立した場所だ。

面倒事や匿いたい者を閉じ込める。

そんな面倒事の相手を王子は僕に命じた。


最初はとんだ事を任されてしまったと頭が痛い毎日だった。

聖女を見ているとあまりに違う生活様式。

それに聖女と違い、コミュニケーションをとる手段がないのも致命的だ。

どうしたものかと思っていたが、実際に彼女の世話を始めてみると全て杞憂となった。

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