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灰を被る少女

パラレルワールドへの移動の際は、体が不思議な感覚で捕らわれる。詳しく言うと、それは何者かに捕まれているようで、それは水の中にいるかのようで、それは空を飛んでいるような感覚である。 その感覚に気持ち悪さを感じたり、最悪の場合は混乱状態に落ちいる時もあるらしい。 ちなみに、ありすはその真っ最中だった。ゲートに入ってからのことだが、じっと一点を見つめてピクリとも動かない。呼吸はしており、瞬きもしていることから死んではいないことは確実だ。が、それでも状態が良くないというのは間違いではないであろう。


ありすは不思議の国に来たときから体があまり強くなかった。弱いわけでもないけれど、下級魔法が普通に聞いてしまう程である。そんな彼女がハートの女王を倒したのは嘘だと思われるであろうが、それは事実である。しかし、それは多々の協力者がいたからこそ勝てたのであり、全てをありすが成し遂げた訳ではない。 特にチェシャ、ハッタ、そしてヘイヤの三人の協力はかなり戦力になっていた。

話がそれすぎてしまったが、簡単に、現状況はありすがあまり良くないという状況だ。

チェシャが心配そうな顔でありすを見る。ハッタも、ヘイヤも同じ表情でありすを見る。

「ありすー、出落ちは勘弁してくれニャー。俺達のリーダーはありすニャよ。リーダーが出落ちなんて有り得なさすぎるニャ」

この四人のリーダーと呼べる存在はありすだ。不思議の国での功績からそうなるのは当たり前だろう。正直、誰がリーダーでもおかしくないと思うかもしれないが、ハートの女王に戦いを挑んだのも、とどめをさしたのも実はありすなのだ。勇気ある少女としても有名な救世主が、リーダー以外の存在に何があるだろうか。 でもそんな勇気ある救世主様がこの有り様だ。目は開いているが意識が戻ってくるような気配がない。

「仕方ない」と、ハッタが動かないありすを抱えて近くにある民家にお世話することを決意した。

「す、すみません」

おどおどとした声でヘイヤが言う。癖っ毛なのか飾りなのかわからないウサミミをピョコピョコと動かしながら頬を赤くしている可愛らしい子。だが男だ。

困った事があるとすぐに顔を赤くしたり、隠し事をしていると手を後ろにまわしたり、顔つきも女顔。だが男だ。 ウサミミだ。が男だ。大事な事なので三回言わせてもらいました。

目の前のドアが開き、そこから女性が一人でてきた。明らかに自分達よりは年が上。ありすの元の世界で言えば大学生くらいと言ったところだろうか。スタイルも抜群で大人な顔つきのいかにも逞しそうな女性だ。

彼女はどうしたの?とでも言うような顔でチェシャ達の顔を見ている。

「友人が倒れてしまいましてね、少し休ませてもらえると助かるのですが」

「旅の方ですか?それならどうぞ中へ」

女性の許可でチェシャ達は家の中に入る。室内はとても綺麗であり、床や壁はもちろん、机、椅子、食器等も綺麗に磨かれており、また無駄なものが一切無いかのように整えられている。 まるで常に掃除でもしているかのような場所だ。そのため、居心地がとても良い。客を招くには最適ともいえるであろう。「汚いのが大好き」というような変人でなければ、誰しもが憧れるような光景である。

「あらお客人?ゆっくり休んでいって下さいね」

母親らしき女性が椅子に座ってコーヒーを飲みながら言う。

「レナ、彼らをあなたの部屋へ案内しなさい」

彼女は突然顔と口調を急変させて言うが、今それはどうでもいい事だ。 レナという少女は、後からひょっこりと出てくる少女のことなのだが、マダム感のある母親らしき女性やモデル感のある彼女の姉らしき女性とはうって変わって、服はボロボロで汚れており、顔も貧相な二人や室内の印象とは正反対に貧乏感を感じさせる容姿だった。

「お客様、彼方へご案内いたします」

レナと呼ばれた少女が、慣れた手つきチェシャ達を部屋に案内する。 隅から隅まで綺麗に磨かれた階段をのぼった先に小さな個室があった。 案内役のレナを先頭にその個室に入る。

「こちらでございます」

「ニャ、ホントにすごいニャ」

部屋の中を見ながらチェシャが言う。個室とはいえ、ありす達全員がいてもまだスペースに余裕があるくらいの広さ、そして隅から隅まで綺麗に磨かれていてとても綺麗である。

「こちらが、お客様専用部屋でございます。一階には御母様と御姉様の部屋が、そして地下に私の部屋がございます」

「え?なんでレナさんだけ地下なの?」

気になったヘイヤが問うが、レナは少し表情を暗くし、何も言わずに去っていってしまった。


ハッタがありすをベッドに寝かしつける。ベッドのふわっとしたまるで雲の上にでもいるかのような感触がこれまた気持ちいい。あくまで人の家のため、スプリング等はできないが、もし自分の家にこんなものがあったら確実に一日の楽しみにでもなっていたであろう。

それは兎も角、ありすが目覚める様子がいっこうにない。まるで息をしていないかのようである。症状はパラレルワールドの移動時によるショックで脳が混乱をおこしてしまっているというのはわかっているが。

「ありす,,,,,」

まるで亡骸でも見るかのように、三人がピクリとも動かぬありすを見て、心配した。


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