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22新しい暮らし

オリヴィアについていくと、辺りにないもない郊外にポツンと佇む酒場に到着した。

大きな看板には「酒場のラム」と記され、老舗なのだろう、年季が入っている。

けれど汚らしいという印象はなく、手入れが行き届き、味のある外観には清潔感があった。


裏口へ案内され中へ入ると、狭い店内にテーブルが並び、奥にカウンター席がみえる。

こじんまりとした雰囲気で、常連客が多そうな酒場だ。


「適当に座って、今お茶を用意するわ」


言われた通りカウンター席へ座ると、オリヴィアは棚から筒を取り出し、お茶を淹れた。

店内を見渡してみると、異国の装飾品や古い絵画が飾られている。

絵画には国を象徴する旗と城、そして護衛騎士の姿が描かれていた。


「とてもいいお店ね、ぜひ働きたいわ。けれど……本当にいいのかしら?私の事を存じているのでしょう?」


侯爵家に妨害されているのを知った上で、雇ってもらっても大丈夫なのかしら?

不安気にオリヴィアへ顔を向けると、湯気が立ったお茶を私の前に出した。


「えぇ、大丈夫よ。あなたの事は知っているわ。何をしたのかは知らないけれど、侯爵家に目を付けられているんでしょう。安心して、この店は別ルートから食材を輸入しているのよ。だから侯爵家に文句を言われる心配も筋合いもないわ。ねぇ、もしよかったら今日お試しで働いてみない?」


オリヴィアは一紙幣をテーブルへ置くと、ウィンクしてみせた。

一紙幣……今日買った食材代金合わせても御釣りがくるわ。

じっと一紙幣を見つめながら出されたお茶を口へ運ぶ。

今日リックは遅くなると言っていたわね。

夕飯の下準備は終わっているし、1~2時間働かせてもらって、自分が出来るところ見せておきたいわね。

後は給与がどんなものなのか聞いておかないと。

そこそこ収入があれば、リックの家を出て近くに家を借りれるわ。


「ぜひお願いしたいわ。ところでお給料はどうなっているのかしら?」


彼女は嬉しそうに笑いながら私の隣へ腰かけると、雇用契約や仕事の内容について詳しく話してくれた。


夕日が沈んだ頃、オリヴィアは開店の準備を始める。

用意された服に着替え、酒の仕込みや酒の肴を下準備を手伝う。

ユニフォームは胸が大きく空いたシャツに膝上丈のスカート。

黒いエプロンを腰に巻き、靴は動きやすいスニーカー。

多少の露出はあるものの許容範囲。


「あーそうだわ、酔っぱらい相手だから、手癖が悪い客もいるの。その時は容赦しなくていいからね。何かあれば私に言いなさい」


「えぇ……わかったわ」


手癖が悪い人ってどんな感じなのかしら?

まぁ働いてみればわかるわよね。


腰に巻いたエプロンの紐を結びなおし、開店準備を終え店を開けると早速お客さんがやってきた。


「オリヴィア、ビールを一つ。おっ?新人さんかい?」


いらっしゃいませと出迎えると、図体の大きい男は私の姿をジロジロと眺める。


「別嬪さんだね、こんないい子どこで見つけてきたんだ?」


男は挨拶とでも言わんばかりに私のお尻へ手を伸ばす。

その姿にオリヴィアはニッコリ笑みを深めると、手に持っていたナイフを投げた。


私と男の間をナイフが通過し壁に刺さると、男が動きを止める。


「おさわりは禁止よ。ここはそういう店じゃないの。何度も言わせないでイワン」


「おぉ……すまなかった」


オリヴィアはこちらへ近づいてくると、壁に刺さったナイフを回収する。


「この人みたいに素面でもバカな事をしようとする客もいるから気を付けてね。何かされそうになったら××を蹴り上げても構わないわ」


イワンへ聞こえるようにニコニコと爽やかな笑みを浮かべて話す彼女の姿に、男は顔を引きつらせると逃げるように後ずさっていった。

そんな彼女の姿に思わず見惚れてしまう。

手癖といのはセクハラの事だったのね。

だけど戦っていいのなら余裕だわ、この店なら働けそう。

ナイフをしまう彼女の姿を眺めながら、私は改めてここで働く決意を固めたのだった。


最初の出だしはあれだったけれど、ここの酒場は思った通り馴染みのお客さんが多く、酒場は穏やかに賑わっていた。

新人の私にも優しく話しかけてくれて、仕事しているのに楽しい気分になる。

オーダーをとって席へ運んで、前の世界の居酒屋と変わらない。

違うところと言えば、ハンディーではない手書きの伝票ぐらいかしらね。


「リサちゃんは可愛いねぇ~」


ベロンベロンに酔った男が私の肩を抱くと、酒臭さに思わず鼻をつまむ。

酔った客に絡まれるのは想定済み、オリヴィアの許可も頂いているし怖くないわ。

そのまま胸に手が伸びてくるのを確認すると、私は男の腕を掴み締め上げた。


「痛ッ、いたたたたたたた」


「おさわりは禁止ですわ、おじ様」


腕をねじり床へ座らせると、そっと顔を上げる。

オリヴィアと視線が絡むと、よくやったとガッツポーズを見せてくれた。

そんな私の姿に周りにいた客たちは苦笑いを浮かべると、触ろうとする客もいなくなったのだった。

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