エピローグ
裏ボスの登場です。
全ての戦いが終わり、安堵する俺達に迫る脅威。
”無”によって吹き飛ばした雲の切れ間から世界を断絶する亀裂が、割れ目が現れる。
『おめでとう。私の可愛い可愛い、愛しい愛しいオルフ。遂に至ったのね』
割れ目から伸びる鎖が、安堵していたが油断していた訳ではない俺の首に、易々と巻き付く。
「オルフ!!??」
ベラが、スノウが、ルナが、クロイツェルが、カリン嬢が、仲間達が総出で鎖を断ち切ろうとするが、ビクともしない。
感覚として理解できるのは、この鎖は世界の理そのもの。
『無駄ですよ。その鎖は私達、神々が総出で作った理の1つ。今は亡き【 】と同じもの。”無”のように、理に干渉できるものでなければ破れない』
理さえも消し去る”無”を放った直後の俺達に、再度の”無”を放てぬ程の疲弊をした俺達に語られる非情な真実。
「やはりですか。ジャミラ様は良くて3回だと言っていましたが。全力を越える全世界からの希望は、やりすぎでしたか」
『神は下界に過度に干渉しては、ならない。長く留まっては居られない。鎖は、そういう理。その具象。ようこそ、私の可愛い可愛い、愛しい愛しいオルフ。同僚として、仲良くしましょうね。ね!』
良くて三回、ジョイフルに一度、この戦いで一度の全力を越えた戦闘の計二回。
あくまでも、良くて三回の基準は、この戦いの過度の酷使により、とっくに限界を迎えていた自覚は有った。
ゆっくりと割れ目へと、亀裂へと引きづられながら、最期に我儘を果たしたことへの満足感で、観念して運ばれる。
これからは、敬愛するアスラ様のために生きていきながら、ベラの今後を見守っていこうと思っていた。
「行かせない!! そんな年増よりも、私の方が良いはず!!!!!」
『と、年増ぁ!!!??』
大変に失礼で的確な叫びと共に、俺と同じ神となったベラの手から、俺を逃すまじと”絆”が伸びる。
「ベラ! 止めてください!! このままでは貴女まで!!!」
『無駄ですよ。小娘!! たった1柱の神の力で、理は破れません。ましては、生まれたての尻の青い小娘の貴女では、尚更のこと!!!』
年増呼ばわりに激昂したアスラ様の叱咤を聞きながらも、俺に絡み付けた鎖を引く手を緩めない。
俺と共に引きづられて、このままではベラまでもが神界に連れ込まれてしまう!!
「行かせない! 絶対に行かせない!! 引き戻せないなら、貴方を1人では行かせない!!!」
それでも、俺と共に引きづられながらも、手を緩めず諦めない。
可憐な手に鎖が食い込み、血が流れだしても、引きづられて、その身を周辺の瓦礫で擦られても緩めない!!
理を打ち破るための”無”は、疲弊のために撃つことは出来ない。
理を破るスキルも能力も俺には、俺達には、残されていない……。
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
『シルバは幼い時から罪悪感と使命感だけを糧に生きてきた。この戦いを無事に乗り越えられたら、シルバは報われるべきだ。仮に無事で無かったとしても、次の生で報われるべきだ』
ーー【言霊】ーー
心の底から想うなら、願うのなら、信じるのならば!
人の生死を、天地の上下を、世界の理ですら覆すことの出来る大恩人、アレクセイ・ヴォルフが生前に語った本気の言葉!!
その言葉通りに次の生、オルフの人生が報われるようにと、剣に、鎧に宿る!!!
『そんな!!? 嫌!?? 嫌ぁぁぁあぁぁあぁああぁぁあ!!!!!??』
半狂乱で髪を振り乱しながら、アスラ様が追いすがってくる。
「アレク。ありがとう。貴方に受けた恩に少しでも報いたことを、仕えられたことを誇りとします」
鎧によって弾かれ、緩んだ世界の理に、万感の思いを込めて剣を振り下ろす!!!
断ち切られた鎖が、地に落ちる前に光となって、空に溶け込んでいく幻想的な光景。
『ああぁぁああぁぁああぁ!!!! そんな!? そんなぁぁああ!!!??』
必死に追いすがり、俺に寸でのところで触れそうになっていたアスラ様に、俺を縛っていた世界の理と同じものが巻き付く。
「アスラ様。貴女には感謝しています。どんなことをされても、俺に愛想が尽きて加護を取り上げたとしても、貴女を変わらず信仰することを約束します。……ですが、俺の人生を狂わせた神に対して、親愛も恋慕も抱くつもりは有りません!!!」
俺の決別の言葉を受け、目を見開きながら鎖によって神界に引き戻されていく。
『そんな!!? あああぁぁあ!!! 私の愛しい愛しいオルフ!!! 貴方が私を愛さなくても私は!! 私は!!!!!』
アスラ様を引き戻し、割れ目が閉じていく……。
『……バイバイ。年増』
『ふわぁあ。年増。バイバイ』
誰の影響なのかユキとツララが、俺を連れて行こうとしたアスラ様を敵視し、それぞれが中指を立て、親指を下にしながら舌を出している。
「元凶は、アレか……」
振り返ると仲間達が同じポーズでアスラ様を見送っていた。
特にベラとスノウが両手で、入念に嫌悪を表していた。
「教育上、あまり良くないんだがな」
俺の生還を仲間達が喜んでくれている。
ユキとツララに対して良くないことだが、その想いが嬉しく顔が緩んでしまう。
割れ目が閉じきり、全てが終わったことを静寂が伝える。
俺の、俺達の戦いが終わる……。
まだ続きます。
完結まで更新は平日午前6時、土日祝日午前1時に行います。




